最後の仲間
カリス達一行はユディバ達と別れる前に賢者という魔法のエキスパートがいると話を聞く。
賢者……回復の魔法と攻撃の魔法を使いこなし、言い伝えによると歴代の勇者のパーティにも必ずいたと言われる存在。
カリスもその事を知らなかった訳ではない……しかし、過去には魔法使いや僧侶から賢者の力に目覚めたものがいると聞く。
中には何故そんな人物を勇者のパーティに連れていたのか分からないが、職と言われるようなものが無く先頭で役に立たなかった者が賢者の力に目覚めたと言う話も聞いていた。
カリス達はかつての仲間であるシャーリーがいつかその力に目覚めるのではと思っていた。
例えそうでなくてもこの4人が魔王を倒すメンバーだと信じて疑わなかった。
だが、旅の途中でシャーリーを失ってからとある疑問が浮かんでいた。
シャーリーは勇者に選ばれた仲間では無かったのでは無いだろうか?
その運命に無い彼女を旅に連れ出したからこそ失う事になってしまったのでは無いかと。
この一年以上の間にカリス達のパーティに加わりたいと言う人もいた。
だが、それを受け入れてその人物が命を落とす事になったらと思うと受け入れる事ができなかった。
……いや、それは言い訳であろう。
彼らは新しく迎えた仲間と共に魔王を倒してシャーリーが運命の仲間では無いと知る事が怖かったのだ。
そうやって目を背けて3人で旅をしてきたが、偶々立ち寄った宿で気の合った2人組と共闘する事になる。
最初は近くのダンジョンを攻略するだけの関係で合ったが、彼らの正体は竜と姫であり、魔に屈しようとする国を救う事が目的である事を知った彼らは快くそれを手伝う事にした。
それは義憤にかられた事も理由である……が、革命が終わった後で彼らと別れる事が分かっていたからと言うのもあるだろう。
こうして空白になった4人目の仲間という現実を無視する様に旅してきたカリス達だったが、魔王城の近くに住み代々魔力を磨いてきた賢者の一族の末裔。
このようなあからさまな人物が出てきては流石に無視する事は出来なかった。
結局のところ、今まで見なかった事にしていたのはカリス達の我儘なのだ。
その我儘を通して魔王に負けてしまっては元も子もない。
賢者の話を聞いて仲間内で話し合ったカリス達は自分たちの弱さと未熟さを自覚し、その村にいる賢者と会い仲間になってくれるように頼もうという話になった。
こうしてカリス達は最終決戦を前にして名もなき村を目指す。
そこにいるという最後の仲間を迎える為に。




