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色んなやつに戦わせるカオスなバトルロワイヤル第17弾。
4000文字超えてしまった…
登場人物(戦闘スタイル付き)
ポル・ポト:「耀龍四間飛車」。唯一の理知的で真面目な将棋指し。礼儀正しい。盤面に慈悲はない。
ヒューム:「帰納的穴熊」。“一手ごとに懐疑”して動けない。時間切れ常連。
アッティラ:「ハンガリアン棒銀」。開幕3手で殺意を隠さない。
ハイゼンベルク:「確率的中飛車」。指した駒が確率で別の位置にワープする。もはや量子。
ナポレオン3世:「見栄っ張り矢倉」。王将の前にだけ城を建てる。そこ以外ガラ空き。
ワーグナー:「楽劇型ノーマル振り飛車」。歌いながら指す。意味不明な必殺技名を叫ぶ。
ゲーテ:「詩的二枚落ち」。常に自分を“二枚落ち”と信じている。そうでなくても弱い。
イットリウム(本物のホンモノ):「反逆のうっかり横歩取り」。“将棋”という概念自体に不満を持っている。棋盤の裏を狙いがち。
第1章:カオスの開幕
某・異次元空間「盤界」。
ここに、時空を超えて選ばれし8人の偉人(と物質)が集められていた。
「我々はなぜここに?」と問うヒュームに、主催者・謎の狐面の老人が答える。
「理由などありません。我が見たいのはただ――お前たちの将棋だッ!!」
謎の煽りを受け、八人は静かに席に着く。
ワーグナー「……私は“楽劇・王将序曲”を奏でよう!」
アッティラ「貴様、駒を武器に変える術を知っているか?」
ポル・ポト(ふむ……盤面の整理は済んだ。今日も四間飛車が冴えている)
イットリウム「この将棋盤、何故か反応しない……。裏面に神経回路があるのでは?」
ヒューム「私は……私は、王将が“存在する”ことを確かめることができない……」
ゲーテ「詩を……詠みながら……二枚落ちの美学を……」
ナポレオン3世「よろしい、私は美しく勝つ!」
ハイゼンベルク「駒の確率密度を可視化しておこう……桂馬が5ヶ所に存在しているのを確認」
第2章:1回戦──ポル・ポト vs ワーグナー
会場にオペラ風のBGMが流れる中、ワーグナーが自信満々に開幕。
ワーグナー「第一手!“悲劇なる歩”を唱える!ファ〜〜〜〜〜〜〜♩♩」
ポル・ポト「……(静かに▲7六歩)」
ワーグナー「えっ……?」
ポル・ポトの耀龍四間飛車が、美しいスピードで組み上がっていく。
▲7六歩→▲6六歩→▲6八飛→▲6七銀→▲7七角。美しい。
ワーグナー「そ、それならこちらは“終楽章飛車”だァ!!」
▲2四飛と突っ込むが、完全に無計画。
ポル・ポト「……▲6五歩」
飛車先に絶妙な歩でプレッシャーをかけ、反撃の機会を奪う。
ワーグナー「ッ!?演奏がッ……止まった……」
彼の指先が、まるで指揮棒を失った指揮者のように震える。
――1時間後。
ポル・ポト「……詰みました」
▲6三銀→▲5四飛→▲4二角成。美しすぎる詰将棋。
狐面の老人「勝者、ポル・ポト!唯一の礼儀枠、ここにあり!」
観客(?)「すげぇ……普通に強い……」
「ポル・ポトだけ“将棋大会”をやってる……」
【1回戦第②試合】
ワーグナー vs ポル・ポト(唯一のまとも枠)
会場の空気が変わった。
ヒュームとイットリウムの試合で破壊された将棋盤が修復され、謎の笑顔で運ばれてきた新品の駒セットには「心眼将棋協会公式認定」と焼印がある。まったく関係ないが気にしてはいけない。
そして、そこに座る2人。
片や、ワーグナー。
目を血走らせてオペラスコアをめくる巨匠は、開幕前に言った。
「すべての駒は音楽であるッ!!王将がティンパニ!!香車がヴァイオリン!!」
反対側、静かに正座するのは、
ポル・ポト──まるで空気が澄んでいくかのように落ち着いた雰囲気。眼鏡をくいっと上げ、口を開いた。
「耀龍四間飛車、させていただきます」
\バァァァァン!!!/
控室の誰かが叫んだ。「将棋番組じゃないのに解説がついた!」
将棋ソムリエたなちゅう(観戦者枠)がメモする。
《ポル・ポト、定跡通り美しい駒運び。角交換、金無双、そして銀が浮いて──》
ワーグナーが爆音で語る。
「譜面!!王将を8小節に見立てて、これがマーラーに勝った男の……」
ズガァッ!!
ポル・ポトの銀がスッと滑り込んだ瞬間、ワーグナーの王将は沈黙した。無音の中、ワーグナーは感涙を流しながら崩れ落ちた。
「……カデンツァ……いや……これは……第九よりも崇高だ……」
\勝者:ポル・ポト(完全勝利)/
解説者GOが叫ぶ。「なんだあの男、まるで別アニメの主人公じゃねぇかァァァ!!」
【1回戦第③試合】
ナポレオン3世 vs アッティラ
「おほほほほ、我が家系はヨーロッパの覇者ですのよ!」
ナポレオン3世、金ぴかの軍服に身を包み、将棋盤の前に着席。隣にはマネージャーらしき猫を抱えた謎の婦人がいる。
対するは……アッティラ。
馬に乗って入場し、将棋盤の端に弓矢を置いた。
「これはなんの儀式だ?」
「将棋ですぞ!?知性のぶつかり合い!!指す前にバターを塗るのがマナーですわ!!」
ナポレオン3世、駒にバターを塗るという暴挙に出た。盤上はぬるぬると光る。
だが、アッティラは眉一つ動かさない。持ち駒を一枚一枚噛み砕いて口に入れる。
観客席がどよめく。
「喰ってる!? こいつ駒を食ってる!!」
「あれは"チェス式理解"だッ!アッティラの祖国では将棋の意味が理解されていない!!」
開始直後、アッティラは王将を盤面外に叩きつけた。
「戦において王など不要!民の血が肥やしだ!」
「それは駒じゃなくて現代の倫理観ですわよぉぉ!!」
結局、盤面に何も残らなくなり──
\試合中止:両者退場(盤破壊・駒消滅)/
ワーグナーが呟いた。「アッティラにはソナタも通じぬ……」
控室
ポル・ポトは静かにノートを閉じた。戦いに疲れた顔ひとつせず、次の対戦相手を待っている。
そこへゲーテが近づく。
「君、ただ者じゃないな。あれは……美術的戦法だ。見ていて泣きそうになったよ」
ポル・ポト「ありがとうございます。でも、僕はただ……勝つために、美しさを選んだだけです」
ゲーテ、何かを悟った顔。
「……”唯一のまとも”ってこういう人のことを言うのか」
一方その頃、イットリウム(本物のホンモノ)は、盤の裏に潜り込んで全駒を溶かしていた。
「この世界の重さは、99.4……じゃない、もっと軽い……」
観戦者一同(※たなちゅう除く):
「あいつ何やってんの???」
第2章(続):1回戦第④試合 ゲーテ vs ハイゼンベルク
盤上の哲学と量子の狭間で
観客は息を飲んだ。
対局者は詩人ゲーテと物理学者ハイゼンベルク──一方は言葉の魔術師、もう一方は確率の魔人。
ゲーテの詩的詠唱戦法
ゲーテは静かに盤に駒を置くたびに短詩をつぶやく。
「歩は進みゆく、命の行方を問う」
「銀は輝く、夜空の星のように」
だが、その詩は一切理解されず、ハイゼンベルクは冷静に手を進める。
ハイゼンベルクの不確定性攻撃
ハイゼンベルクの指す駒は常に“存在が不確定”。盤上の駒は5秒ごとに違う場所へワープし、見ている者を混乱させる。
「私の桂馬は……今、四ヶ所に同時存在している」
ゲーテ:「なんだか……感動……」
試合の終盤
勝負は混沌を極め、双方の持ち時間は無限に膨れ上がる。
しかし、ある瞬間、ハイゼンベルクの「量子的詰み」の一手が確定する。
詰みの決定打
ハイゼンベルク:
「君の王将、同時に詰んでいない場所はない……」
ゲーテは感嘆の詩を口ずさみながら、ゆっくりと王将を取られた。
勝者:ハイゼンベルク
エピローグ(1回戦終了時点)
ヒュームは静かに煙草を吸い、ポル・ポトは次の準決勝に向けて静かに調整を始めていた。
一方イットリウムは、盤の裏で何かを解析し続けている。
第3章:準決勝 - 哲学と量子と元素の対決
対戦カード
【準決勝①】ヒューム vs ハイゼンベルク
【準決勝②】ポル・ポト vs イットリウム(本物のホンモノ)
準決勝①:ヒューム vs ハイゼンベルク
盤面はもはや物理法則を超越。
ヒュームは「因果関係は幻想だ」と言い、指す手すら確定できない。
一方ハイゼンベルクは、駒が「観測」されるまでは存在が「不確定」。
対局は「手が決まらない将棋」として永遠に続く。
審判の霊:「ええい、もうヒュームの勝ちでいいんじゃないか……?」
準決勝②:ポル・ポト vs イットリウム(本物のホンモノ)
ここで静かに輝くポル・ポトの耀龍四間飛車。
彼は礼儀正しく、盤面の秩序を乱さず、華麗に攻め続ける。
しかしイットリウムは「将棋の盤は幻想。物質は全て流転する」と言い放ち、盤を捻じ曲げて攻撃を仕掛ける。
ポル・ポトは冷静に対処し、最後は詰みの一手を美しく決める。
第4章:決勝戦──哲学 VS 元素 VS 唯一のまとも
決勝の舞台
静寂に包まれた将棋ドーム。
ここに集うは……
ヒューム(因果を疑う哲学者)
ポル・ポト(耀龍四間飛車使い・唯一のまとも枠)
イットリウム(本物のホンモノ・将棋盤そのものを否定する元素)
三つ巴戦となった。理由は主催者が忘れたため。
第一局:ヒューム VS ポル・ポト
ヒュームは「駒の存在は錯覚か?」と戸惑いながら指し、ポル・ポトは美しい四間飛車を崩さない。
一手ごとに哲学的問答が飛び交う。
ヒューム:「これは真実か?それとも我々の認識の産物か?」
ポル・ポト:「将棋は将棋だ。美しく勝つこと、それが答えだ」
決着はポル・ポトの華麗な詰み。
第二局:ポル・ポト VS イットリウム
イットリウムが盤の重力を歪め、駒を浮かせる。
しかしポル・ポトは冷静に指を動かし、揺らぐ盤面でも耀龍四間飛車を展開。
一瞬の隙を突いて……
ポル・ポト:「詰みました」
イットリウム、不可思議な光を放ち消滅。
最終局:ヒューム VS イットリウム
世界の存在を問う哲学者と、存在を否定する元素。
将棋盤はもはやこの世の物ではなく、勝敗も意味をなさなかった。
結末
ポル・ポト、華麗に勝利。
彼だけが「まともに将棋を指した者」として讃えられた。
エピローグ
将棋ドームは静かに崩れ去った。
だが、あの耀龍四間飛車の美しさは、今も伝説として語り継がれている……
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