表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/23

19.第一のXX 3

「全く、シン先生には困ったよ。魔法使い特有の頭の硬さというか、慎重さというか。日本人みたいな性格をしていると思ったが、ありゃ都市部に住む安定した人生をした人間が行き着く性格なのかもなぁ」


 わかるだろ、と優しく僕の肩に手を置き、ティールは笑う。


「君のところのソクラちゃんもお転婆で、別の意味で大変そうだけどね。優秀な魔法使いっていうのは、話が通じない奴が多いよな」


 「おっと、貴方たち二人のことまで含めてませんよー。はははは」、と僕らより二メートルほど前を歩くカラスとアラン王子に声を飛ばす。王子は手を軽くあげて反応したが、カラスは無視をしていた。


「ほら、つれねーよな」


「あの、ティールさん。僕もどちらかというとあっち側で、馴れ馴れしい貴方とは関わりたくないと思っていますよ」


「ヤユちゃーん、寂しいこと言うなよ。同じパラス国民だろ?」


「連合国ルナを崩壊させた『傾国の魔王』は、パラス国郊外出身の女でした。出身地は安全性を保証しません。僕らは転生者というだけで魔王の疑いを掛けられても仕方がない。まして、仲良くしている転生者なんて最悪だ。馴れ合わないことが、この世界で生活させていただく最低条件ですよ」


 魔王討伐戦線が一番恐れていることでもある。全国の転生者が志を一つにして、共同する。一人の魔王でも手に負えないのに、彼らが本当の国を作った日には世界を巻き込む大戦争が起きる。


「これ以上僕に過干渉してくるなら、危険人物として対処します」


「すまない。前世の娘に似ていてね。少し、距離感を誤ってしまった。娘にもよく言われていたんだよ。距離が近いって。懐かしいな」


「それは……、なんか僕の方こそすいません」


「嘘だ。俺は独身だった」


「おい!」


 こいつは危険人物じゃない。関わるだけ無駄な愉快犯だ。ティールは僕の頭をぐりぐりと撫でた後、「冗談はさておき」と今までの茶番を踏み倒した。


「臨時勇者部隊のオーケアと同じ性だから誰かと思ったけど、君、『天国の魔王』に滅ぼされた街唯一の生き残りなんだって? そりゃ、魔王を恨んでも仕方がないよな」


 臨時勇者部隊については展示室に詳細に書かれている。僕の素性を知っている人間がいてもおかしくはない。

 僕は本音を吐きつける。



「別に、そのことはあまり気にしていませんよ。故郷としての自覚も、住民に対する思い入れもありません」


「それにしては、転生者に対して当たりが強いように見えるが。明確に、敵視しているよね」


 そこまで気がついていて、僕に過干渉してくるとは、やはりこの男はふざけた野郎だ。これに関してはそこまで深い理由でもないし、彼の興味が外れることを祈って軽く話す。


 僕たち異世界人は、言うなれば池に放たれた外来魚だ。異なる文化知識を持つ異世界人が一つ行動をするだけで、魔法の世界に歪みが生じる。無から生み出された文化が歴史に挿入され、人類の進化曲線が大きく歪む。


 それだけならまだしも、疎外を感じた異世界人達の殆どは闇に堕ちる。『天国の魔王』や『震駭の魔王』のように未知の技術を用いて軍事侵略する者達や、『傾国の魔王』や『強奪の魔王』のように文化侵略をするものもいる。


 出る杭は打たれる。この世界で未だに異世界という概念が妄想の域を超えていないのは、僕たちのような魔王討伐戦線が歴史を正しい方向に導いているからだ。その点、オルタ嬢が開いたこの晩餐会、最悪な物である。


 勿論、僕が魔王討伐戦線であることは、ティールにははなしていない。それでも、魔法学院に属している転生者と語れば、十分な説得力があるだろう。


「無自覚な影響を与える転生者は部を弁える必要があります。ましてや、回復魔法によって半不死身になることに成功した魔法使い達を、穴をついて殺そうと努力することなど言語道断。あってはならないことです」


「それに関しては俺も同感だな。平和とされている日本ですら、年間千人の人が殺されていた。殺人の重さは理解しているはずなのに、殺人をする魔王は何を考えているんだか……」


 初めて彼の口から出た言葉に同意できた。日本で許されていないことを、異世界で試そうとする気がしれない。やはり、転生者はこの世界にいてはならない。


 異世界の切符は僕が手にしなければ。異世界に関するものは全て僕が壊して、正しい世界にする。不愉快な話だが、ティールとの雑談で僕の意思はより強固なものとなった。


 こうして会話している間にも、カラスとアラン王子が先行して部屋を開け、中にケプト・ルーゼンがいないことを確かめている。

 六時の位置にある玄関から始まり、三時のキッチンにもティールが料理した後だろう食器が並んでいるだけで、何もなかった。


 僕とティールの異世界人組の会話は続き、対してカラスとアランの魔法使い組は一切の会話がない。彼らの口が開いたのは、衣装室の前にたどり着いた時だった。


 アランが振り向き、僕らを呼ぶ。


「扉が開かない」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ