魔物、襲来
シャーリーのオイルが行き渡って効果を実感し始めてからはジョンに付けるサポートを交代させ、更に前衛1後衛3のチーム数を増やしていった。
最初は半信半疑だった村人だが、自身の身体が強くなっていると言う実感自体はあったのと、ジョンやカンチントンの三人の説得もあり魔物退治に前向きに対処してくれた。
そして、帰ってきた頃には興奮した様子で自らの武勇伝を周りの人たちに告げていく。
そうなると他の村人も自分にも可能性があるのでは無いかと思って勇気を出すものが増えていく。
この流れは止まる事がなく、今では村の仕事と狩りの仕事を交代制で行うことになっていた。
何もしなくても日に日に身体が強くなっていく村人達が積極的に狩りに行って実践経験を積んだ事でシャーリーの計画の準備は完全に完了した。
「これで大丈夫だと思うから最後の仕上げをお願い」
「はいはい、分かってますよ」
ノアがそう言って地面に手を置いて魔力を流し込んでいく。
すると村にかかっていた隠蔽の魔法が完全に解けてしまった。
更にこのノアの魔力には魔物を刺激する効果も含まれていて、周りにいた魔物達が一斉に村に向かい始める。
「大変です!
隠蔽の魔法が解けて魔物達の群れが!!」
このタイミングで事態に気がついたメリッサがシャーりのテントにやってくる。
「分かってる。
たいした装備では無いけど村人達に配って」
シャーリーはそう言ってテントの奥から剣や槍、斧を持ってきた。
これらはシャーリーの言葉通りに何の変哲もない鉄製の武器である。
「こんな普通の武器しかないんですか?」
「あるだけマシなんだから贅沢は言わない」
確かにシャーリーの言う通りなのだとは思うが、これまで様々な強力装備を提出してきたシャーリーから普通の鉄製品が出てくると言う事には違和感を感じた。
しかし、時間もそれほど残されていないと感じたメリッサはそれらの武器を持って広場に向かう。
因みにメリッサもオイルを使った食事をしているのでかなり重量のあるはずの箱を軽々と持ち上げて運んでいた。
「普通の装備しかないらしくて……」
村を守る為に命を懸けてもらうに相応しい装備とは言えない事にメリッサは申し訳なく感じる。
しかし、村人達は
「あるだけマシってもんよ」
「そうそう」
「最悪素手を覚悟してたからな」
と余裕そうに武器を選んでいった。
そんな自信満々な村人達の姿がメリッサには理解できなかった。
それもそのはずである……彼女は村に篭っていて村人達が狩りに出かけている姿を見た事がなかったのだ。
誰一人緊張することも怯える事もなく村の外に出て行く。
それは本当にちょっと散歩に行ってくると言わんばかりである。
メリッサはそんな村人達の自信満々な理由を数分後に目撃する事になるのであった。




