怪しいオイル
シャーリー達が村に来てから2週間が経った。
その間ずっと戦い続けたジョン達はすっかり戦闘に慣れてモンスターを倒すペースも上がっていた。
今日も大量の謎の木の実を持ち帰ってきたジョン達に礼を言ってプランターに木の実を植えていく。
その作業が終わったところで最初に植えた木の実の様子を見に行く。
そこには既に2メートル近い大きさに成長していた木が沢山の実を生い茂らせていた。
その木の実を採取して籠に入れたシャーリーが呟く。
「もうそろそろ次の段階に行くべきかな」
♢ ♢ ♢
その日の夕方、メリッサを通じて村の主婦達がシャーリーに集められていた。
彼女達の前にある机には幾つもの小瓶に入った液体が並べられていた。
「これは料理が美味しくなる万能オイル。
これを使って炒めてもいいし揚げてもいい。
サラダに直接かけるのもオススメ。
試食を用意したから食べてみて」
そう言ってシャーリーは村で一般的に食べられている葉野菜にオイルをかけたものを主婦達に渡した。
半信半疑で口にした主婦達であったが、その野菜を口にした瞬間に目を見開く。
「こ、これは何なんです!?」
「今までに食べた事が無い味だわ」
「私、野菜はあまり好きじゃなかったけどこれなら美味しく食べれるわ」
口々に称賛の声を上げる主婦達に満足げに頷く。
「今からこれの作り方を教える。
材料は栽培して量産しているから沢山ある」
そう言ってシャーリーが取り出したのはジョン達が持って帰ってきた木の実であった。
シャーリーの説明に主婦達は必死にメモをしながら作り方を習得していく。
「メリッサにはこの場所の管理を頼みたい。
数は沢山あるから余程欲張らない限りは要求された通りに渡すだけでいいから」
「分かりました……ところでこれって私も頂いていいんでしょうか?」
「もちろん構わない。
ただ、メリッサは修行もあるから私が作ったオイルを使った料理を用意する。
その上で必要な分を持っていってくれればいい」
「ありがとうございます!
……私、幼い頃に両親が亡くなって家族がいないから人がつくる手料理に憧れてて。
だから、凄く嬉しいです」
メリッサがそう言うとシャーリーは彼女の身体を優しく抱きしめた。
「今まで1人で良く頑張った。
でも、今は私たちがいるからもっと頼ってくれていい」
「うう……シャーリーさん……」
今までこの小さな身体で村を守るためにずっと踏ん張ってきたのだろう。
その張り詰めたものが解消され優しく受け止めてくれたシャーリーの胸の中で彼女は大泣きした。
シャーリーはそんなメリッサの背中を優しく撫でながら彼女が落ち着くまで抱きしめてあげたのであった。




