最後にやるべき事
シャーリーはいつの間にか見知らぬ空間にいた。
空も地面もない真っ黒な空間。
そんな空間で目の前にはメリッサの身体を使った創造神がいた。
「私を消滅させるのではないのですか?」
ノアと2人で魔法を使った時に全力で撃てばメリッサもろとも創造神を消し飛ばせる気がした。
その為にシャーリーとノアはギリギリで威力を絞っていたのだ。
「メリッサの身体を使ってるんでしょ?
あの子毎消すわけにはいかない」
「そうですか……それではこの者は解放しましょう」
メリッサの身体を操っていた創造神がそう言うと彼女の身体が力なく地面に横たわる。
そして、メリッサのすぐ隣には金色に光る粒子が人の形を取っていた。
「これで貴方達が私を消滅出来ない理由は無くなったと思いますがどうでしょう?」
「そんな事はしない……そもそもこの世界を作った貴方を消滅させたらこの世界も滅んでしまうのでは?」
「ふふ……良く分かっていますね。
その上でお聞きしますが貴方達は勝者として何を望むのですか?」
「私は特に何も望まない……このまま自由にしたいだけ。
でも、他の3人の望みは聞いたでしょ?」
「神の役目から解放されて貴方と同じように自由になる事ですか……それだけで良いのですか?
神界には彼ら以外にも様々な神がいますが」
「その人達のことは会ったこともないから知らないし、何も感じていないのにいきなり自由にしなさいと言われても困るでしょ。
もし、そういう意識が芽生えたならその意思を尊重してほしいとは思うけどね」
「良いでしょう。
今回の件は私にとっても良い勉強になりました」
「物分かりが良くて助かる」
「……もしも、私が自由を欲しくなって地上に肉体を持って降りてきたらその楽しさを教えてくれますか?」
「もちろん……その時を待ってる」
創造神の身体は光の粒子で出来ていたので表情は分からない。
それでも、シャーリーの言葉を聞いた時に口元が動いた気がした。
シャーリーの勘違いでないならきっと笑ったのだと思う。
このやり取りを終えると暗かった世界が眩く光……気がつくとシャーリーは決戦の場に戻っていた。
「いまのは……」
目の前ではメリッサが倒れてエムザラとアートゥルが片膝をついていた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
隣では心配そうにノアが顔を覗き込んでいた。
どうやら2人が魔法を唱えた直後に戻ってきていたらしい。
「何でもない……それよりもアレはいなくなってメリッサに戻ってるはずだから急いで治療しないと」
そう言ってシャーリーが倒れたメリッサを調べると、彼女には一切外傷は無く、ただ眠っているだけであった。
4人はメリッサを村に送り届けた後はそのまま休ませてもらう事にした。
夜、シャーリーが経験した不思議な空間での出来事が話されて3人の自由が認められた事を話した。
エムザラとアートゥルはその事を大いに喜んだがノアは1人浮かない顔をしていた。
「お姉ちゃん……僕は……」
「分かってる。
私も一緒に行くから」
「でも……会いたくないんじゃない?」
「会いたくは無かった。
けど、その力に助けられて返却しに行くなら一緒に行ってお礼を言う。
それはケジメだと思うから」




