一大決戦
魔物の群れを村の外で迎え撃つ村人達。
彼らの前には強力な武具で身を固めたリザードマンや中身の無い動く鎧。
更にはゴーレムやドラゴンといった魔物達が村に向かっていた。
「み、皆さん……やはり逃げ、逃げてください」
こちらに向かってくる魔物達を見たメリッサは完全に気後れしてそう話すが、村人達からは余裕の表情が崩れない。
「まぁまぁ、大丈夫だって。
あの程度の連中なら慣れたもんだから」
一応という事でメリッサの護衛についたご近所のおばちゃんが笑いながらそう語りかける。
「慣れ……てる?」
おばちゃんの言っていることが理解出来なかったメリッサがおうむ返しに聞き返したところで戦況が動き出した。
最初に空を飛ぶ小型のドラゴンに乗った魔族の騎士がその機動力に任せて突っ込んできたのだ。
「やれやれ、若いものはせっかちじゃのう……どっこいせっと」
村で一番高齢のシム爺さんはそう言うと持っていた槍を地面に突き刺し、棒高跳びの要領で高く飛び上がる。
そして、ドラゴンナイトの真上に到達すると、そのまま槍を構えてナイトとドラゴンの両方を貫いて急降下した。
その間にリザードマンの戦士達が村人達と戦闘の間合いに入る。
村人の中から剣を持ったものがリザードマンに一対一で対峙するように向き合う。
咆哮を上げて襲いかかるリザードマン達だが、その叫びにも全く怯まずに剣同士を1〜2回打ち付けあったと思った次の瞬間にはリザードマンの首は飛んでいた。
更に先程のドラゴンナイトと違い大型のドラゴンが上空から襲いかかってきたのだが、先程のシム爺さんの要領で空高く飛び上がった村人達が続々とドラゴンの翼めがけて急降下してくる。
その攻撃で翼に大きなダメージを受けたドラゴンは落下して地上に叩きつけられる。
その隙を逃さずに残った村人達がドラゴンに群がり手に持った武器でボコボコにぶん殴っていく。
そのあまりにも一方的な展開に唖然とするメリッサだが、そんな彼女の肝を冷やす出来事が起こった。
ドラゴンに群がっていた村人の一人が近づいていたゴーレムに気付かずに殴り飛ばされてしまったのだ。
彼は回転しながら何度も地面に叩きつけられメリッサのすぐ近くで止まる。
「だ、大丈夫ですか?
いま回復します!」
と、慌てて近寄ったメリッサだったが村人は何事も無かったようにムクリと起き上がった。
「大丈夫大丈夫。
全然痛くないから」
身体についた砂埃を払い落とした村人は元気に戦線へと戻って行く。
その足取りはしっかりとしていて本当にダメージを受けていないことが分かった。
最早目の前で行われていることが現実かどうかも分からなくて呆然とするメリッサをよそに村人達は力を合わせて魔物の群れを退治していった。
そして、その全てを片付けたときに村人達は重傷はおろか、軽傷者すらいないという完全勝利で魔物たちの進行を防いだのである。




