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ページ4 五層重ねのグラタン(前半)

 春風に吹かれて花舞う季節。

 ノルさんがお散歩をしていると、道の真ん中に人だかりが出来ていました。

 なんだ、なんだ? 有名人でもいるのか?

 ぴょんぴょんと近づくと、そこに居たのはなんと──




「──神官の姉ちゃん?」


「アルバさん!?」


 ケーキ屋からの帰り道。十時のおやつを購入してノルたちが店に戻ると、玄関前で行き倒れるアルバの姿を見つけた。


『誰か巡回兵を呼んでこい!』


『息はある? 大丈夫?』


『嬢ちゃん、目を覚ませっ!』


『行き倒れの神官みこさん、かわいい……』


 などと、飛び交う声の中をノルが割って入ると、うつ伏せで倒れこむアルバの姿があった。慌ててロゼも駆けつけ、アルバの脈を取る。


「脈拍なし、呼吸なし、体温氷点下。顔色は氷色……つまり、死んで──」


「ねぇよ」


「おわっ⁉」


 むくりとアルバが身体を起こす。

 急に動き出した彼女に驚いたノルが慌てて口を防ぐ。

 しかしまわりはアルバの快復を喜んでいるのか、うさぎの口から中年男の声が飛び出たことには誰も気づいていなかった。

 心の中で安堵の息を吐いてからノルはロゼに視線を送る。しかし、彼女が口を開く前にアルバが言った。


「腹減った。とりあえず、なんか食わせろ」


 ◇ ◇ ◇


 先日、城から依頼を受けてニアの森に入ったふたりは危機に陥った。

 悪しき魔獣。

 巨大な鳥に襲われ、あわやという場面でロゼを助けたのが、現在ノルの目の前でパイ重ねのケーキ(ミルフィーユケーキ)にがっつく少女であった。

 名をアルバ。

 聖国パトシナに本拠地を置く、調停機関フィーティアの神官みこさんだ。

 虹色プリズム帯びた長い金髪。星屑色の瞳。さながら聖女を想像するような神々しくも清楚な佇まい。しかし、口を開けば──


「おい、うさぎ。人の分まで食うな。それからロゼ、紅茶お代わり」


「……お前さ。黙ってれば、文句無しの美少女なのにって、よく言われない?」


「余計なお世話だ」


 そう、まさに残念な聖女様なのである。

 荒々しい口調に不機嫌そうな眼差し。

 それでもケーキにがっつく所作がそこそこ洗練されているのは、意外といいところの出のお嬢様なのかもしれない。

 姿勢正しく椅子に腰かけ、ケーキを頬張る神官を見て、ノルは思い出す。


 ──調停機関フィーティア。


 古い時代より大陸平定に尽力してきた組織である(ロゼいわく胡散臭い)彼らは、大陸全土に支部という名の神殿を持っている。


 ここ、ユーハルドにも神殿があり、アルバはそこに所属する神官だ。同時に魔導師でもある彼女はロゼ同様、魔導品アイテム無しで魔法が使える。


 さらに、一般的な魔導師といえば、火・水・土・風の四属性の魔法がメインとなるが、まれに雷などの光魔法、幻術や呪いといった未分類の魔法を使う者がいるそうで、彼女はその使い手でもあり、珍しいタイプの魔導師らしい。


(ふぅむ、つくづく人は見かけによらんなぁ)


 感慨深くノルが頷くと、アルバが眉根を寄せて見下ろしてくる。


「なにひとりで納得したような顔してんだ? ほんと変なうさぎだよなぁ、こいつ」


「いや、お前に言われたくはないんだが。あと『ノルさん』って呼べ。こちとらお前の百倍は生きてる大先輩だぞ」


「はいよ、大星霊ノル様。──で、依頼の件だが、任せていいよな?」


「いやいやいや! 意味がわからんし! まずは店の前で倒れてた経緯とか、そういうのが先だろ。すっ飛ばすなよ、説明を!」


 ノルがぴしりとフォークを向けて指摘すると、『人にフォークを向けんなよ……』と顔をしかめて彼女はケーキを口にした。


「さっきも言ったが、空腹で倒れた。それがここの前だったのは、ロゼッタさんに依頼があったからだ」


「わたしにですか?」


 茶葉を入れ替えたティーポットを持ってロゼがノルの隣に座る。そこにぽんっと皮袋が置かれた。


「こ、これは……銀貨がこんなに……!?」


 計四十枚。じゃらじゃらと銀貨が入った皮袋を開いて、ロゼが目を見開いた。


「金貨二枚分。そこからロゼッタさんの取り分を引いて、子供三十人が腹一杯食える料理を作ってほしい」


「三十人……多いですね。もしかしてアルバさんのお子さんたちですか?」


「嘘だろ。どうしたらそんな発想になるんだよ」


「そうだぞ、ロゼ。普通に考えて、この年でそんなには産めないだろう。せいぜいひとりかふたりだ」


「そうでした! アルバさんは見たところ十代後半……と、なると、ご兄弟姉妹きょうだいでしょうか。けっこうな大所帯ですねー」


「けっこうつうか、大家族も大家族。みんなで球技大会、出来んぞ」


「おお……すごいですねぇ」


 なんて賑やかな光景だ! 

 ふたりが想像すると、アルバが盛大に頭を抱えた。


「……テメェら、ふざけてんのか? 異郷返りの孤児たちに決まってんだろうが」


「異郷返り?」


 なにそれ、とノルが見上げると、ロゼが説明してくれた。


「簡単にいうと、魔導品どうぐなしに魔法が使える人間のこと、ですかね」


 いわく、遠い遠い昔。

 この世界は妖精郷いきょうとひとつだった。

 ゆえに彼らを祖先に持つ者たちの中からごく稀に、その血を色濃く受け継ぎ生まれてくる者たちがいる。


 いわゆる先祖返り。


 古くから『異郷返いきょうがえり』と呼ばれ、彼らは総じて魔力が高く、その見た目も少々風変わりであることが多いらしい。

 例えば髪の色。

 アルバがそうだが、陽の下では淡い金髪が虹彩こうさいを帯びる。


 その美しい容貌から、異郷返りを欲する道楽者たち。

 その高い魔力から、悪事に利用せんと画策する為政者たち。

 その特異な見た目から、自らのコミュニティから排除しようする輩、あるいは彼らの家族。


 そんな様々な不条理から彼らを保護しているのが調停機関フィーティアだ。

 彼らの支部──各神殿では保護された異郷返りたちへ仕事を斡旋あっせんを行っている。

 しかし、幼子たちは成人するまで神殿内部に作られた孤児院で過ごすことになるらしい。


「──と、いうわけで、ユーハルド国内で保護された異郷返りの子供たちがここの王都にある神殿で暮らしているわけですね」


「ほーん。なんだかそう聞くと、唐突に暗い社会構造を垣間見てしまった気がするんだが……えっと、アルバも異郷返り、なんだよな?」


「まぁな」


 窓から入る陽の光に照らされて、アルバの金髪が虹色を帯びる。


「つーわけで、うちにいるチビどもにうまい飯を食わせてやりたいって話。あの眼鏡の兄ちゃんも言ってたが、ここは色んな依頼を頼める絶賛駆け出し中の料理屋なんだろ? ほら、お客様が仕事を持ってきてやったぞ」


「すごく偉そうな態度……。ロゼ、こういう不躾けな客の依頼は断っていいんだぞ? どうせ受けたところであれこれ振り回されて終わりだ。ノルさんはオススメしないね」


「なんだと? 客を選べる立場かよ」


「ほれみろ。こういうことを言う……」


「ですが、アルバさんのようなお客さまって、一度気に入れば、そのあとも長くリピートして下さる確率が高いそうですよ」


「そうなの?」


「はい。今日行ったケーキ屋さんの店主さんが話されていました」


 いつの間にそんな話を。そしてそれを客に話す店主もどうなんだとノルは思ったが、面倒なので口を閉じておいた。


「で、けっきょく受けるのか、受けないのか、どっちだ?」


「もちろん、お受けいたしますよ。ノルさん、アルバさんにメニュー表を」


「ほいよー」


 ノルがアルバにメニュー表を渡す。


「では、料理はこちらのメニューの中からお選びください」


「なになに? 森のオムライス、ロールキャベツ(赤味╱白味)、季節のシチュー、サンドイッチ各種、日替わりリゾット……なんかざっくりしてんな、料理名」


「その日の仕入れによって変わるので」


「ふーん」


(それで納得するんだ)


 ノルはアルバを見上げた。


「まあ……どれでもいいが、どうせなら食べて面白いもんがいいな」


「食べて面白い、ですか?」


「チビどもが喜びそうなやつ。そうだな、色んな色の蝶型パスタ(スピルパスタ)が入ったグラタンなんかどうだ?」


「グラタン? 確かロゼの料理絵日記には載っていなかったはずだが……」


 ノルがカウンター裏から例の料理本を持ってきてページをぱらぱらすると、アルバの顔がひきつった。


「なんだそのうちのチビどもが描いたような絵日記は」


「ロゼの料理のレシピ集」


「まじかよ……。なんか、可哀想なレベルだな」


「だろ?」


「うぅ……ふたりがひどいです」


 ロゼがガクッと肩を落とす。


「グラタンでしたら作れますよ? そちらに記載の無い料理も承っていますから。どんな料理がいいか、事前にお聞きできればご用意いたします」


「そうなん? でもお前、レシピ無視して作ると変な味になるってよく聞くぞ」


「大丈夫です。こうみえて、わたしは絶対味感(みかん)の持ち主ですから……!」


 なにそれ、絶対音感じゃなくて?

 ちょっと得意気に話すロゼに、この子いろいろ大丈夫だろうか、とノルは心配になった。


「疑ってますね? ノルさん」


「いやだって、絶対味感とか意味分からんし、な?」


 ノルが話を振ると、アルバも頷いた。ロゼが「つまり」と続ける。


「一度食べた料理なら、完璧に味を再現できるということです!」


「味の、再現……?」


「なるほど……特殊技能ってやつか。すげぇな。さすがは篝火かがりの魔導師さんだ」


「そこ、魔導師、関係あるん?」


 変なところで感心するアルバだが、ノルからすれば地味な特技という印象だった。

 ちなみにロゼいわく、味変は可能のようで、例えばリゾットの味を森族風(きのこ味)から妖精国風(トマト味)に変えたり、サンドイッチの具を変更しての提供は出来る。

 ただし、菓子スイーツは無理。

 きっちり計測しないと作れないものは難しいとのことだった。


「グラタンならちょうど先日セリカさんのところでも頂きましたし、以前も何回か食べたことがありますのですぐに作れますよ」


「じゃあ絵日記に追加しとけよ」


「その、ちょっと書くのが面倒で……」


「わかった。俺が書いといてやる」


 料理絵日記はノルが預かった。


「そうだっ。せっかくですし、こちらのパイ重ね風(ミルフィーユふう)のミートグラタンなどはどうですか?」


パイ重ね風(ミルフィーユふう)?」


 アルバが聞き返すと、ロゼは目を輝かせていった。


パイ重ね(ミルフィーユ)のように、平板上のパスタを使ってミートソースとホワイトソースを交互に重ねるんです!」


 机に身を乗り出して、次第に早口で捲し立てる。


「そして、さきほどアルバさんが話されていたカラフル蝶型(スピル)パスタの代わりに色つき平板パスタを敷き詰めればほら──」


 さらにヒートアップ。彼女はカウンター裏から色鉛筆と紙を取り出し、謎の図案を書いていく。


「豚肉の薄切り肉のように何層も重ねたものは大抵何でも美味しくなるものですからそれでこうしてああして重ねて重ねて重ねて──」


「待った、待った、待った! 何言ってんのかわかんねぇよ、あと怖いから、それ止めて⁉」


 異様な光を瞳に宿して、一心不乱に色鉛筆を走らせる姿はちょっと怖い。やがてカラフルな図案が完成した。


「見て下さい、ノルさん、アルバさん! 名付けて、五層のグラタン(ミルフィーユグラタン)っ、どうでしょう!」


「う、うん……。よくわからないが、いいんじゃないか? なぁ、アルバ」


「お、おう……。よくわからんが、つまり三層グラタンのすごいやつを作ってくれるってことでいいのか?」


「言っちゃったよ」


 実はノルもそう思っていた。

 ちなみに三層グラタンとは、三種の具材もしくは三種のソースを平板上のパスタで挟んで重ねて釜で焼いた、その名の通り三層重ねのグラタン(ラザニア的なもの)である。

 断面が美しいと評判で、最近王都で流行っているとかいないとか。

 ともかく、こうしてふたりはアルバの依頼を受け、神殿へと向かうのだった。


 ◇ ◇ ◇


「今日はよろしくお願いしますね、ロゼッタさん。調理場こちらにあるものなら好きに使ってくれて構いませんので」


「はい、ありがとうございます」


 大量の食材を買い込み、神殿までやってきたロゼたちは、さっそく厨房を借りて調理を開始した。

 この神殿の一番偉い人──神殿長がぺこりと頭を下げて調理場から出て行った。


「んで?  まずは皮剥きか?」


「ああいえ……ノルさんは、神殿の中をお散歩してきて大丈夫ですよ?」


「いいのか? 手伝わなくても」


「はい。今日はアルバさんがアシストしてくださるので、ノルさんはいらないです……!」


「ひどっ! いま俺の繊細なハートが砕けちったよ!? こう、パリーンって!!」


 ノルは若干しょぼくれた様子で去っていった。


(さて、やりますか)


 ナイフを持ってロゼもアルバの隣でタマネギの皮を剥く。黙々と剥く。茶色の表皮がたらいの中に落ちて行く。

 次はニンジンだ。これも剥く。たらいのフチまで剥いた皮でいっぱいになった。


「………………なぁ、ロゼッタさん」


「なんでしょうか、アルバさん」


「いや、何か喋れよ。退屈だろ? なんで二人して無言で野菜の皮、剥いてなきゃいけねぇんだよ」


「そ、そう言われましても……。アルバさんとは先日お会いしたばかりですし、すぐに打ち解けるなんてとても……」


「打ち解けろよ、全力で。あのうさぎなんか、人のケーキ、奪ってくくらいには遠慮が無かったぞ?」


「ノルさんは失礼なうさぎさんなので……」


 そう言ってから、ロゼは『だって』と思う。

 先ほどまではノルが居たから何とか場を繋げたが、ロゼはフィーティアの神官たちが苦手だ。


 これは以前のことだ。

 彼らの長が、ロゼの故郷に訪ねてきて、前長老そふと口論している姿を何度か見たことがある。

 理由は知らないが、どうもロゼの師匠を探しているようだった。

 祖父が亡くなってからは来なくなったが、その時の光景は気分のいいものではなく、ロゼの中での彼らの心証はすこぶる悪いのだ。


(……年老いたおじい様の胸ぐらを掴んだり、勝手に森を荒らしたり)


 先日も、魔獣を密輸したり。

 やはりいい印象が無い。

 だが、隣に座る彼女が悪いわけではないし、彼らとて全員が悪い奴というわけでないのは分かっている。

 だからロゼはニンジンの皮を剥きながら、必死に話題を探した。


「──あ、そういえば、さきほど子供たちを見かけましたが、普段は神殿のお手伝いを?」


「ん? ああ、そうだよ。神官たちの使いやら、写本やら、勉強も兼ねてな、簡単な仕事をさせている。それで成人を迎えたら職を斡旋する」


「へー、ではアルバさんもこちらで?」


「……まぁな。ここの孤児院に居たのは一年程度だが、よく武具札アミュレット作りをやらされたな」


「アミュレットですか。それはまた大変なものを……」


 野菜の皮が剥き終わったので、今度は一緒にタマネギとニンジンをみじん切り。

 手早く包丁を動かすアルバを一瞥してから、ロゼは次のニンジンに手を伸ばす。


「確か、細かい文字を木札や盾などに刻んで、ひとつきほど祈りを捧げるんですよね? わたしの故郷にもありますけど、もっと簡単なものでしたから、こちらで聞いた時は驚きました」


「あー、まあ……ものによるな。貴族に売るような高いやつはそれなりに時間がかかっているが、その辺に出回ってるやつはすぐ出来るよ」


 つまり、そこらに売っているものは粗悪品……?

 ロゼの中でフィーティアの好感度が10さがった。


「えーと……、なぜアミュレット作りの手伝いを?」


「文字の読み書きが出来たから。あと、光蝶スピルが視えるから、かな」


光蝶スピルを? ……ああ、そういえばアルバさんは魔法が使えるヒトでしたね」


 ちょうどロゼが口にしたところで、調理場に一匹の光り輝く蝶が入ってきた。鍋の縁に留まって羽を休めている。

 透き通った、金色の羽。

 淡い光を放つそれは、神話の時代以前に存在したとされる『蝶』という生物に似ているそうだ。

 強い魔力を持つ者に視えるらしいそれは、ノルと同じく星霊、あるいは妖精などと呼ばれていて、うっすらとだがロゼにも視えた。


「あんたもえる口だろ、それ」


 アルバが光蝶スピルを手で追い払う。

 グラタンに使うソースを作るために鍋を使うからだ。

 追い払われた光蝶スピルはひらひらと調理場から出ていった。


「あの緑髪の兄ちゃんが、ロゼッタさんは火の魔法が得意だって話てたよ」


「はい、めっちゃ得意です」


「自分で言うのかよ。──ほら、そこの木べら取って」


 かまどの上に引っ掛かっていた木べらをアルバに渡して、ロゼもソース作りに取り掛かる。

 アルバが赤。ロゼが白。

 ふたりで並んでミートソースとホワイトソースを仕上げていく。


「アルバさんは雷……光の魔法でしたよね? 先日の魔法とても綺麗でした。一撃で魔獣を丸焼きにしてしまうところが痺れましたね、雷だけに」


「それは何かのツッコミ待ちか?」


 うんうんと頷くロゼの隣で、アルバが棚から平板パスタを取り出す。

 ミートソースをかき混ぜる傍らで、沸騰させた鍋に板をどぼん。その手際の良さに、ロゼは心の中で『おお……』と感嘆する。


「……ロゼッタさんは、あれ見て怖いとかそういうのは無いの?」


「? いえ……。無駄の無い魔法でスゴいなぁって、わたしも見習わなくてはと思いました」


「そっか、あんたもなかなかズレてるな」


 なぜか苦笑するアルバ。会話はそこで途切れた。


「………………」


 沸き立つ鍋の音だけが、調理場に響く。

 ちらりと隣を見れば、フリルつきの可愛いエプロンを着用する神官みこさん。白い上衣にソースが跳ねたら大変だからと、先の神殿長がアルバに渡していた。

 対するロゼは青バラ模様のエプロン。ノルに『うさぎ柄にしろよぉ』と泣きつかれたが、こちらの柄を選択した。それにしても。


(うーむ、超絶美少女……)


 隣に並ぶと気後れしてしまうほどの見目麗しさ。故郷のみんなも綺麗だったが、彼女もなかなかどうして──


「ロゼッタさん?」


「──はっ! す、すみません! ついあまりの美少女振りに──あ、いえ、違います。……ごほん。なんでしょう?」


「いや、手が止まってるから……」


「おおっと!? これはうっかりです、しっかりかき混ぜなければ焦げてしまいますね!」


 怪訝な顔をするアルバに慌てて弁明し、ロゼはグラタン作りに戻った。

〈魔導師〉

・魔導品を使って魔法を行使するタイプ(誰でもなれる)

・純粋に魔法が使えるタイプ(生まれによる)

→後者は異郷返り(異人ことびととも)、森族など。

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ロゼの師匠の物語はこちら↓

ゼノの追想譚
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