最大の禁忌
「それで皆さんはこれからどうされるんですか?」
メリッサがそう尋ねると全員が一斉にシャーリーの方を向いた。
「うーん……とりあえず一回島に帰ってからあちこち旅して回ろうかと」
「僕はどこまでもお姉ちゃんに付き合いますよ」
「アタシも退屈しそうにないから一緒に行くよ」
「無論、我も同行させてもらおう。
人の可能性というものを見せてもらいたいからな」
全員の答えを聞いたメリッサはにっこりと笑って言う。
「貴方達の考えは分かりました……ですが、それを認めるわけにはいきません」
それはメリッサから出たとは思えないほどに神々しく澄んだ声であった。
その声を聞いた瞬間にエムザラとアートゥルは跪いて頭を下げる。
状況を飲み込めないシャーリーとノアは呆然としていた。
「……やはり記憶を無くしたせいで神としての特性を失いつつあるのですね」
「貴方は誰?」
「私に名前はありません。
ただ、貴方達の言葉を借りて私を表すならば創造神というのが適切でしょう」
「つまり、この世界や僕達の全てを作った神様?」
「そうです。
世界を創造した後にノアやエムザラのような下級神を生み出しルールを定めました。
ある一種族が栄えすぎないように魔王制度を作り、それに対抗するための勇者制度を作りました。
それでも人が有利で少しずつ栄えることから10回毎に文明をリセットさせる邪神制度を作りました」
「それじゃ、貴方が全ての黒幕だったということね」
「それは不適切な言い方でしょう。
私はただ世界を安定させる為に管理していただけです。
そして、その理から外れた者を処分しにきました」
「それは私を殺しに来たということ?」
「貴方とそこにいるノアです」
その言葉を聞いてエムザラが身体をピクリと震わせた。
「エムザラ……貴方は気付いていたでしょう?
こうなる事に。
なぜこうなる前に止めなかったのですか?」
「一時の気の迷いだと思っておりました。
また、記憶を取り戻したらその気持ちも消え去るのではないかと」
「何の話をしているの?」
2人の会話の内容が見えてこないシャーリーが思わず聞き返した。
「ご覧の通りに当の本人は無頓着であり全く気付いておりません。
そこで気持ちが冷めるまでは放置して問題ないかと」
「冷める冷めないの問題ではありません。
一度でもその気持ちを持ってしまったのが問題なのです」
「だから何の話をしているの!」
珍しく声を荒げるシャーリー。
そんなシャーリーに隠れて小さくなっているノアを指差して創造神が答えた。
「そちらにいるノアが人間の女性に恋をするという最大の禁忌を犯したという話です」




