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07.五人の転生者 1

「晩餐会の景品は『異世界の門』、となれば、今回の競争は『異世界の門の開き方』を解かせる形式になるだろうね」


 二日前。パラス国中央、魔法学院魔王討伐戦線本部、三番隊隊長室。先輩は未来を見据えた様に、晩餐会の内容を見事的中させていた。


「チェックポイントを設けてくれるかもしれない。もしかしたら、最初の問題は『異世界の門は何か』、とかかもね」


「要は謎解きってことですね。晩餐会で何をするかは大体イメージできましたが……、オルタ・ルーゼンの意図がわかりません。彼女にとって、何か得があるとは思えないのですが」


「ルーゼン家の晩餐会の殆どの目的は退屈凌ぎだ。東国パラス、西国ダルフ、北国の三つに強い影響を持つ、大陸の裏の支配者、そのご令嬢ともなれば、俺たち常人じゃ考えられない物の見方があるんでしょ。悪趣味だけど、事実、有権者達はオルタ・ルーゼンに近づいて招待券を獲得している」


 僕だってそうだ。話を聞きつけた魔法学院院長が副院長に声をかけ、僕にまで話が降りてきた。僕にとっても雲の上の存在である院長と副院長ですら、直ぐに動き始めた。


「とはいえ、オルタ・ルーゼンは悪いやつではないよ。異世界の門という常軌を逸したアイテムを独占することなく、世界に公開するのはありがたい話だ」


「善人の金持ちなんて存在するんですかね……。まあ、わかりました。オルタ・ルーゼンに気に入られて、知恵比べに勝ち進めばいいんですね。確かに、魔王討伐戦線随一の頭脳派である僕が選ばれるのも納得できます」


「自分で言うなよ。しかも、全然違う」


 先輩の膝の上に座り、目線だけを上に向ける。僕の様子を見て、何故か先輩はため息をついた。


「知恵比べを勝ち進みたいなら、魔法学院の七教授の誰かに頼むさ。ヤユにしかできないことがあるだろう」


「僕に……、子供として潜入捜査することですか?」


「御名答」


 確かに、十歳の外見をした少年として動き回るのは唯一無二の僕だけの力だ。子供のふりをして魔王に近づき、捕縛した経験だってある。

 だけど、それは僕が転生者だとバレていない時の話だ。参加条件に転生者と魔法使いのペアとある以上、僕ほど潜入捜査に向いていない人間はいない。十歳の少年が参加していたら、そいつが転生者だと誰しもが思うだろう。

 子供である意味がない。


「勿論、会場である天国の魔王城と因縁があるからこそ、ヤユが選ばれたっていうのはあるよ。だけど、もっとヤユじゃないとダメな理由がある」


「何です?」


「異世界の門という宝物。魔王達が見逃すはずが無い。特に、傾国か強奪、どちらかは必ず仕掛けてくる」


 僕らが先日捕縛した魔王神教は、最近暴れている魔王を信仰するイカれた集団だった。中でも、ここ数年で名を馳せている『傾国の魔王』と『強奪の魔王』の勢いは凄まじい。


 『傾国の魔王』は不明確な謎を暴き、公にする快楽主義者だ。直近だと、合衆国ルナの大統領の闇を暴き、革命を引き起こした。翌年には地図からルナの文字が消えた。魔王討伐戦線としては、早急に捕縛する必要がある危険人物だ。

 『強欲の魔王』も極悪だった。こちらは東国パラスの秘宝『零の杖』を盗み、世間に公開した。国から処刑宣告が出ているが足取りが全く掴めないので、僕らとしても頭を抱えている。


 他にも、西国ダルフと戦争中の『震駭の魔王』なんて者もいるが、こういう戦いを好む魔王は晩餐会に参加することはないだろう。


 先輩のいう通り、傾国や強欲のようか知力を生かした魔王こそ、晩餐会に潜入してくる可能性が高い。『異世界の門』なんてものは大きな餌だ。


「やっぱり、オルタ・ルーゼンの目的が気になりますね。まさか、魔王を誘き寄せようなんて思っているんじゃ……」


「そこも含めて潜入任務だ。いいかい、ヤユ。今回の任務は二つだ。他の招待客の正体を暴くこと。そして、主催者の裏の目的を暴くこと。二つがわかったらすぐに連絡するんだ」


 重要なのは、異世界の門を手に入れる必要までは無いということだ。飽くまでも、僕は魔王討伐戦線の仕事を全うすればいい。

 とはいえ、興味がないふりをするわけにもいかない。二つの任務を達成するためには、誰にも正体がバレてはならない。


 招待客に魔王なんて在らず、主催者の目的が退屈凌ぎならそれでいいのだ。最悪なのは、僕以外の転生者が全員魔王で、オルタ・ルーゼンが魔王を集めて何か企んでいる場合だ。

 魔王討伐戦線であることが明らかになれば、任務ところの騒ぎじゃない。正体がバレていいのは、先輩達と合流した後だ。

 

 優しく頭を撫でてくる先輩に体を預ける。先輩は、僕が『異世界の門』に興味のない転生者だとわかっているのだ。魔王討伐戦線を裏切ることは絶対にないと確信している。


 だから、僕が選ばれた。


「わかりました。この任務、必ずやり遂げます」




 と、二日前の僕は意気込んでいたわけだが、勢いは下落中である。


「ちょっと、何でベッドが一つしかないのよ!」


「一組ずつ部屋を用意されているんだから、仕方がないだろう」


「いやよ。何で出会ったばかりの男の子と同じところで寝なきゃいけないのよ!」


 キングベッドを指差し、大声を上げるソクラ。ぎゃあぎゃあ騒ぐ思春期ど真ん中の女子高生相手に、僕はため息をつくことしかできなかった。


 ああ、先輩。

 貴方ほど未来が読めるならばお方ならば、まじめで頼れる相方を用意できましたよね。

 何故この人選にしたのですか。


 僕の嘆きは、ソクラの声にかき消された。

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