信頼と和解
無事に帰ってきたカリス達はダンジョンを攻略したばかりとは思えないほどに真剣な表情をしていた。
「ただいま帰りました。
……あの、食堂をお借りしてもいいでしょうか?」
帰ってきて早々にカリスが女将に告げる。
「いま泊まってるのはあんた達だけだから好きにしな」
「ありがとうございます」
気持ちよく了承する女将に頭を下げて食堂に集まる。
カリス達3人とユディバとデコバの2人が向かい合うように座る。
「先ずは改めて自己紹介を。
私の名前はユディバ。
フォーリン国の王女でした。
今まで隠していて申し訳ありません」
「王女様!?」
「道理で気品があると……」
ユディバの告白に驚くカリス達だったが、そこでデコバが話しかける。
「そして我がユディバを誘拐したと噂されているブラックドラゴンだ」
デコバはそう言うと人化の術を一部解いて尻尾や羽を出現させた。
「その誘拐の話なら聞いたことがある。
僕たちが城に辿り着いた時に解決していなかったら自分たちが手伝おうと思っていたから」
「その姫様とドラゴンがこんな場所にいるなんてねえ」
「どういうことか説明していただけますか?」
「もちろんです」
カリンの問いかけに頷いたユディバは、シャーリー達にした話と同じ話をカリス達にも伝える。
「なるほど……真に悪いのは国を魔王に明け渡そうとする国王だったという訳か」
「信じてくださいますか?」
「正直、初めて対峙した時この話をされても到底信じられなかったと思う。
でも、いまの2人の事はダンジョンを一緒に攻略した仲間として信頼している。
だから……信じるよ」
「そうだね……腑抜けたお姫様ならともかくとして、あんたぐらい気合の入ったお姫様なら悪いドラゴンにら騙されてるってことも無いだろ。
アタイも信じるよ」
「私も同じ意見です。
それにデコバさんは自分の正体がバレるのも厭わずに私たちを助けてくださいましたから。
あの事も信頼できる証だと思います」
「皆さんありがとうございます」
「これからどう……」
話を続けようとするカリスを隣に座っていたマリアが手で遮る。
「ちょっと待った!
これで正体を隠していた件は片付いたんだろ?
それなら先に祝宴にしようぜ。
なんたってアタイ達は難関のダンジョンをクリアーしたんだからね」
「それもそうだね……この話は後でも出来るから先ずはダンジョン攻略を記念して乾杯しようか」
「そうと決まったら女将さーん!
アタイ達ダンジョン攻略出来たからお祝いしたいんでバンバン料理持ってきてくれないかい?」
「あいよ!
腕によりをかけるから楽しみに待ってな!!」
マリアの言葉にロビーの方から女将さんが大声で返事を返してくれた。
そうして直ぐに用意されて並べられた豪華な食事の数々。
その前で5人は乾杯をして料理に群がるのであった。




