旅立ち②
王宮までの道は、しばらくはライナ領の田園風景や街道が続く。
朝から夕方まで馬で歩けばライナ領を抜けて、その後ジャイアントフェザー山脈から王家の森を通って王都に入り、王宮に向かう。
深い森や崖、堅固な都市に囲まれた中央にある王宮は、外敵も含めて国民ですら簡単に入ることが許されない。
神代に作られた王宮は美しい楽園のようなところだと言われている。
夕方には、ジャイアントフェザー山脈に入る手前にある最後の街に着いた。
ジャイアントフェザー山脈は、その名のとおり大きな羽のような形をしていた。
その羽が王都を包むように守っている。
山脈は切り立った崖が長く続き、王都とその周りの土地を分断するようにしていたため、都市を守る自然の城砦の役目を果たしていた。
「さて、どうする。このまま山に入ってもいいし、今日はもう夕方だから街に泊まって明朝に山に入ってもいいが。いずれにしても明日以降山で寝泊まりだ」ラショーン・ボントンは遠くにある街の人の流れを見ながら言った。
ジャイアントフェザーの山越えには3日はかかる。標高も高いが何より切り立った崖が多いため、簡単には越えられない。
本来の崖の状態なら20日以上かかるところを、長い年月をかけて人が道を作り3日で越えられるようにまでなった。
山を抜けたら王家の森がある。
王家の森を抜けるのには手順がいる。
決まった者に金を払って通行許可証をもらい、決まった道を歩く必要がある。
決まりに従わない者には死が待っている。
「まだトッドも走れるし、空も明るい。早く王都を見てみたいしこのまま山にすすもう」ダンはトッドの背を軽くたたいて、山の入り口に進む。
王都には行ったことはないけど、山には何度も来てるし、ライナ領と接しているから自分にとっては庭のようなものだ。
父や母、ラショーンには内緒だが、危険な山の人、と話をしたり、道に迷った時に助けてもらったこともある。
危険な、というのは彼ら(彼女ら)は常に武器を携帯していてうさぎや、クマや猪なんかを相手にしてるから、殺そうと思えば人なんかも簡単に殺せるからだ。
それに物静かで滅多に街には降りてこないから、山の人、と言われて普通の人と区別されている。
「了解した。坊ちゃん」ラショーンはつぶやいた。
「ラショーン!その坊ちゃんっていうのはやめてくれ!」ダンはいった。
山道にいる人から少しくすくすとした笑い声が聞こえたが、気にせず続ける。「坊ちゃん、なんて呼ばれたら…」ダンは頭を振った。「王宮に行ったらなめられないようにしないと!」今のうちにラショーンに言い聞かせておかないと、きっと王宮でもうっかり口にするに違いない。
「わかったよ、ダン」ラショーンは素直にいった。
ダンは頷いていった。「結構!」