思いがけない再会
メリッサ達の村を救ったシャーリー達は再びフォーリン国の首都であるハルドバークへとやってきていた。
カリス達と別れてから一月以上経っているのだが、以前来た時と変わりのない街並み。
革命を起こすと言ったユディバ達はどうなったのだろうか?
その辺りの情報を得るためにも以前立ち寄った店に向かう。
「いらっしゃい!……って、あんた達か。
随分と久しぶりだね」
「一回しか来ていない筈ですが、僕たちのことを覚えているのですか?」
「そりゃ、あんた達みたいな強烈な組み合わせならね。
それでいてこの店が出来てから最も料理を注文してくれたお客さんだ。
忘れようにも忘れられんさ」
「とりあえず片っ端から料理持ってきて」
「あいよ!
今日は忙しくなって嬉しいね」
店主は満面の笑みで厨房に向かう。
「あまり変わった様子はありませんね」
「まだ行動を起こしてないっことかね?」
「分からない……だから先ずはご飯を食べる。
食べてから考えよう」
「そうですね。
ここの料理は美味しいですし」
「あたしも好きな味付けだね」
そう話している内に給餌の女性がどんどんとテーブルに料理を運んでくる。
シャーリー達はその料理を運ばれた側から食べ尽くしていき、厨房も給餌もてんてこ舞いと言った様子である。
食事がひと段落したところで店主がシャーリー達の所にやってくる。
「今日もいい食いっぷりだったね。
これだけ作り甲斐のあるお客さんも早々いないよ」
普通なら流してしまいそうな言葉であるが、一瞬引っかかったノアが聞き返す。
「早々って事はこのぐらい食べる人が少ないながらもいると言うことですか?」
「おお、そうだよ。
今日は確か来客される予定だったような気が……ああ、いらっしゃったね。
あの一団がそうだよ」
急に店主の喋り方が丁寧になった時点で3人は嫌な予感はしていた。
店主が示した入り口から入ってきた一団。
それはデコバとユディバの2人にカリス達3人を加えた5人組。
彼らは給餌の女性の案内で店の奥にある個室に入っていく。
気付かれなかった事にホッとしながらノアは店主に尋ねる。
「今のはどなたでしょうか?」
「ああ、あんたらは暫く離れてたから知らないのか。
戦闘にいた黒い男性は何と驚く事に以前姫様を攫ったと言われていたブラックドラゴン様が人間に変化しているらしい。
その隣にいたのが我が国に新しく即位された女王ユディバ様でドラゴンに攫われていたと思われていた姫さまだよ」
「それは興味深い話ですね。
なぜ姫さまは自分を誘拐した男と仲睦まじい様子なのでしょうか?」
「それが誘拐ってのはこの国の元王様の虚言だったんだよ。
真相は魔王に姫を売ろうとした所を以前から姫様と親交があったドラゴン様が助けてくれたらしい。
それらの証拠を始めとして、王の魔族に国を売る計画を全てを明かして王を追い詰めたそうだよ。
追い詰められた王様は姫様を殺そうとするのだが、ドラゴン様と後ろにいた3人の若者という護衛が強すぎて全員返り討ちにあったらしい。
これが大体2週間前の話だな」
「そうだったんですね。
教えてくれてありがとうございます」
「いいってことよ。
私はまた厨房に戻るけどゆっくりしていってくれ」
店主はそう言うと再び厨房の奥へと引っ込んでいった。




