エピローグ
「今日来るんだって?」
「そうみたいですよ……全く。
久しぶりに再会してから10年ですよ。
あの人のまたねってどのくらいの規模何ですかね?」
「ははは……それでも死んだと思ってた2年間よりは生きてると分かっていた10年間の方が遥かにマシだったろ?」
「それはそうですけど」
大事な客人を迎える準備をしている3人の前に小さな影が四つ走ってくる!
「パパ!こっちの準備は終わったよ」
「こっちも飾り付け出来た」
「テーブルの準備もオッケーよ」
「だぁーーー!!」
女の子が2人に男の子が1人。
男の子は背中に赤ん坊をおぶっている。
シャーリーと別れてから10年。
カリスとマリア、カリンの間に2人ずつの子供を授かっていた。
この10年間にシャーリーから思い出した時に書いた程度の間隔で連絡は来ていた。
それがつい1週間前に急にこちらに会いに来るという内容の手紙が来たのだ。
3人は慌てながらも恥ずかしくないように出迎える準備はしていたのだが…シャーリーは中々やって来なかった。
「パパのお客さん遅いね」
「ははは、そういう人だからね。
こっちも慌てずにどかっとしてればいいんだよ」
「ふーん……そう言うものなんだ」
「そうそう……あいつのペースに合わせてたら疲れっちまうからね。
お前たちも先にご飯食べてていいぞ」
「わーい!!」
♢ ♢ ♢
その頃、肉体的に成長して青年と呼べる見た目になったノアはシャーリーを探していた。
目を離すとすぐに居なくなるので探すのはお手の物であったが、流石にカリス達と約束したこの日にいなくならなくても良いのでは無いかと思わないでもない。
幸い、普段から拠点にしている神の船の看板でシャーリーは直ぐに見つかった。
「こんな所で何をしているんです?
もうそろそろ約束の時間ですよ」
「日向ぼっこしていた。
今日はいい天気でお日様が気持ちいい。
この子も満足している」
「全く……貴方に似でとても自由な子だ」
「そう言わないでください。
人の姿として産まれ落ちてから初めての体験ばかりなのですから。
お日様がこんなに気持ちよくて眠くなるものだと知りませんでした」
胸のあたりから子供の声が聞こえる。
シャーリーは日向ぼっこしながら1人の女の子を抱き抱えていた。
「まさか僕たちの間から産まれてきた子供に貴方が宿ってくるなんて思いませんでしたよ」
「シャーリーと約束したからのう。
肉体を持って地上に降りてくると……むぎゅっ!?」
ノアの言葉に答えた子供の頬をシャーリーがつねる。
「前から言ってるでしょ。
ちゃんとママと呼ばないとダメ」
「うぬぬぬぬぬ……分かっていますよ、シャーリーママ。
それとノア父さん」
「そこはパパじゃないんですね」
「ノアの呼び方は別にどうでもいい。
私はママと呼ばれて満足」
そう言うと再びギュッと自分の子供の身体を抱きしめる。
「この温かさも安らぎも初めてのことでした。
ママ、これからも私に沢山のことを教えてくださいね」
「もちろん。
先ずは食べれる魔物肉から……」
「この子まで野生に引きずり込もうとしない!
ほら、もう時間ないから船動かすからね」
「そっちは任せる」
「はいはい、いつも通りね」
そう言って船の舵に移動するノアの後ろ姿を柔らかく微笑みながら見つめる。
「私はいまとても幸せ。
だから貴方にもこの幸せを贈りたいと思ってるよ……ギフト」
「ママの幸せが込められた名前……創造神の時は名前など意味が無いと思っていましたが想像以上に嬉しいものですね」
「これからも3人で沢山の幸せを見つけに行く。
私とノアとギフトの3人で。
その邪魔は誰にもさせない」
そう言ってギフトを強く抱きしめているシャーリーを呼ぶ声が聞こえた。
「シャーリー!!
着陸地点に魔物達が喧嘩して暴れてるんだけど」
「早速邪魔者が出たみたい……行ってくる」
「ママ、頑張ってね」
「うん。
ついでに今日のお肉も取ってくるから」
そうして神の船から飛び降りて魔物達の目の前に降り立つシャーリー。
「貴方達は本当に運が悪い。
でも、弱肉強食は世の常だから野生の魔法使いが目の前に現れた不幸を嘆くといい」
こうして、シャーリーはお土産用も含めた多数のお肉を狩ることに成功する。
これからも彼女は様々な場所を自由に旅していくことだろう。
それが野生に目覚めて自由を求めた彼女の生き方なのだ。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
思いつきで始めた設定でしたが何とか話を整えて最後まで書けて本当に良かったと思います。
私が書いているもう一つの作品、勇者と魔王の配信稼業はまだまだ終えるつもりはないので良ければそちらをよろしくお願いします。




