【1-2】栄光の星
木と木の小さな険しい道と言えないような隙間を歩き続ける。歩いても歩いても先が見えず、少ない体力ではもう息切れしている。
「はぁ…ッ…はぁ…ッ…」
「大丈夫かい?ルリハ。」
「だッ…大丈夫です!頑張ります…ッ…。」
「家まであと少しじゃ。頑張るんじゃぞ。」
今はおばあさんの家へ向かっている途中だ。こんなに長い険しい道を登って、どうしておばあさんは私に会ったのだろう。偶然にしてはおかしいが、そんなことを考えるほど頭は回らない。
疲れながらも諦めずに歩いていると、小さな灯火が視界の先に見えてきた。あれは…家の光?
「あの灯火は…?」
「あれは街の家や店の窓から漏れる光じゃ…」
「街…か…」
「あの中に私の家がある。もう少しじゃ。
「はい!」
そこから少しだけ歩き進めると、木の世界から抜け出した。目の前には、たくさんの家と窓から漏れる光…夜の中に響く、少しの話し声。外の世界…本で見る、インクでできた写真とは違う。
外に出た感動なのか、静かに涙が頬を伝った。これから私は、こんな灯火の中で生きれるんだ。みんなにとっては当たり前でも、私にとっては『特別』だった。
「これが外の街じゃ…ルリハ、あれが私の家じゃ。」
薄い布切れのような袖は涙を拭っただけで、濃く濡れた。おばあさんが指さした先には、木の古そうな家が街並みに沿って建っていた。
「行こう、ルリハ。」
「はい!」
* * * * *
おばあさんに案内されて家に入る。床が軋む音と本棚にぎっしり詰まった古本。本が好きな私としては魅力的だ。おばあさんは家の中に入るなり、マッチを擦って机の上のランプを明るく光らせた。そして、本棚にある大量の本の中から、迷わず本を取り出した。表紙は茶色く剥げた部分があり、とても古いと一目瞭然だ。
「ルリハ、ここへお座り。この本にすべてが書いてある。」
「はい…」
ランプの置かれた机に隣接する、椅子に座った。おばあさんも向かいの椅子へ座る。本を机の上に置くと、ランプの光で題名がわかった。
「永遠に続く星の物語……」
「そうじゃ。これがあの星について記した本じゃよ。」
「…読んでいいですか?」
「ルリハは文字が読めるのかい?」
「読めます。」
「じゃぁちょうどよいな。」
* * * * *
以下、本の内容をまとめたものである。
* * * * *
「永遠に続く星の物語」
スタラフ・ペトレア
これは、ある英雄を称えた星の物語である。
それは紀元前1年、魔物が出た。その魔物は巨大で、世界をものの一瞬で焼け野原にしたと伝えられている。各国々は総力を上げて戦闘に出たが手も足も出なかった。
人々は「世界滅亡」という言葉を頭によぎらせた。たった魔物一匹で世界が終わる。そう思っていたのだ。
だが、転機は訪れた。英雄の登場だ。数々の強力な魔物を倒してきたと伝えられてきた、男の剣士だ。彼は、一人でその魔物に立ち向かったのだった。誰も勝利など期待していなかったが、これが最善の選択であると、皆わかっていた。もう国の兵士は残っていない。この英雄こそが最後の切り札だった。
戦いは長くに渡り続いた。剣士一人でここまで魔物と渡り合えるとは、驚きのことだっただろう。
そして、決着がついた。
「相討ち」だった。魔物を倒すことは成功したが、戦いで負った致命傷により、英雄も命を落とした。
紀元0年のことだった。そう、この出来事は一般的に使用される暦の紀元とされている。でも、一般的には「英雄が魔物を倒した年」とくらいしか知られていない。詳細は当時の人々のみしか知らないほどだ。
そして、この物語には続きがある。
人々はこの英雄を称えるために永遠に残せる形として「星」を作った。でも星を作るなど容易くないもの。そのために魔法が使用された。禁忌の魔女として知られている魔女に協力してもらった。今まで「禁忌の魔法など使うな!」と抑えてきた魔女だが、このためには仕方ないと禁忌の魔法を使った。
魔法についての詳細はわからないが、「生贄の魔法」がしようされたようだ。
それで星はできた。「栄光の星」と名付けられた。でも、今はただの明るい星とくらいしか思われていないのだろう。
でもこれが、英雄を称えるために永遠に残せる形として星を作った話。
「永遠に続く星の物語」である。
* * * * *
「読み終わったかい?ルリハ。」
「……」
「少し衝撃的だっかなのう…大丈夫かい?」
「知りたい…」
「…?」
「どうして星を作ることにこだわったのか。禁忌の魔法とはなんなのか!!知りたい!!」
「どうして…そんなに資料も残っていない。」
「生きる意味なんて知らないんです……貰えずに生きてきました。だから感情も抑えてきましたが、本当は、知りたいと思ったことを知りたいんです。私はもう既に、あの星に魅入られてしまったようです。」
「本当に知りたいのじゃな?」
「はい…これが私の生きる意味になれたなら。それは私にとっての”本当の有限の人生”です。」
「わかった。私で良ければ協力しよう。」
「…ありがとうございます!」
感情を持つことはすごい嬉しいことでした。胸が高鳴ることでした。
そして協力してくれる人ができた、私は少しは幸せに近づいたでしょうか…?




