神の加護を受けた村
メリッサによって村に案内されたカリス達。
その村の異様な光景はカリス達を震撼させた。
どの村人を見てもカリス達に匹敵するのでは無いかと思うほどに強い力を感じるのだ。
それが狩りに出ていたという村人達ならば、この過酷な環境で生きていくうちにそのように強くなったのではと思えるかもしれない。
しかし、村で畑を耕しているおじさんや家事をしているおばさん、子供達に勉強を教えている老人や子供達に至るまでである。
「なぁ……カリス」
「言わないでくれ……僕も勇者と任じられてから色々とあったけど今ほど力不足を感じたことは無い」
旅を始めた頃は自分達より強い人間など山のようにいた。
それは国の騎士団長だったり魔術師団団長だったりと既に人類で英雄と呼ばれる人物達であった。
その他にも正体はドラゴンであるデコバやその加護を受けて国を取り返すために努力をしていたユディバ達が、当初は自分達よりもはるかに実力が高いというのも納得できた。
だが、この村に住む人達は見た限りでは一般人と全く変わらない。
にも関わらず自分に匹敵する実力を持つもので構成されているのだ。
これには勇者の存在意義に疑問を持つなという方が無理であろう。
そんな風に3人が呆然としてしている隙をついて一足早く自宅に戻ったメリッサはタンスからメモを取り出す。
そこに書いてある手順を確認したメリッサはカリス達を家に迎え入れた。
「先ずはこの名もなき村に立ち寄って頂きありがとうございます」
「いや、この辺りは凶悪な魔物が多いので村は大丈夫なのかと心配しましたが……取り越し苦労のようで良かったです」
力なく笑うカリスに対してメリッサはメモに書いてあった言葉をそのまま話す。
「私たちの力を見て自信が無くなりましたか?」
「ちょっと!?」
「いや……君の言う通りだ。
この村の人たちと僕たちが戦ったらあっという間に僕たちは倒されてしまうだろう」
「その通りです……しかし、私達の力を結集しても魔王には軽く捻り潰されてしまうでしょう」
「そんな!?」
メリッサの言葉にカリンの口から言葉が漏れる。
この村に来る前までの彼らには自信があった。
過去に強いと思った人物達を超えたという自負があった。
それらの自信が一気に崩れ去っていく。
「勇者様達には暫くの間この村で生活して頂きたく思います」
「それは……どういう事ですか?」
「この村は神の加護で護られており、ここで暮らす事で人間の潜在能力を限界まで引き出す事が出来るのです。
村人達が強いのもそれが理由です……が、どれだけ潜在能力を引き出しても彼らは村人という枠を超えることは出来ません。
ですが、勇者様達は違います。
ここで潜在能力を引き出す事できっと魔王に届く力を手にする事が出来るでしょう」
メリッサの言葉にハッと顔を上げる。
自分達はまだ上を目指せる……彼女の言葉は絶望に支配されそうな心に希望をもたらしてくれた。
「お願いします!
この村で実力を磨かせてください」
「アタシからも頼む」
「お願いします」
「それが神の望みですので、こちらこそよろしくお願いします」
メリッサは優しく微笑みながらカリス達の申し出を受け入れていた。
(シャーリーお姉様……こちらは予定通りに勇者様達を足止めする事が出来ました。
その間に準備を整えてくださいませ)




