サービスタイム 男湯編
「はぁはぁ……少なくとも20匹は倒してきたぞ!」
村に帰ってきた途端に広場で大の字になって倒れるジョン。
ジョンのサポートを名乗り出たカン、チン、トンの3人も倒れたジョンの周りにへたり込んでしまった。
癒しの杖の効果は肉体的な疲労も取るはずだが精神的な疲労まで回復する事は出来なかったのだろう。
それでも20匹以上の魔物を初めての実戦で倒してくるという結果にシャーリーとノアは心の中で賞賛を送っていた。
「お疲れ様……ところで木の実は出てきた?」
「幾つか出てきたけどこれが何だってんだ?」
ジョンがそう言って懐から5種類の木の実を取り出した。
数は合計で8個だが今回は種類が問題である。
その点で5種類全て揃っているというのはシャーリー達には僥倖であった。
「まさか初日に5種類全て揃うとは……お手柄ですよ、ジョンさん」
「そいつは頑張った甲斐があるってもんだ。
なんかご褒美でもくれるってんなら貰うぜ」
ジョンは冗談で言ったのだが、シャーリーは村はずれの方を指さす。
「あそこにご褒美用意してるから行ってくると良い。
今日はお疲れさま」
「お、おう……あっちには何も無かったはずだがな」
「でも、何か煙が見えますぜ」
「行ってみましょうや」
「ちょっと楽しみですな」
カンチントンの3人組に言われる通りにジョンも少しワクワクしていた。
シャーリーの渡してくれた装備は本当に戦いの経験がない自分が魔物と真正面から戦える効果を与えてくれた。
ジョンが今回これだけ戦えたのは村を守りたいという根性だけではない。
初めて魔物達に立ち向かえた喜びも大きかったのだ。
そんな初めての喜びを与えてくれたシャーリーのご褒美とは何なのか?
期待するなという方が無理な話であった。
そして、シャーリーが指さした場所には彼らが想像している以上のものがあった。
いつの間にか建っていた巨大な建物……その中は二つの入り口に分かれており、何故か受付をやっていた知り合いの村人に案内されて青い暖簾の入り口に入る。
グネグネと曲がる廊下を過ぎるとそこは広い脱衣所になっていた。
そう……ここは神の休息所でも使っていた露天風呂の技術を応用した巨大な銭湯である。
シャーリー達はジョンが帰ってくる間に暇だからと許可を貰って建築してしまった。
何故そんなことをしたのか?
答えは一つである……自分が入りたかったからだ。
それもなるべく大きな風呂に。
だが、折角作ったものを自分で独占する気もない。
そこで村人達も自由に使ってよいという条件で場所を提供してもらったのだ。
「兄貴、あの人何者なんですかね?」
「そんなこと俺が知るか!
……だけど、俺たちの命を救ってくれて村を守る力をくれてこんな素晴らしいものまで建ててくれたんだ。
誰だろうが関係ねぇよ」
「……そうっスね。
それに良い女ですしね!
アニキも気になってますもんね」
「バカやろー!!
……否定はしねえけど、そういう事は軽々しく口にするもんじゃねえよ」
一の子分であるカンにからかわれて顔を赤くするジョン。
そんな話を風呂に浸かってリラックスしていた時、ふと壁の向こうのにある隣の空間から扉が開く音がした。




