宮廷の洗礼①
何となく話の大筋は考えていたのですが、文章にしようと思うと難しいですね。
王宮の裏門につくと、ダンは驚いた。
自分が今まで暮らしてきたライナ城と比べると造りは劣るが、色彩豊かな石造りの立派な家が所狭しと並んでいたからだ。
こんなに家がぎゅうぎゅうに並んでるのは見たことが無かった。
「これが王宮なのか?」ダンは先ほどまで王都を見れなかった悔しさを忘れて、ぽかんとしながらつぶやいた。
「これは王宮の一部だ。王宮は王を始めとして、公爵や伯爵、貴族や騎士、またその使用人など、数百以上の家族、数千人以上の人間が暮らす 1つの街のようなものだと考えたほうがいい」ラショーンは誇らしそうに言った。「今近くに見えているほとんどの家は位の低い貴族や、その使用人が住む家だ。この先に見える家々を進むと、どんどん地位の高い貴族が住む地域に向かっていく。その先が宮殿だ。騎士たちや、従者の訓練は宮殿にある訓練棟で行われる、そのため、私たちも宮殿に部屋をいただき、宮殿で暮らすことになる」ラショーンは、ダンの父と過ごした時間を思い出して懐かしい気持ちになりながら、街並みを見回していった。
2人は裏門を通り、下級騎士たちの家に続いて中級騎士達の地区を進みながら、宮殿に向かった。
急に街並みが変わってまた門があった。
中級騎士たちの地区はここまでのようだ。
この先は、石造りの山のいただきに王宮があった。ダンは、それを見上げてまたぽかんと口をあけてしまった。
それは全てが白と灰色で、光が当たると最高級の真珠のようにキラキラと輝いて見えた。
灰白色の硬質な石でできた美しい塔と岩山。
その一際高いところにあるのが宮殿だった。
王宮の門を守っているのは、数人の騎士たち。
騎士たちが着ている甲冑は銀色に輝いている。
もしかしたら伝説の金属、ミスリルかもしれないと、ダンは思った。
門の奥は、大小様々な塔が立ち並び、さらに奥には一際高くて、大きな塔が立っていた。
おそらく宮殿だろう。
ラショーンの話では、王宮の中には、庭園や訓練場のほか、遊技場や美術館、図書館、厩舎、兵舎その他の様々な建物があるとの事だった。
ラショーンや父の話を聞いて知っていたことだけれど、実際に目にすると話で聞いていたこととはまるで違ったように新鮮で、壮大で、全てが荘厳に感じられた。
ラショーンは門を守っている騎士の1人に話しかけた。「ライナ領から参りました。私は、ラショーン・ボントン。騎士の訓練を受ける私の主、ライナ領主子息のダンを連れてきました」
騎士はショーンにうなずいて、門を通れるように道を開けてくれた。
ダンはドキドキしながら灰白色の門を通り抜けラショーンの後をおった。
しばらく進むと、若い馬丁がやってきて、ラショーンとダンの馬たちを預かっていった。
馬丁は預かり際に丁寧にラショーンにお辞儀をしていった。「この馬はかわいそうに相当つかれてますぜ。特に年寄りの小馬はかなり頑張ったようだ」
ラショーンは財布からお金を取り出して馬丁に渡した。「4日近く歩き続けたからな。よく世話をしてやってくれ」
「へへっ、旦那はわかってますね。おいらに任せてください」馬丁は人好きのする笑顔でラショーンとダンにもう一度お辞儀をして、厩舎に馬を引いて行った。
馬丁が下がった後、ラショーンがすぐに教えてくれる「あの金を渡すか渡さないかで、ずいぶん馬の扱いが変わってくるんだ。ダンもトッドを大事にしたいと思うなら、馬丁とは仲良くしておくといい」ダンは神妙にうなずいた。