旅立ち⑤
3日後の日も暮れる頃に、2人は王家の森に入った。
森番に、王宮で騎士の訓練を受けることを告げて通行料を支払って通行許可証をもらった。
王家の森は、王都を全て囲っているわけではなく、王宮の裏門にあった。
ライナ領側から来た場合には王家の森から王宮の裏門に向かうことができる。
ラショーンは森番と話しながら馬を進め、ダンはその後ろを続きながら2人の話を聞いていた。
こんなのはひどい!
王都を見れると思っていたのに森を抜けたら宮殿だなんて!
ダンは今すぐラショーンに王都を見たいと言いたかったが、森番がいたため後ろから睨みつけるだけで我慢した。
3人は王家の森を抜け、森番は王家の森に戻っていった。
ラショーンはため息をついた。「坊ちゃん、どうした」ラショーンはふりかえって、ダンに声をかけた。「森の中からだんまりだったじゃないか?」
「どうして王都を通らないって、教えてくれなかったの?」ダンはいった。「王都を見るのを楽しみにしていたのに!」
「時間がかかりすぎるからだ。それに、あんたにそれを言ったら駄々をこねて、遠回りしても王都を通る道から行くようになってしまっただろ?」ラショーンは止まってダンを諭すようにいった。
「王宮の裏門から入るなんて惨めじゃないか!」ダンは思ったことをそのまま言った。「王都を通って正門から迎えられる方が貴族の登城にはふさわしいと思わないか?」
「いいか、ダン。よく聞くんだ」ラショーンはうなった。「ライナ領の者だけが森を通って、正式に裏門から王宮に行くことができる。これは王の背後を任せてもいいほど信頼されてる証なんだよ」
「それは、誇りに思うけど…」ダンはなんとか王都を見てみたかった。なにかラショーンを納得させる言い訳を考えなければ。
「なら誇りは大事にしないとな」ラショーンはすぐに言葉を引き継いで、ダンに言葉を続かせないように馬を走らせた。
ダンはラショーンを怒鳴りながらも着いてくことしかできなかった。
ここでラショーンについていかなかった迷子になるのは確実だ。