3
色んなやつに戦わせるカオスなバトルロワイヤル第3弾。
――午前8時、謎の孤島。
目を覚ました8人は、一様に混乱していた。いや、正確には全員が混乱している「フリ」をしていた。
「ここは……どこだ!? 父の仇は……いるのかッ!?」
叫ぶはイットリウム。本名なのか元素名なのかすら誰も知らない。
「……ぽてと」
つぶやく**山本**は、地面に落ちていたジャガイモを拾って黙々と皮をむいている。戦う気がまったくない。
「中に……誰もいませんよ」
桂◯葉は、すでに瞳孔が開きかけている。まだ誰も何もしてないのに怖い。
「おい、君たち。この島には国家機密がある。我々が先に制圧する」
ム◯カ大佐はすでに高台を占拠し、双眼鏡で全員を監視していた。
目つきがガチだ。
「な、何か……来る……ッ!!!」
突如、茂みから鉈を振り回して飛び出したのは、竜◯レナ。勢いで木を3本斬った。
「うわッ!?お前、ちょ、落ち着け!!」
O澤が慌てて止めようとするも、
「嘘だッッッ!!」
レナの一喝に吹き飛ばされ、島の端までゴロゴロ転がっていくO澤。
最初の脱落者は、ツッコミの宿命を背負っていた。
「吃驚するほど、弱かったですね」
木の陰から見ていたMr.サークライがつぶやいた。
言葉のナイフが深く刺さる。
「……この島に神剣・長舩は存在しない。仕方ない、俺が神になる」
長舩が突然、片手で木をへし折り始める。どうやら筋肉系の模様。
でもなんか語彙が中二すぎて逆に弱そう。
――30分後、状況は完全にカオス。
イットリウムは「父の仇」という存在に語りかけながら、自作の武器を振り回して空回り中。
「貴様か!?いや、違うな。そっちか!?でも元素番号が違う……」
対象が物理的に存在しない仇なので、戦う方向がズレている。
一方、桂◯葉はすでに人形と会話を始めていた。
「ねえ、これでいいんだよね?私、がんばったよね……?」
周囲の空気が、やたら重い。戦場というより、修羅場である。
――戦局は、ムスカによって支配されつつあった。
「この島の中心部に“雷”があるのだよ。君たちには、それを見せてあげよう」
彼は本当に、ボタンを持っていた。赤く光るスイッチが、不気味に光る。
「ピカッといくぞ?」
言った瞬間、島の西部が爆発。木々が吹き飛び、山本の皮むきが中断された。
「……ぽてと」
彼は立ち上がった。初めて、目に光が戻る。
「てめぇ、俺のぽてとを……」
静かに立ち上がった山本の拳が、爆発の風圧を切り裂いてムスカの元へ――
「ぽ て と ド ラ イ ブ!!」
まさかの格闘術。
ムスカ、吹っ飛ぶ。スイッチもろとも崖下へ。
「計算外だ……ぽてと……強すぎる……」
――最終局面、残るは3人。
鉈ガール:竜◯レナ
元素:イットリウム
芋武神:山本
「父の仇とぽてと、どちらが重いか……答えはひとつッ!!」
イットリウムが叫ぶと、レナが即座に割り込む。
「嘘だッッッ!!!!」
鉈、再び炸裂。空間が割れるほどの斬撃に、イットリウムが吹き飛ぶ。
しかし、彼は最後まで叫んでいた。
「俺の名はYッッッ!!!!!」
爆散。
――最後の勝者は……
「……ぽてと」
山本はレナの鉈を軽くいなし、ぽてとを差し出した。
レナはそれをじっと見つめ、静かに微笑んだ。
「……受け取っても、いいのかな?」
「ぽてと」
島の戦いは終わった。
誰も理解できなかったが、
世界で一番平和な戦争だった。
~完~