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調達

 収容施設に戻り、僕はエンドとなったヴェリムたちになにができるのかを考えることにした。優先としては彼女たちがやりたいと思うことを優先させてあげること。そして、彼女たちを看取るときのことも考えてあげなければならない。紙とペンを取り出し色々と列挙してみるとだんだんに自分が本当にやりたいことが見えて気がした。


 後は現在この施設にいる彼女たちの意見を取り入れ、終わるその日まで僕が支援できる限りのことをするまでだ。


「終わるその日までにしたいことっすか?」


 畑作業を終えたケイティとヴィーナを呼び止め、彼女たちがしたいことを聞いてみる。


「そうっすね、ウチはできる限りの書物が読んでみたいっすね」

「書物?」

「この国の歴史とか、おとぎ話とか、雑誌でもいいっす。とにかく、色んな知識を深めてみたいっすね」



「オレは前にも言ったがカレーが食べたいのと可能なら色んな料理を食ってみてえ。ヴェリムってのは基本的に食事をしないが、オレは色々食べてから死にたいね」

「わかった。可能な限り調達してみるよ」


 戦時中に書物や料理を調達するのは難しいかもしれないが、彼女たちが望むことなら叶えてあげたい。あとはエフのしたいことだが、どこを探してもその姿が見えない。避けられているのは体感的にわかっていたが、せめてエフのやりたいことも聞いてから調達に出たかった。


 翌日、軍本部に調達の申請をしてみたが呆気なく断られてしまった。理由としては必要性を感じないということからによるものだった。残された道は僕自身でどうにかすることだが外部から取り寄せるにも田舎の母以外頼めそうな人物がいない。

 野菜は畑で調達するとして肉や魚の調達は難しそうだ。書物も収容施設にもいくつかの蔵書はあるが読めるのは数が限られている。


 他にできるとすれば、近隣を巡って譲ってもらうことだけだった。


 その日から僕は合間を見ては収容施設を出て近隣の人々を巡った。断られたりいい顔をされないことも多かったが、どうにかある程度の書物や食材を分けてもらうことが出来た。


「おお、これは歴史書っすね。どうやって手に入れたかはわからないっすけど、ありがたく読ませてもらうっす」

「この食材でカレーが出来るのか? すげえな、楽しみにしとくぜ。あと、このサンドイッチっての美味いな。ありがとよ」


 調達した物資をケイティとヴィーナに渡すと二人は喜んでくれたようで晴れやかな笑顔を見せてくれた。二、三日まともに食事も休憩もしていないが、苦労の下買いがあったと思う。二人に心配させないよう足早に管理室に戻って休憩しようと思ったのだが、道中の廊下で頭痛とだるさにおそわれた。過労、か? でも少し休めば元気になるはず。


 しかし、一歩足を踏み出したところで体が言うことを聞かなくなり倒れた。

 視界がぼやける、手足に力が入らない。


 最後に見たのは、黒髪の少女が不安そうに僕の顔を覗き込んでいる光景だった。

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