別れと新たな旅の目的
翌日、女将達のところにカリス達が神妙な顔をして現れる。
「すいません、今日から旅に戻ろうと思うんです」
「おや、残念だけど目的があるみたいだからね」
「それで大変申し訳ないのですが、彼らも僕たちと一緒に行きたいと言っているのですが……」
そうして申し訳なさそうにしているカリスの後ろからユディバとデコバが現れる。
「え、ああ。
ついて行きたいというなら仕方ないんじゃないかい?」
「彼らはここの用心棒だそうですが大丈夫なのでしょうか?」
「え?ええっと……ああ」
女将ことエムザラからしたらカリスとデコバ達を引き合わせて城の奪還を手伝わせるつもりだったので、最初に話していたデコバ達がこの宿屋の用心棒だという事を忘れていたのだ。
そこに素早くノアがフォローに回る。
「心配して頂くのはありがたいのですが大丈夫ですよ。
どうやらお二人の正体を聞かれたようで……私達は御二方を匿い支援する為にこの宿屋を開いていたのです。
お二人がカリスさん達を見込んで旅に加わるというのであれば、ここはお役御免という事で畳ませてもらいますよ」
「ああ、そういう事かい」
「道理で辺鄙な位置にあるわりに豪華な宿屋だと思った」
ノアの言葉に納得したのはマリアとカリンであった。
彼女達には疑問があった……なぜこんな辺境の地にある宿屋が王都にある最高級の宿屋に並ぶか凌駕するほどに質が高かったのか。
その答えが王女を匿う為に宿屋としてカモフラージュした施設だと聞けば納得できるというものである。
「それなら良かったのですが……これから街に戻る予定でしたら送らせて頂けないでしょうか?」
「それには及びませんよ。
女将は元は一流の冒険者です。
そして、皆さんと顔を合わせてはいませんが、厨房にいるコックは私たちの護衛も兼ねている信用できる人物なので街まで戻る事には苦労しないのですよ」
「分かりました……それならば安心です。
それではこのままお連れしても?」
「問題ありませんよ。
デコバさん、ユディバ姫……どうか頑張ってくださ」
「元気にやるんだよ」
「女将達には大変世話になったな」
「とてもお世話になりました。
お……さまにもよろしくお伝えください」
「ええ、分かりました。
しっかりと伝えておきますよ」
ユディバの話は途中小声になってカリス達には聞こえていなかったが、ノア達にはしっかりと伝わっていたらしい。
こうしてカリス達を送り出したエムザラとノアは一息ついた。
「それで、これからどうするんです?
彼らの動向を見守りますか?」
ノアが厨房にいたシャーリーに尋ねると彼女は首を振った。
「私たちがやれる事は全部やったから後はカリス達が頑張ればいい。
私は別にやる事がある」
「一体何をやらかすつもりだい?:
「勇者の最後の仲間を探して鍛えておく」




