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色んなやつに戦わせるカオスなバトルロワイヤル第15弾。
【プロローグ】
西暦など存在しない。
時間すら忘却されたこの謎の次元に、8人の偉人と変人と超常現象が召喚された。目的はただひとつ。
「ババ抜きで最強を決める」
この平和で過激な戦いに、誰が勝ち残り、誰がジョーカーに泣くのか……!
【第一章:始まりのテーブル】
全員が座るのは、どこかの禅寺にありそうな木製のちゃぶ台。
中央には赤いベルベットのクロス。その上にトランプが配られていく。
「我が手に余計なカードなど必要ない。なぜなら私は、世界を支配していた男・始皇帝だからだ!」
ババ抜き開始前から威圧感全開の始皇帝。
その隣では、ガリレオ・ガリレイが望遠鏡でカードを覗いていた。
「ふむ……赤外線スペクトルで分析したところ、このカードは――ジョーカーだ(ニヤリ)」
「ズルいことすなやコラァ!!!」
隣のGO(昭和剣道教師)が竹刀を机に叩きつける。
「お前らなァ!ババ抜きっちゅうもんはなァ!“間”や!!“間”の勝負なんだ聞いてんのかダボカスどもッッ!!」
「ケーキはどこ?」と、隣でマリー・アントワネットが言う。
もはや会話は成立していない。
「慈悲により、私は勝ちを望まぬ」
最澄はそう言ってカードを伏せるが、明らかに自分の手札だけ綺麗にペアになっていた。
「あなたの勝利放棄、それは自己犠牲に見せかけた“戦略的逃避”では?フェミ的視点から問います」
哲学の集合体・フェミが突然問い詰め始めた。
「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさいうるさーい!!!」
たなちゅうが奇声を上げながらカードをばらまく。蝶のように舞い、カードが飛ぶ。
「………………(ただひたすらカードを拾うやすかた)」
こうして、カオスの宴が始まった――!
【第二章:始皇帝の策略】
「ババ抜きとは、すなわち統治である」
そう呟きながら始皇帝は、隣のGOからカードを引いた。
そして、引いた瞬間に叫ぶ。
「ジョーカー……このカード、私を恐れて逃げ込んできたな」
「いや、それお前の勘違いだろ!!!引いただけだ!!」
GOが机を叩く音が鳴り響く。
「静寂を保て」と最澄が合掌。
「合掌してる暇があったらカード引けやぁぁッ!!」
GOはすでにカードゲームに本気すぎて目が血走っていた。
【第三章:フェミvsガリレオ】
「このカードが赤なら、あなたは“情熱”に支配されている。青なら“冷徹”。
でもこのジョーカーは“矛盾”の象徴なの」
フェミが延々と語りながら、ガリレオにカードを引かせる。
「私は真理しか信じないが……あえてこの“矛盾”を引こう」
ガリレオ、ジョーカーを手にする。
「ほらね」
「うわマジかああああああああああああああッ!!!???」
ガリレオ、突然地動説を否定したくなるほどショック。
「真理とは痛みである」とフェミが呟く。
どこか満足げ。
【第四章:マリー・アントワネット、ケーキを配る】
「みなさん、ちょっと小腹が空いたでしょう?」
手札をそっと置いて、ケーキを配り始めるマリー・アントワネット。
「いらんわ!!バタークリームでカードがベタベタや!!」
GOが叫ぶが、誰も止められない。
彼女の気品は、誰よりも重かった。
【第五章:たなちゅう乱入】
突然たなちゅうが走り出す。
「うわぁぁぁああああ!!!!俺のカードが!!!トイレにぃぃ!!!」
机の上は混乱。全員の手札がバラまかれた。
「これが……無常か……」と最澄。
「いや違う!これはただの多動だボケェ!!!」GOが怒鳴るが、誰も聞いてない。
【第六章:やすかたの静かな圧】
カードを静かに引き続けるやすかた。
誰からも目立たず、表情もなく、無音でペアを揃えていく。
フェミ「あなた……まさか“空”そのもの……?」
やすかた「……………」
ガリレオ「重力の影響を一切受けていない……この男……やばい」
【第七章:終盤戦】
残ったのは4人――
始皇帝(ジョーカー所持)
フェミ
GO
やすかた
GOが叫ぶ。
「今この瞬間が、男として生きるか死ぬかの分かれ目だろぉっ!!!全身全霊をかけた“間”を感じろやあああッッ!!」
カードを引くGO。
ジョーカーだった。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
叫びとともに爆散(精神的に)。
【最終章:ババを受け入れた王】
始皇帝、とうとうジョーカーを最後まで握りしめたまま終了。
「…………よかろう。ジョーカーを抱きしめ、我は敗者となろう」
その姿は、どこか満足げだった。
「敗北を知りたい」と呟く姿に、全員がうなずいた。
【エピローグ:勝者と敗者】
勝者:やすかた。
最後まで無言で、誰よりも静かに勝ち抜いた謎の存在。
「……………(勝ってる)」
たなちゅう「マジかよ……」
最澄「これも、また“道”なのでしょう……」
フェミ「無……それは最も強い女性性かもしれない……」
こうして世界は救われた。
ババ抜きによって。
〈完〉