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氷の魔女の料理屋さん  作者: 遠野イナバ
こぼれ話

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38/38

ノルのスタッフ&お客様名簿 ※挿絵つき

 夏の盛りも過ぎたある昼下がりのことだった。

 可愛いウサギのノルさんこと俺が窓辺でうとうとしていると、背中をつんつんする不届き者が現れた。


「ノルさん、ノルさん」


「ん……どした、ロゼ。俺をモフりたいなら、あと一時間後にして欲しいんだが」


「実はですね。ユーハルド(こちら)で出会った皆さんのプロフィールをまとめていたのですよ」


「俺の話、無視かよ。……プロフ? なにそれ」


「お客様名簿というやつです」


 ロゼの右手には緑の冊子が握られている。

 なるほど。

 顧客リストというやつか。

 俺は机の上に飛び乗ると、ぐぐっと身体を伸ばして欠伸を噛みしめた。

 まあ、まだ眠いが付き合ってやるか。

 器用に前足で羽根ペンを掴んで俺はロゼを見上げた。


「──つまり、俺の血液型とか好きな食べものとか、プライベートな情報が知りたいってことだな?」


「いえ、それについては興味がないので結構です。そうではなくて、わたしがいない時にノルさんが出会った人たちのことを記してほしいんですよ。ほらノルさん、よくその辺をお散歩していますし」


「うん。もっと俺に興味持って? ──わかったよ。ほれ、そいつを貸してみろ」


 ひどいご主人様(ロゼ)から冊子を受け取り、俺は羽根ペンを走らせた。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【ロゼッタの料理工房/スタッフ】


 ■ロゼッタ(年齢は乙女の秘密♡)

 俺の相棒兼、店主のロゼだ。

 職業ジョブは魔導師。

 見た目は黒髪セミロングの清楚系美少女、といっておこうか(中身はアレだけど)。

 服装は地味。いかにも魔女っぽい黒のローブを愛用しているな。

 性格はひとことで言えばマイペース。

 生まれも育ちも森の中。

 おかげで世情に疎いド田舎娘。

 ユーハルドに来てからは魔女の工房兼、小さな食堂を開いて日々料理の腕を上げている。


 ■ノル(俺も秘密♡)

 可愛いうさぎとは仮の姿。

 その正体は世界の神秘、星霊様だったのだ──!

 なんてな。まぁ精霊とか妖精とか、なんかそういう類いのもんだと思ってくれ。

 好物は、麦酒エールと串焼き。

 あとは甘味も好きだな。

 いちおうヒトの姿も取れるが、ロゼにおっさんと言われる。

 いやいやいや、ノルさんそんなに老けてないからね?



【お客様リスト】


── シルギィードの月(三月)──


〈オムライスの日〉


 ■リック(6)

 くりくりとした栗毛の少年。

 オムライスのタマゴは柔らかめが好み。


 ■ジェシカ(26)

 リックの母親。けっこう美人だったな。


 ■リリック(28)

 リックの父親で『ブーランジェリ・トルトュ』とかいう発音しづらいパン屋の店主。

 息子と名前似てて紛らわしいわ。


 ■ペリード(18)

 眼鏡の兄ちゃん。ベルルーク侯爵っつう、由緒正しい家柄の三男坊らしい。

 緑の髪にペリドットの瞳。

 趣味は菓子作り。

 ユーハルドの第二王子の補佐官として仕えていたが、紆余曲折してのちに菓子店を開くことに。


 ■通りすがりの銀髪少女(10才前後)

 犬耳だか猫耳だかのフードがついたマントを着た少女。

 名前は聞いたが忘れた。

 口数が少なく、舌足らずなお嬢さんで、普段はこの国の第四王子の護衛をしているそうだ。



〈ナポリタンの日〉


 ■エオホズ(64)

 パピヨン亭の店主。いちおうロゼの料理の師匠といえるじいさん。

 うん十年前、まだ見習いだった店主は実はロゼと会っているんだが、まあ気付かないよな。



〈ホットジンジャーの日〉


 ■セリカ婆さん(60)

 ペットの猫を探してくれーって依頼に来た婆さん。ミートグラタンが得意。


 ■サラ(15)

 赤みを帯びた茶髪の少女。

 セリカ婆さんのお孫さん。

 お子様ランチが好き。


 ■くそ生意気な俺の天敵(2)

 靴下を履いた猫って言えばわかるか?

 ロゼは可愛いって絶賛していたが、正直俺のほうが可愛いと思う。名前はシュクレくん。



── ウェンティードの月(四月)──


〈アップルパイの日〉


 ■ペリード(18)/二回目

 眼鏡の兄ちゃん再び。

 今回は城から依頼状を届けに来たぜ。

 なおこのとき持ってきた花束は赤バラでした。


 ■アルバ(16)

 見た目は聖女、中身はヤンキー。

 金髪紫眼きんぱつしがんの雷魔法を得意とするフィーティアの神官みこさんだ。

 のちのロゼの親友兼、常連さん。


 ■ソフィア(15)

 大通りにあるケーキ屋のオーナー兼店長。

 すげぇ暗いオーラをまとった嬢ちゃんだけど、長い前髪を上げるとけっこう可愛い顔をしている。

 ちなみに兄はドーナツ屋を経営。

 名前はジャン。すげぇやる気のない兄ちゃんだが製菓の腕は確か。


 ■商人の男(45)

 ソフィアの父。

 王都で卸商(おろししょう)をやってる商人で、いわゆる運搬兼問屋だな。

 彼の場合は店舗を持たずに農家から直接買い取ったものを王都まで運んで顧客(お店や貴族の屋敷)に卸している。

 毎回ロゼに野菜を破格で提供してくれるので、ソフィアパパの店が潰れないかノルさんは心配です。



〈ラザニアという名の重ねグラタンの日〉


 ■アルバ(16)/二回目

 グラタンが好物で、いつも店に来るとグラタン系のメニューを頼んでいる。

 ノルさんはカキとほうれん草のグラタン(冬季限定)が好きです。



〈ロールキャベツの日〉


 ■ロシェッタ(年齢とし聞いたらスルーされた)

 王都貧民街で雑貨店を営む女店主。

 美人だが中身が残念。

 ロゼと同じハルーニアの出身らしい。

 何回かリピートしてくれていたんだが、そのうち来なくなったなぁ…。



〈海苔おにぎりの日〉


 ■通りすがりの爺さん(聞けなかった)

 サクラナっつう、ユーハルドから見て西にあった、滅亡した島国の民らしい。

 変な服を着ていて、すさまじい切れ味の剣を持っていたな。

 名前はウヅキ。現在指名手配中。

 なにやったんだ爺さん…。



── ベルティーネの月(五月)──


〈豚串とハーブソルトの日〉


 ■リック一家/二回目

 リック少年ふたたび。

 まーた母親とはぐれたって言うんで、ノルさん(人間体)と一緒に祭りを回った。

 楽しかったぜ!


 ■通りすがりの銀髪少女/二回目

 リック同様なんかこいつも迷子になってた。

 最終的には保護者と無事に再開できたみたいで良かったよ。今度は店に来てくれよな。


 ■サフィール(21)

 今年の初夏まで眼鏡の兄ちゃんが仕えていた第二王子様。

 白馬の騎士を体現したような、優しい奴だったぜ。


 ■アルバ(16)/三回目

 屋台の売り子さんやってた。ほんと黙ってればお客さんホイホイなのにな。


 ■サラ(15)/二回目

 兄をともない、道ばたでバッタリ。


 ■ユーリ(16)

 サラの兄貴。動物全般が苦手らしく、ノルさんが近づくとガグガクブルブル震える。

 兄ちゃん、うさぎは人畜無害な生き物ダヨ?



── ヴィクタランの月(六月)──


〈紅茶のスコーンの日〉


 ■サラ兄妹/妹三回目・兄二回目

 喧嘩した友人と仲直りしたいとかでロゼに菓子を習いに来たんだが……俺は何も見ていない。


 ■アルバ(16)/四回目

 こいつ常連すぎて『何回目』のカウントしなくていい?

 なんか大体毎回いるから、これ以降はノーカンでいくわ。



── セレンの月(七月)──


〈太陽のピザの日〉


 ◼️しがない門番さん(23)

 厳密に言えば会ったのは先月だが、まあそこは適当に。

 ユーハルドの正門を守る兵士さん。

 彼女募集中。


 ■村人たち

 ユーハルドの南東方面、ベルルーク領にある小さな村の名も無きエキストラたち。


 ■ユーリ(16)/三回目

 考古学者とかいうインテリ系のジョブについてるサラ兄は、真夏の祭り『麦刈祭むぎがりさい』に来ていた……。

 以降怪談へとつづく。



── ルグルムの月(八月)──


〈季節野菜のサンドイッチの日〉


 ■オオグマ(推定8才)…厳密には三月

 片目に三本の線が入ったワイルドな熊。こいつのせいで俺の悠々自適な森でのスローライフに幕がおりた。

 いまこうしてロゼと一緒にいるのはこいつのせいでもあるんだが、なんだかんだで毎日楽しいし、うーむ、複雑な心境…。



〈ミントティーの日〉


 ■ジー様(ご生誕から1年くらい)

 各ご家庭にたまに遊びにくる白光りのアレだ。

 黒じゃないぜ?

 ちゃばねっててもノルさん悲鳴上げちゃうからね?

 ヒンヤリ草については気休めだが、けっこう効果はあるからオススメする。



〈メイドの日〉


 ■厨房長(35)

 厨房の司令塔。ドジっ子属性を装備したオッサンとか誰得なんだろうか……。


 ■見習いくん(17)

 最近の若者は言葉づかいがなっとらんとノルさんは思うのよ。

 職場で語尾に「っす」はダメっすよ。

 言っておくけどそれ、敬語じゃないっすからね?


 ■ジェシカ(26)/三回目

 結婚する前は城で働いていたとかで、メイド姿がさまになっていた。

 まあ俺からすれば彼女はロゼの知り合いってポジションなんで、特筆して書くことがないです。


 ■ウェナン(当時18)

 ユーハルドの第一王子。

 未来の第二十九代目ユーハルド国王その人である。

 つまり、今から二代前の王様だな。

 妖精剣(聖剣)に選ばれし男。

 王子時代に旅した彼の軌跡は『ウェナンの大冒険』という本につづられている。


 ◼️ミリア(当時18)

 未来のウェナン少年の王妃。

 名門ベルルーク家の出身で、メガネの兄ちゃんのご先祖様ってところだな。

 ロゼが会った時はまだ王妃になる前。ウェナン少年とは幼馴染みの間柄で、性格は委員長気質の清楚なご令嬢。しっかりラブコメ要素を押さえたヒロインであるといえよう。


 ◼️ストラス(当時18)

 未来のウェナン少年の腹心。

 生涯ウェナン王にのみかしづき、彼のために剣を振るった騎士の中の騎士だったと記述が残されている。ウェナン少年とは友と書いてライバルと呼ぶ。


 ◼️先生(見た目20代前半)

 ウェナン少年の指導魔導師。

 ロゼから見た第一印象は、近づくなキケン。




── ゼノスの月(十月)──


〈チーズリゾットの日〉


 ■ペリード(18→19)/三回目

 こいつ絶対ロゼに気があるだろ。

 ノルさんは応援する。頑張れよ。


 ■眼鏡の兄ちゃん以外のレギュラーメンツ

 アルバ、サラ、ユーリ、リック一家勢ぞろいでハロウィンパーティーをやったぜ。


 ■ロゼのお師匠さん(年齢不詳)

 ちょいちょいロゼの話に出てくる魔法の先生。

 正式な弟子ではなく、あくまで教え子。

 魔法を教えてもらったのもほんの数ヶ月と案外短い。

 薬草知識に明るく、魔法の腕に関しては言うまでもないが、ロゼの話を聞く限りじゃかなりの変わり者。

 白髪に黄昏色たそがれいろの瞳をした青年。

 俺の中ではオレンジ師匠と呼んでいる。



【追記1】


〈冷製カルボナーラ/竜辛粥・白杏子のゼリー/マジカル☆あにまるカップケーキの日〉


 ■リーア(14)

 超絶美少女。

 美少女と書いてリーアと読むのかな? と思うくらいに美少女。

 ユーハルドの第二王女で、とにかく美少女。


 ■エレノア(アルバいわく23)

 美少女に仕えるメイドさん。

 こっそり夜のお仕事をしているアルバの同僚でもある。源氏名(コードネーム)はロビン。


 ■ロイディール(42)

 味覚がしんでるユーハルドの王佐。

 激辛・激甘・激酸・激苦げきにが

 とにかく振り切った味の料理が好きらしい。

 ……ストレスでも溜まってんだろうな。


 ■ルベリウス(24)

 美少女の兄で、ユーハルドの第一王子。

 シスコンを極めし男。



【追記2 俺は面識ないがロゼの親戚関係】


■エルフィード(軽く1000才以上)

 ロゼが言うには「顔だけのヒト」。

 つまり中身がない残念なイケメンことロゼの大叔父おおおじ。黒髪の美青年。


■ユノヴィア・バレンタイン(没)

 ロゼのひいばあちゃんで、偉大な魔女。

 ベルグラの月の十四日は聖国パトシナでは聖ユノヴィア祭を、ユーハルドではバレンタインが開催されるぜ。

 彼女の数々の功績は、ロゼにとっては重荷にであるのと同時に誇りでもある。

 実は、ある人の先生でもある。


■ディラン(没)

 ロゼの祖父。

 森族しんぞくの里の前長老。


■ロゼの叔母(年齢不明)

 名前はなんだっけか…忘れた。

 仲はあんまり良くなかったみたいだな。


■クルックー

 エルフィードおじさんの飼いハト。

 くるっくーと鳴くからクルックー。



【備考】

 大陸歴1022年、秋までの情報を記載。


 初冬、追記。

 ・通りすがりの銀髪少女の名前→フィネージュ

 ・サフィール、享年22歳

 ・眠り猫の菓子店オープン(※眼鏡の兄ちゃんの店)


ありがとうございました!

面白い、続きが気になる、そのほか感想欄にコメントいただけると嬉しいです。


また、作品の評価にご協力ください。(続編執筆の可否、改善、今後の作品づくりへの参考にさせていただきます)

★→文章が破綻している

★★→読めるけど会話・展開がつまらない

★★★→普通

★★★★→面白い、推す

★★★★★→好き、続編希望!


最後になりますが、下記イメージイラストです。趣味絵なのでへたくそで恐縮ですが……雰囲気だけでも伝われば幸いです。

挿絵(By みてみん)

あらためて、ありがとうございました!

(※このページを下へスクロールすると、ロゼの師匠の話に繋がるリンクが貼ってあるので、良かったらそちらも覗いてみてくださいね↓)

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ロゼの師匠の物語はこちら↓

ゼノの追想譚
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