プロローグ:幼くて危険で甘美で腐敗しきった言葉。
新作です。大分歪ながらラブコメチックに仕立てていく感じです。
「ねぇ、義斗。私と恋人になってくれない?」
「えっ?良いけど。」
たったそれだけ。俺、最上義斗は、幼馴染の少女直江みつきに告白された。それが、今後余りにも重い想い枷になるとは知らずに。
放課後の教室を出て、帰路につくや否や、俺はみつきに思い立って聞くことにした。
「それにしても、何で急に恋人になろうなんて言ったんだ?」
「………まぁ、気分ね。恋について知りたくなったのよ。」
「ふぅん。ホントにお前は突拍子のないことをするよな。最近だとあれだ。ゲーム機分解して基盤を入れ替えればそれぞれの機種を物理的に入れ替えてできるんじゃないかとかさ。ぶっ飛んでるよ。」
「あら?じゃあ、それに着いてくる義斗は、かなりの変人になるわよ。」
言い返せなかった。みつきは、黙っていれば美人で、周囲には無口で才色兼備と男女問わずに人気だ。しかし、生まれた時から一緒である俺に対しては、異常性を見せてくる。
「でもね、私は気になるのよ。恋って要は………依存でしょ??」
「う~ん、そうなのか?恋なんて、したこと無いから分からないけど感覚的に違うんじゃないのか?」
「じゃあ、その違いを説明できるの?義斗は。」
「できないって。そもそも、恋をするっていう感覚が分からないんだから。」
「それなら、私も同じよ。でも、恋しているクラスメイトの女子の話なんかを聞いていると少し違和感を覚えるのよね。」
みつきは、そう言って淡々と言葉を重ねていく。俺は、歩きながら彼女の話を真剣に聞いてみた。
「そもそも、愛って何かしらね?私たちから見れば両親や家族の間に生まれるもの。あとは親愛なんて言葉もあるわね。でもその感情は喜怒哀楽のどこに入るのかしら?」
「う~ん、確かに何処だ?喜び、楽しみ?だけでは無いな。哀しむこと、怒ること……も違うしな。」
「そこなのよ。愛は定義できないのよ。考えても、考えても出てこないのよ。」
「んな、感情論的なことに言われてもな。」
「じゃあ、恋は?定義できないでしょ?でもね、愛とは絶対的に違うのよ。精神的な余裕の部分が明らかに違うのよ。恋は自分の余裕のないところをお互いに補い合って、体なり言葉成り、物なりで埋めていくのよ。」
彼女の言葉は理解しがたいモノにも聞こえた。でも、少しだけ腑に落ちた。恋は感情として表現できない。依存するものと。
「ねぇ、義斗。改めて言うわ。私の恋人になって。そして、その先の…愛を見せて?」
「分かった。それなら、俺にも見せてくれ。みつき。」
俺らの、歪な恋人関係は幕を開けた。
さて、のんびりと投稿していくのでよろしくお願いします。