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宮廷の洗礼⑩(宮廷の洗礼、終わり)

 お昼前に治療師長に、体が問題なく動くようになったことを確認してもらい、昼食時間を告げる鐘の音を聞いて食堂に向かった。

アーヴィング治療師長は、寝不足でクマができたダンの顔を見て、寝足りなければまだ寝てもいいと言ってくれた。

ダンは頭か体を動かしていないと、不安な気持ちが押し寄せてとても休むことができると思えなかったため昼食を食べて授業に出ると伝えた。



 鐘が鳴ったあとすぐに食堂に向かうと、とにかく人数の多さに圧倒された。

同い年くらいの少年がこんなに一堂に会するのを見るのはもちろんはじめてだったし、自分も含めて同じ服を全員が着ているという光景も奇妙だった。(起床の鐘が鳴ったあと、ラショーンが来て、着替えとして従者の制服を置いていってくれた)

 前回見た時は10数人いたかというくらいだったが、今は長いテーブルが数々の食事と人で埋まっている。

従者を全部合わせたら100人くらいはいるんじゃないだろうか。

 圧巻の光景にダンが食堂の入り口で立ち止まっていると、近くに座って食事をはじめていた子たちがダンを見るなりシーンとして、そこから水を打ったように食堂が静まってしまった。

ダンを見てヒソヒソと何か言う声と、給仕が食事を運ぶ音しか聞こえなくなって、ものすごく気まずい思いがする。

もしかして、もうすでにダンが宮廷に来た初日に気絶をして、治療塔に運ばれたことが噂になってるのだろうか。4日の山越えにも耐えられない弱い子だと思われていたら?

気絶したのは、限界まで魔力と体力を使ったからで、弱い人間なんかじゃないと伝えたかった。

永遠に感じられるような水を打った静けさは、誰かが話し始めた音ですぐにおしゃべりの音に変わった。

 ダンは自分を弁護するのを諦めて、空いてる席がないか探しはじめることにした。

奥の席より少し手前で誰かが、恐らく自分に向かって元気に手を振ってくれてる。

目立ちたくないのにと思いながらよく見ると、アクトン家のギャビンだった。

少しでも知ってる顔が見れてホッとしながら小走りでギャビンに向かってかけだした。

ギャビンはダンが座るスペースを空けてくれてすぐに目の前の皿に好みも聞かずに様々なパンと肉と野菜をよそってくれる。「大注目だな?」

「こんなにみんなからの注目を浴びるのは、恐らく生まれた時以来だよ」

「昨日は見なかったから心配だったんだけど、その様子なら大丈夫そうだな?」

「みんな僕に何があったか知ってるの?」

「うーん。本当かは分からないけど噂が回ってるな」

「どんな…噂だい?」

「君は、かの有名なド・ラ・ポール公爵家アガタ公爵の甥っ子で、さらには魔法の使い手で、何と宮殿に仕官した初日に与えられた部屋で魔法の実験をして、最後は実験に失敗して呪いにかかって倒れたってところだけど…」

ギャビンが少し笑いながらそう言って周りも少しニヤニヤしてたので、ダンはありもしない噂に対する怒りと恥ずかしさとで顔が赤黒くなった。「呪いは返せたみたいだね」ダンは震える声で言い返した。

「おい、怒るなって!」ウィンダム家のガイが落ち着くようにカップに飲み物をそそいで飲むようにいった。「ギャビンはこんなこと言ってるけど、噂をしてた連中にやめるように言ってたんだ」

ダンは渡された飲み物を飲みながらギャビンを見ると、ギャビンは肩をすくめてみせた。

ダンの正面に座ってる、ビーチャム家のトマスが美少女顔を台無しに食べ物を頬に詰め込みながらいった。「で、実際はどうしたんだい?昨日休んだのはただのは風邪かなにか?」

「…僕にも分からないけど、君たちと別れてベッドで寝ていたら、体が動かなくなって…」

ダンは周りが聞き耳を立ててるのに気づいた。少し黙るとまたおしゃべりを再開してくれた。

「体が動かなくなって、どうした?」ギャビンが聞いた。

「…気絶した」

ギャビンやガイ、トマス、それからその隣にいたリー家のオーガスタ、みんなが黙った。

「…体も動かないし、声も出なかったから、なんとか助けてもらおうとしてドアに火をつけたんだ…」弱い人間だと思われたくなくてダンは続けていった。

「急に体が動かなくなったら、怖くて気絶するのは当然さ。ガイなら間違いなくちびってる」ギャビンがいった。

「そうだな。ギャビンなら当然、大きいほうまで漏らすくらいなことだな」ガイが言い返した。2人はダンを挟んでしばしやり合った。そのあとオーガスタがポツリと言った。「でも、体が動かないのにどうやってドアに火を付けたの?魔法でつけるにしても城のドアには防衛の魔法がかかってただろ?」

「確かに、一体どうやったんだ?まさか、本当に魔法の使い手かい?」トマスが頬にある食べ物を飲み下しながら聞いた。みんなも興味深そうにダンをみた。

ダンはまた注目されたことに恥ずかしさを感じながら正直にいった。「分からない。とにかく必死で、燃えるように願ってドアに魔力を送り続けたんだ。そしたら、ドアの模様が光って、最後は火がついた」

「やるな」トマスは感心したようにいって、ダンのカップに飲み物をつぎたした。

みんなも感心したように拍手したり、小さく口笛をふいた。

ダンはまた飲み物を口にした。すごく甘いぶどうジュースだ!

「…最後は魔力と体力がなくなって気絶しちゃったけどね」ダンは照れ隠しで最後に付け足した。

 ことの真相を話したことで、5人は打ち解けた。気絶したことに関して弱虫扱いされなかったこと。城の防衛を破って、ドアに魔法で火をつけたことに感心してくれたことが嬉しかった。(ドアを燃やしてしまったことはもちろん反省しているが)

 ダンはみんなに話をしたことで、暗い気持ちになるできごとから、ちょっとした武勇伝をもったように感じ方が変わっていた。

やっと従者仲間との会話まで辿り着くことができました。

次の章ではウィルとの邂逅を書いていきます。

また、毎日更新を心がけておりますが、見直しの時間などを持てずにあげてしまっているところもあるので、次のおやすみにしっかり直します。見ていただいた方で、読みにいと思っている方がいましたら申し訳ないです!

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