一人の限界
ダンジョンの最下層で全滅した次の日、カリス達は懲りずに再び挑んでいた。
そして、今回もあっさりと全滅するものの昨日よりは多少マシだと言える戦いが出来ていた。
そんな日々を1週間も繰り返した頃だろうか?
今までは実力差から全くついてこれていなかったカリス達がユディバ達と連携を取れるようになっていた。
それは道中でやっていたようなユディバ達がカリス達に合わせて行っていたレベルの低い連携では無く、ユディバ達のレベルに合わせた高い連携である。
こうなってくると辛いのはシャーリーの方である。
シャーリーの攻撃は全てユディバに対して受け止められてしまっている。
その隙を突いてデコバ達を中心とした攻撃チームがシャーリーに対して攻撃を行ってくる。
(随分と手強くなった……やっぱり勇者ってのは忌々しいくらいに強くなる)
心の中で愚痴りながらシャーリーは一人での戦いに限界を感じていた。
もちろん自分が全力で戦えばこの5人はあっという間に平伏すだろう。
今使っている人形は遠隔操作しながらで尚且つ性能は突貫で作ったので非常に悪い。
全力で動くと全く反応しなくなるので、人形に合わせた動きしかできない。
更に遠隔操作は若干のラグがあり、リアルタイムに戦いの場を映している訳ではない。
その為にシャーリーは先の動きを先読みしながら対応をしていた。
ここまでハンデを背負った上で尚互角なのであるが、それでもシャーリーの中には悔しいという思いが出てきていた。
人形と遠隔装置の改良を使用……そこに意識をとられた途端に身体に強い衝撃を受けて倒れそうになる。
痛覚などの五感を共有しているわけでもない。
しかし、デコパの一撃をモロに食らった人形の動きが更に悪くなり操作を受け付けなくなる。
「しかたない……奥の手を使う」
そう言ってシャーリーは何やらポチリとボタンを押す。
「気をつけろ!
こいつまだ生きてるぞ!!」
カリスが叫ぶと前に倒れていた人形がガバッと起き上がる。
「最終コード容認。
プロジェクト『ドラゴン』始動!」
無機質な声が部屋に響くと共に人形は空へと飛び上がっていく。
空中で静止した人形は変形し、どうやったのか分からないがドラゴンの姿を形作っていく。
その姿は圧巻で元は人間のサイズだったのにどうしてそのサイズが出来上がるのかという疑問は野暮であろう。
こうして出来上がったメカドラゴンはカリスたちを見下ろしながら一声叫ぶのであった。




