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色んなやつに戦わせるカオスなバトルロワイヤル第1弾。
陽炎の揺れる荒野。
そこはどの世界ともつながっていない、概念と存在が錯綜する戦闘領域。
空に浮かぶのは歪んだ数式、地面には崩れた思想書と椅子の残骸。
風を裂くように最初に現れたのは——
【イットリウム(本物のホンモノ)】
「この場に偽物などいないようだな。良いことだ、殺し甲斐がある」
その足取りは金属質でありながら柔らかい。手から漏れ出すのは、物理法則を侵す漆黒の光。
次元をひとつ斬り捨てると、時間がわずかに歪んだ。
続いて現れたのは、紙の羽を広げた神——
【僕(神です。同時に紙です。)】
「この場に神が二柱あるのは不均衡ですね。ならば私が折られましょうか?それとも燃やされますか?」
自嘲めいた笑みを浮かべながら、周囲に神気とコピー用紙の残骸を撒き散らす。
だが目は本気だ。神は常に、自らの破滅を予見している。
【やすかた(chair brakerモード)】が地面に拳を叩きつけ、地形が裂けた。
「椅子?ねぇよそんなもん!全部壊したッッ!」
眼は完全にイっている。腕には「IKEA」のラベル。筋肉は破壊のためにある。
咆哮とともに彼は走る。狙うは最も固そうなもの、つまりイットリウム。
【忖度(富士山)】は、すでにそこに“あった”。
誰も召喚していないのに、頂上からマグマとともに登場。
喋らない。ただ静かに、山体崩壊を引き起こす圧力だけで周囲の空気をねじ曲げる。
【蟹(H野)】がその間を縫って出てくる。
「なんだこのメンツ。おいO橋、いけそうか?」
彼は蟹。だが明らかに人間の知性を持ち、サイドキックにO橋を従えている。
【ワラジムシ(O橋)】は、口を開かず高速回転で地面を転がる。
「………(観察中)」
彼は分析型。巨大な体躯を丸め、忖度の山肌を走り回って情報収集している。
そこへ、動き回る影——
【たなちゅう(多動)】が乱入!
「おおおおおお!!!今なら勝てる気がするうう!!ヒャッホーーー!!」
完全にノリだけ。だがその速度と行動予測不能さは、戦場で最も厄介な存在だ。
最後に静かに現れたのは——
【フェミ(デカルトベーコンアリストテレス)】
「暴力?滑稽ですね。まずは存在の定義から始めましょうか。あなたたちは"ある"と証明できますか?」
理屈と思想の暴力が、空間を染める。
彼の周囲ではあらゆる攻撃が自己否定に陥り、形を崩していく。
◆ 戦闘、開始。
先手を取ったのは、やすかた(chair brakerモード)。
イットリウムに向かって拳を叩き込む!
──しかしその瞬間、イットリウムが次元を切る。
拳はすり抜け、空中で椅子が一脚爆発。誰も持っていなかったのに。
「貴様…俺のイメージの椅子を壊したな…」
怒り狂ったイットリウムが**“真なる構造式”**を詠唱開始。
周囲の空間が周期表に変化する。
一方、**神であり紙である“僕”**は空から降下。
神気で全員を制圧しようとするが、蟹が横から紙をちぎる!
「神でも紙でも、薄けりゃ切れるんだよ!」
蟹、強い。ハサミ、偉大。
フェミはただ呟く。
「椅子が壊れた?それは象徴的だ。座する場所を失った思想は、自壊する。」
周囲の概念系キャラが次々と自己矛盾に陥る。“僕”が一瞬、紙吹雪になる。
**たなちゅう(多動)**は誰にも狙われていない。
その間に**ワラジムシ(O橋)**と結託し、フェミの背後を取る。
「なんか知らんけどいけー!!」
O橋が丸まり激突、フェミのメガネを砕く!
「論理が…揺らいだ…ッ!」
イットリウムがついに完成させた呪文——
「原子、解放」
爆発。空が割れる。やすかたが吹き飛び、彼の下敷きになっていた幻の椅子が昇天。
そして残ったのは……
◆ 最後に立っていたのは——
忖度(富士山)
誰も直接攻撃しなかったから。動かず、崩れず、ただ“そこにある”という最強の力。
山の頂から、すべてを見下ろしている。
「………………(たぶん満足そう)」
- 完 -