最後の仲間
「僕たちは十分に準備が整ったと思ったのでもうそろそろ魔王城に向かおうと思います」
メリッサの住む村で一ヶ月過ごしたカリス達は自分自身の成長に驚いていた。
ここに来るまでに手こずっていた魔物達が今や赤子の手を捻るよりも容易く片付いてしまう。
実際にやれと言われれば心優しいカリスには後者のミッションは何よりも難しいことかもしれないが。
それはともかくとして彼らの中でもハッキリと準備が整ったという実感があった。
逆に言うのであればこの村にこれ以上居ても成長する事はないという確信も得ていた。
そういう理由から村を旅立つことをメリッサに告げる
カリス。
元々は最後の仲間である賢者を求めてこの村に来たのだが、村の周りが凶悪な魔物で溢れかえっている事と想像以上に賢者であるメリッサが幼かった事から仲間になってくれとは言えなかった。
しかし、メリッサは
「分かりました。
それでは私も旅の準備を整えましょう。
元はそのつもりでこの村を訪ねてきたのですよね?」
と、自分もついていく事は当然と言わんばかりの返事をした。
「いや……しかし、それではこの村が」
「この村の人たちは私がいなくても周辺の魔物には負けませんよ」
「だが、万が一怪我をした時など」
「治癒効果のある杖が村にはありますので、それを使えば治療は私がいなくても行えます」
その杖の力はカリス達も見ていた。
何の魔力も感じない村人がその杖を怪我人に向かって振ると中級の回復魔法の効果を齎したのだ。
「しかし……」
「もう変な意地を張るのはやめなよ。
ここまで言ってくれてるんだから仲間になって貰えばいいじゃないか」
「そうですね……カリスさんが抱えている事も分からないでは無いですが、それで私達が魔王に負けて仕舞えばそれこそ意味のない事です。
個人の理由により固辞すべきではありません。
それよりも迅速に魔王を倒して彼女を村に返すのが理に適っているのではないでしょうか?」
マリアとカリンにまで説得されたカリスは目を瞑る。
彼女達の言う通りに今まで旅に同行してくれと言わなかったのも、村の心配をしているのも結局は自分の我儘なのだ。
結局、カリスは空いてしまったシャーリーの枠に誰か別の人間が入ってくるのが嫌だったのだ。
「こちらの我儘で色々言ってしまって申し訳ないがもう少しだけ僕たちに協力して欲しい」
「もちろん喜んで」
こうして頼りになる仲間を迎えたカリス達はいよいよ魔王城に向かう。




