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FATAL ERROR 〜あらゆるプログラムを書き換える代わりに、激重デバフを背負わされる俺の復讐譚〜  作者: くるまえび
魔剣術学校編

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第11話 訓練の成果と無法の島

 バルモンド魔剣術学校の実技テストまで残りわずかとなった。ルミナの家の地下訓練場は、遥斗の修行の成果と、フィオナの過剰な防御魔術の光で常に賑わっていた。


 レンから「魔法陣の強度が紙切れ」だと指摘されて以来、遥斗は**《詠唱の即時完了》のスピードを保ちつつ、魔力を高密度に流し込めるだけの《魔法陣の精密な鋳造》**を両立させる訓練に没頭していた。


 数週間の努力の結果、遥斗の目の前には今、一瞬にして青い魔法陣が出現する。それは、レンの魔法陣のように完璧な幾何学模様でありながら、遥斗の特有のスピードを伴っていた。


遥斗「《インフェルノ・ブラスト》、展開!」


 遥斗が魔力の約4割を注ぎ込むと、魔法陣はビクともせず、灼熱の炎の塊をホログラムの標的に正確に叩き込んだ。


レン「完璧だ。その魔力密度と安定性なら、B級クラスの魔術師数十人分の火力を一瞬で出せそうだな。だが、フィオナの結界がなければ、あんたはすぐに死にそうだがな」


フィオナ「……レンさん、その言い方は、まるでハルトさんが豆腐細工のようではありませんか」


レン「ああ、豆腐に勝てるかもしれないぐらいレベルだ。さて、フィオナ。その『豆腐』が攻撃している最中、突如現れたホログラムの斬撃から、彼を絶対に守れ」


 レンがホログラムの剣士を出現させた瞬間、フィオナの神経が研ぎ澄まされた。


フィオナ「《アクセル・ブースト》! 《バリア・レイヤー》! 《ディフェンス・ウェーブ》! 《アイギスの壁》!」


 ホログラムが遥斗に到達する2秒の間に、フィオナは4種類の防御魔術を重ねがけした。遥斗とホログラムの間には、透明、銀、青、そして黄金の、四重の結界が出現。


 ホログラムの剣が結界に触れた瞬間、最初の三枚はパリィン、パリィン、ボフッという間の抜けた音を立てて砕けたが、四枚目の《アイギスの壁》はびくともしなかった。ホログラムの剣はそのまま弾き返され、遥斗は無傷だった。


遥斗「おい、フィオナ。防御が過剰すぎねぇか?これじゃあ、俺が攻撃するどころか、光を通さなくて前が見えないんだけど」


フィオナ「申し訳ありません、ハルトさん! ですが、ハルトさんの炎の勢いを見ると、私としては防御の手を緩めることができません! 防御は、攻撃の倍の厚さであるべきです!」


レン「フィオナ、あんたの防御力は素晴らしい。だが、結界は外から見ても遥斗の居場所が丸わかりだ。暗殺者なら、あの四重防御の隙間から細い毒針でも送り込むぞ」


フィオナ「……! 五重目として、**《スモーク・ベール》**で周囲を完全に隠蔽します!」 レン「待て待て、それはもう防御じゃなくて目くらましだ。落ち着けフィオナ」


 フィオナの「守る」ことへの執念は凄まじく、彼女の訓練は常に「どうすればもっと効率的に攻撃を無効化できるか」ではなく、「どうすれば絶対に攻撃を受け付けないか」という極端な方向に突き進んでいた。遥斗とレンは、その鉄壁の防御力に安堵しつつも、彼女の過剰な警戒心をどうにか制御する必要性を感じていた。


◇◇◇


 実技テスト前日。三人は訓練の最終確認と、フィオナの実戦での防御即応性を試すため、ギルドへと向かった。


レン「ハルトの魔法陣も安定した。フィオナの防御も、豆腐どころかダイヤモンドを四重に重ねたレベルだ。あとは実戦で、連携が完璧に機能するかどうかだな」


 ギルドで受注したのは、B級の中でも難易度が高く、だれも討伐できていなかった**「ビッグ・レッド・ベアー討伐」**。


 受付嬢は、彼らの若さと、特にフィオナの防御特化のローブを見て、過剰に心配し始めた。


受付嬢「あの、お客様方……ビッグ・レッド・ベアーは、本当に危険です。体長5メートル超、魔術分解能力を持ちます。最近は、討伐に向かったベテランの魔術師パーティが、**『魔術が効かない!』**と叫んで逃げ帰ったばかりでして……」


遥斗「魔術が効かない、ですか。それは面白そうですね」


受付嬢「お、面白そうではございません! 特に、そちらの可愛らしいお嬢さん(フィオナを指差す)は、防御特化のようですが、ベアーの炎のブレスは防御魔術を一瞬で焼き尽くしますわよ!」


フィオナ「大丈夫です。私には、七重の結界を展開する準備があります」


受付嬢「な、七重……!? (そんなに分厚い結界は、逆に重くて動けないのでは……)」


レン「心配には及ばない。報酬はきっちり受け取らせてもらうぞ」


 レンはクールに言い放ち、クエストを受注。受付嬢は、まるで生贄を見送るかのような顔で見つめていた。


 夕闇が迫る山中、ベアーの住処とされる洞窟に到着。洞窟の入り口には、熊特有の強烈な体臭と、焼けたような焦げた匂いが漂っていた。


遥斗 (魔術が効かない、か。ステータス書き換えで強化された魔術も通さないのか)


レン「フィオナと俺の魔術は、ベアーの巨体には通用しないと思った方がいいだろう。ハルト、あんたの魔術が効かなかったら、どうするんだ?」


遥斗「その時は、物理でねじ伏せる。俺にはこれがあるからな」遥斗はレンに見せつけるように短剣を抜いて見せた。


◇◇◇


 洞窟の奥へ進むと、開けた空間に、彼らが目指す標的がいた。体長は推定6メートル。全身が炎のように赤い毛皮に覆われた巨体は、まるで動く岩山だ。


 ビッグ・レッド・ベアーは、彼らを見た途端、凄まじい咆哮を上げた。その叫び声は単なる威嚇ではなく、洞窟の天井の岩を少しずつ震わせるほどの魔力を帯びていた。


ベアー「グゥオオオオオッ!」


 ベアーは迷うことなく、破壊のオーラを最も強く感じた遥斗めがけて突進してきた。その速度は、巨体に似合わず、訓練用のホログラムよりも速い。


 三人は即座にポジションに就いた。


 レンは一歩後ろに下がり、光魔術による封印魔術の多重詠唱を開始。フィオナは、ベアーの突進速度を瞬時に計算し、遥斗とレンに**《アクセル・ブースト》**をかける。彼女の魔術は、防御だけでなく、常に仲間を最速で動かす支援が主軸だ。


 遥斗はベアーの突進をギリギリでかわし、訓練の成果を込めた魔法陣を瞬時に展開した。


遥斗「《インフェルノ・ブラスト》!」


 炎の塊がベアーの胸板に直撃した。


 ――だが、結果は惨憺たるものだった。


 炎はベアーの赤い毛皮に触れた瞬間、**「今、何かしたか?」**とでも言いたげな妙な音を立てて分解され、無害な魔素の粉となって霧散した。ベアーは軽く身を震わせただけで、遥斗を鼻で笑うかのように再び爪を振り下ろした。


遥斗(本当に魔術を無効化するんだな)


 遥斗は、避けきれないと悟り、咄嗟に短剣でベアーの爪を受け止めた。


フィオナ「ハルトさん、後ろに下がって!」


 フィオナが即座に遥斗の背後に**《ディフェンス・ウェーブ》**を展開したが、ベアーの爪はそのまま結界を弾き飛ばし、遥斗に深手を与えようとする。


レン「ハルト、そのまま持ちこたえろ! 封印はもうすぐだ!」


 遥斗は短剣一本で必死に耐え、ベアーに押し込まれながら、レンへとアイコンタクトを送った。


レン(タイミングは今しかない!)


 レンは、ベアーが遥斗に集中している隙を突いて、多重魔法陣を完成させた。


レン「《トリプル・チェーン・レステインド》!」


 レンの多重魔法陣から、三本の輝く鎖がベアーの背後から飛来し、巨体の胴体と四肢に食い込んだ。ベアーは唸り声を上げ、動きが止まる。


 遥斗はその隙に短剣を突き刺し、ベアーから飛び退いた。


遥斗「レン、その調子で拘束を維持してくれ!」


 遥斗は、偽ルミナからもらった魔術無効化の短剣を握り直す。短剣には、魔力を帯びた防御層を切り裂く特殊な魔術式が施されている。


 遥斗は再びベアーに接近。短剣に全身の力を乗せて、封印で動きを止めているベアーの背中に深く突き立てた。


 グシャリ!


 魔術で分解できなかった分厚い皮膚と肉が、短剣によって切り裂かれ、ベアーの背中に巨大な傷跡が刻まれた。


ベアーは怒り狂った。その咆哮は、洞窟全体を揺るがし、鎖を無理やり引きちぎった。ベアーは遥斗に向け、口元に凄まじい炎の魔力を凝縮させ始めた。


◇◇◇


 ベアーが口から炎を放つ準備に入ったのを見たフィオナは、顔色を変えた。彼女の防御魔術でさえ、あの魔力を分解する皮膚を持った魔物の炎を直撃で受けるのは危険すぎた。


フィオナ「ハルトさん! レンさん! 私の後ろに!」


 遥斗とレンは、フィオナの素早い指示に即座に従い、フィオナの背後へと飛び退いた。フィオナは両手を広げ、ベアーの炎の魔力が最大になる瞬間を見計らう。


フィオナ「《バリア・レイヤー》! そして、《アイギスの壁》!」


 フィオナの前に、防御の基本である透明な結界バリア・レイヤーが一枚。その外側を覆うように、黄金色の分厚い結界《アイギスの壁》が二枚目として展開された。


 ゴオオオオォォォッ!


 ベアーが口から放った極太の炎が、凄まじい轟音と共にフィオナの二重結界に直撃した。


 一枚目の《バリア・レイヤー》は、ベアーの炎の熱量を吸収しきれず、わずか1秒で**「ああ、もうダメですぅ!」**という悲鳴を上げるかのように砕け散った。


 しかし、二枚目の黄金の《アイギスの壁》は、フィオナの「二度と誰も守り損なわない」という強い意志の魔力によって維持された。結界は内側に深く湾曲し、フィオナの細い体が激しく揺さぶられる。


フィオナ(この程度の炎で、私の『盾』が割れるものですか……!)


 フィオナは歯を食いしばり、炎の魔力を結界全体に拡散させることで、衝撃を吸収し続けた。結界は割れることなく、炎のブレスが尽きるまで、二人を完璧に守り抜いた。


レン「フィオナ、君は本当に魔術師か? まるで要塞だぞ!」


フィオナ「褒めても何も出ません……。それより、今です!」


 炎を放ち尽くしたベアーは、反動で動けなくなっていた。この隙を逃せば、再びベアーは暴れ出す。


 遥斗は迷うことなく、最後の切り札を使うことを決意した。


遥斗 (あいつはもうしばらく動かない。ここで決める)


遥斗は一瞬、目を閉じ、ERROR能力を起動した。彼の身体に、システムが書き換えられる際の「バグ」が発生する。


遥斗「システム・オーバーライド。MP(魔力ポイント)量、500へ書き換え」


 遥斗の全身から一瞬、青白い光が漏れ出し、彼の右目にはシステム異常を象徴する鮮やかな紫色の光が宿った。身体の表面には、一時的にデータが乱れたようなグリッチが発生している。


 その異様な光景に、レンとフィオナは息を呑んだ。


レン「な、なんだその光は!? 」


フィオナ「ハルトさん! その魔力は尋常ではありません! 」


 遥斗は、HPが1になるデメリットによる痛みと、全身を駆け巡る膨大な魔力に耐えながら、二人に向かって大声で命令した。


遥斗「レン! フィオナ! すぐにこの洞窟から出ろ! 問答無用だ!」


 遥斗から放たれる圧倒的な魔力の奔流と、紫色の瞳の異様な光に、二人は本能的な恐怖を感じた。レンはフィオナの腕を引き、一目散に洞窟の出口へと駆け出した。


 二人が洞窟から完全に脱出したことを確認し、遥斗はベアーに向き合った。彼はMP500のうち、450を使い切り、最大出力の魔法陣を構築した。


遥斗「《インフェルノ・ブラスト》展開――すべて焼き尽くせ!」


 魔法陣から放たれたのは、もはや炎ではなかった。それは、純粋なエネルギーの極光であり、辺り一帯を包み込む白い閃光となった。


 閃光はベアーに直撃し、ベアーの魔術分解能力すら意味をなさず、その巨体を一瞬で飲み込んだ。


◇◇◇


 白い閃光が収まり、遥斗は全身の魔力を使い果たし、崩れ落ちた。彼の右目の紫色の光は消え、ただの疲弊した青年に戻っていた。


 ベアーがいた場所は、魔術が洞窟の壁と地面を深くえぐり取り、巨大な空洞が出現していた。もちろん、ベアーの姿は跡形もない。


 遥斗が何とか洞窟の外に出ると、レンとフィオナが待っていた。二人は、洞窟から漏れ出た白い光と、地響きに完全に怯えていた。


レン「ハルト……一体、あの光と異常な魔力は何なんだ? あんたは、本当に人間なのか?」


フィオナ「あれは、自己支援魔術の域を超えています。ハルトさん、正直に教えてください。あなたは何の能力を隠しているのですか?」


 遥斗は、この場でERRORの能力の真実を伝えるわけにはいかないと悟った。ERRORの能力は、まだ機密中の機密だ。


遥斗「……落ち着け、二人とも。あれは、俺が独自に開発した**『魔力許容量強制拡張(MPオーバーロード)』**だ。文字通り、自分自身に強力な支援魔術をかけ、一時的に体内のMPを限界まで高める」


遥斗は、フィオナの得意分野に絡めて説明した。


遥斗「フィオナの《アクセル・ブースト》の、魔力支援バージョンだと思ってくれ。その代わり、発動後は見ての通り、あまり素早く動けなくなる。だから、リスクが大きい裏技でしかない」


フィオナ「自己支援で魔力許容量を拡張……そんな荒業を。確かに、私の防御があれば、その後の隙は補えますが……」


レン「おい、ハルト。いくらなんでも説明が雑すぎないか? ただの支援魔術で、そこまで威力が出るものなのか? お前、何か隠してるな?」


遥斗「何も隠してないし、俺は間違ったこと言ってないぞ。報酬をもらいに行くぞ!」


 レンは納得できない表情をしていたが、遥斗の強引さに渋々引き下がる。フィオナは、ハルトの力が危険なものであることは理解したが、「仲間を守るために危険を冒すハルト」という解釈で、彼の説明を受け入れた。


 三人は雑談をしながらギルドに戻り、討伐の証拠(ベアーの牙の一部)を提出して報酬を受け取った。


 その夜、ルミナの家で、三人は簡単な晩酌を楽しんだ。


レン「ベアーの討伐成功を祝して、乾杯!」


フィオナ「ありがとうございます。私の防御が役に立ってよかったです」


遥斗「フィオナの防御がなければ、俺たちはとっくにベアーの炎のブレスで炭になっていた。あんたこそMVPだ」


 晩酌の最中も、彼らの話題は明日の実技テストの作戦会議に移っていった。


レン「校長のテストはただの戦闘テストではないはずだ」


遥斗「だろうな。フィオナの防御力を最大限に活かす必要がある。俺が囮になって攻撃を誘導し、フィオナの防御で耐える。その隙に、レンが封印と拘束で戦場を分断する」


フィオナ「はい。もしハルトさんが再び『MPオーバーロード』を使うことになったら、私は五重の結界で周囲に**『絶対安全圏』**を構築します」


 レンは、フィオナの過剰防御が不安になり、思わず言った。


レン「フィオナ、五重は多すぎる。移動の邪魔だ。せめて三重で頼む」


フィオナ「いえ、三重では不安です。せっかくのハルトさんの大技が、誰かの飛び道具で中断されては困ります。七重で……」


レン「人の話聞いてたか。さらに多くしてどうする?」


遥斗「(レンに小声で)諦めろ。七重でいい。七重の結界に守られながら、俺は安心して攻撃する」


 夜が更け、彼らは固い信頼と、少しの不安を抱えながら、テストの成功を誓い、別れた。


◇◇◇


 翌朝、バルモンド魔剣術学校の指定された教室に生徒たちが集まった。遥斗はレンとフィオナと合流し、緊張感に満ちた空気を共有していた。


レン「テスト開始だ。気を引き締めろ」


フィオナ「はい。あなたたちを守り抜きます」


 しばらくすると、先生たちが先導し、移動を開始。生徒たちが驚いたのは、向かった先が校舎でも体育館でもなく、町の裏手に広がる海だったことだ。


 波止場には、豪華な装飾が施された中世風の帆船が停泊していた。


生徒A「え、船? 模擬海戦でもやるのか?」


生徒B「初めてのテストに、こんな豪華客船を使うのか?」


 船に乗り込んだ生徒たちは、海賊のコスプレでもさせられるのではないかと不安がる者、豪華な船旅に浮かれる者など、様々だった。


 数時間の航海の後、船は速度を落とした。生徒たちがデッキに集められた時、目の前に広がっていたのは、緑の密林と岩場が剥き出しになった、人の気配が全くない無人島だった。


 生徒たちが船から降ろされると、校長であるドレイクが、船の舳先から、拡声の魔術を使って冷酷な声でアナウンスした。


フェリクス校長「ようこそ、諸君。ここが無人島、すなわち**『無法のアナーキー・アイランド』**だ」


フェリクス校長「今回の実技テストの期間は一週間。冒険者としての資格を得るための最終試練だ。ルールは単純だ」


 生徒たちの顔が青ざめる中、校長はにやりと笑った。


フェリクス校長「この島には、食料、水、そして**『アーティファクト』**という三種の資源しかない。食料と水は、最低限の生存のために。そして、この一週間で最も多くの『アーティファクト』を集めた者から順に、次のステージへと進む」


フェリクス校長「大事なことを言い忘れたな。この島の資源は、すべて奪い合いの対象だ。他者を欺き、裏切り、強奪することも、すべて自由。我々教師陣は一切介入しない。これは、サバイバルだ」


 生徒たちはざわめいた。

「奪い合い?」

「仲間割れをしろというのか?」


フェリクス校長「貴様たちがどれだけ高尚な魔術を学ぼうと、実戦とは、生き残るための汚い戦いだ。生き残れない者、他者に資源を奪われる者は、魔術師になる資格を持たない」


 校長は最後に、生徒たちに一瞥を投げかけた。

フェリクス校長「一週間後、我々が回収に来る。それまで、己の力と意志、そして卑劣な知恵でサバイバルを完遂しろ。テスト開始!」


 船は錨を上げ、生徒たちを残して無情にも去っていった。


 生徒たちはパニックに陥った。そこかしこでグループが形成され、B級クラスの魔術師が、A級クラスの剣士に怯えるなど、弱肉強食の法則が即座に適用され始めた。


レン「おいおい、思っていたより遥かに陰湿だぞ。まさか、資源の奪い合いとはな」


フィオナ「ですが、私たちには三人います! 協力すれば、生き残れます!」


遥斗は短剣を握りしめ、周囲の生徒たちの殺気だった視線を遮断した。


遥斗「ああ。これが、校長が作り出した**『無法の世界』**だ。だが、俺たちのやることは変わらない。生き残る。行くぞ」


 三人は、無法の密林へと足を踏み入れた。彼らの復讐の旅は、いよいよ最初の無法地帯へと突入した。


第12話に続く――。


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