ユディバ達との再会
ユディバに異変が起こる直前、実はこのようなやり取りがなされていた。
(……聞こえますか、ユディバ?
いま貴女の頭に直接語りかけています)
祝宴を楽しんでいたユディバの脳内に唐突に言葉が響いてきて思わず立ち上がる。
(この声は……シャーリー様ですか?)
(ええ、その通り。
偶然なのだけれども私達も同じ店で食事しているの。
上手いこと言って抜け出してこれないかしら?)
(それは何と嬉しい偶然でしょうか!
もちろん抜け出して会いにいかせてもらいますわ)
(それじゃ、待ってるわね。
私たちは貴方達の部屋から出て右側端の方にいるから)
(分かりました)
こうして花を摘みに行くという定番の言い訳を使って部屋を飛び出したユディバは、直ぐにシャーリー達を見つけて駆け寄って来た。
「シャーリー様!」
嬉しそうにシャーリーに駆け寄って抱きつくユディバを優しく受け止める。
「元気そうで良かった。
上手くいったという話も聞いた」
「はい!
おかげさまで無事に国を一つに纏める事ができました。
これもシャーリー様のお陰です」
「そんな事はない。
私達は手助けしただけで全部貴女達の力」
「その言葉だけで今までの苦労が全て報われた気分ですわ」
と、シャーリーとユディバが再会を喜び合っていた所でデコバも部屋を抜け出してやって来た。
「ユディバ、一体どうした……って、シャーリー殿?
それにノア殿とエムザラ殿もご一緒とは」
「僕たちの方もやる事が終わったので以前食事した店に来たら偶々デコバさん達が入ってきましてね。
丁度お二人に頼みたい事があって会いたいと思っていたので丁度よかったですよ」
「頼みですか?
シャーリー様の頼みならどのような困難な事でもやり遂げる覚悟ですわ」
後ろに燃える炎が見えるくらいに熱く語るユディバだが、シャーリーはそんな彼女を見て頭を横に振った。
「そんなに難しい頼みじゃない。
カリス達に伝えて欲しい情報がある。
この先の魔王城に続く道中にある村に魔法の天才、賢者がいると」
「それだけでよろしいのですか?」
「もちろん情報元が私ということは隠して伝えて欲しい」
その話を聞いたユディバの顔色が曇る。
それはいつも明るかった彼女が初めて見せる表情であった。
「それは構いませんが……会われる気は無いのですか?
カリス様達からシャーリー様の話をお聞きしました。
とても大切な仲間だったけれども失ってしまった事を後悔していると」
「……分かっているけど私は会えない。
もう彼らと旅をする事は私には出来ないから」
「分かりました。
その賢者の情報だけをお伝えしてきます」
「もうそろそろ戻らないと探しに来てしまうかもしれないな」
「そうですね……名残惜しいですがこの辺りで。
また会えますか?」
「ユディバもデコバも友達だと思ってる。
だからまた気軽に会いにくるよ」
「その時は僕達も一緒に来ますから」
「ま、人間の女王にもてなして貰うのも悪くないからね」
3人の返事を聞いたユディバの顔からは再び満面の笑顔が現れた。
そのユディバの様子をデコバも嬉しそうに見つめていた。
「シャーリー様が来られた時には最高のおもてなしをさせて頂きます。
その時を楽しみにしていますわ」
こうして2人はカリス達の待つ部屋に戻っていった。
「偶然とはいえ無事に伝えられてよかったですね」
「そうだね……後やるべき事は一つだけかな」
一連の勇者問題にケリをつけるべく最後の目的地を思い浮かべながらシャーリーはポツリと呟くのであった。




