守護者との戦い 1
「あれ、何やってんだい?」
エムザラが宿の庭で構えを取っているシャーリーを指差した。
彼女は何かを挑発するように手をクイクイと動かしている。
「ああ、勇者達と戦っているんですよ」
「……うん?
勇者達はダンジョンに行ってるんだろ?」
「ええ、そうですよ。
お姉ちゃんはいまダンジョンの最下層で勇者達と戦い始めた所じゃないですかね?」
そう言われて見てみるとシャーリーは見えない何かと戦っているような動きをしている。
「一体どう言う事なんだい?」
「遠隔操作できる人形を作ったんですよ。
変装すれば気付かれないとは思うんですが、それでも危険はありますからね」
「なるほど、そう言う理由なんだね。
……所で衝撃波があちこちに飛んでるけどアレは大丈夫なのかい?」
「その為にここで見張っているんですよ。
いま、僕の力でお姉ちゃんの周りに結界を張っています」
「ノア1人で止められるのかい?」
「勇者達相手に手加減していますからね。
本気だったら無理ですが、この位なら余裕ですよ」
「ふーん。
まぁ、せっかくだしアタシも見物させてもらうかね」
♢ ♢ ♢
突如現れた謎の敵に対してカリスは戸惑っていた。
このダンジョンの敵自体ものすごく強かった。
宿屋の用心棒達の助太刀がなければ間違いなく死んでいただろうという場面が多数あった。
それでもユディバの守りのお陰で何とか先に進むことが出来た。
いや……そんなギリギリのものではない。
彼女のお陰でかなり順調に探索できたと言っていいだろう。
だが、そんな万全の守りが目の前にいる守護者には簡単に突破されてしまう。
そして悪い箇所を指導するように守りを突破しては軽く打撃を与えていく。
それを何とか止めようとデコバが守護者に向かうが、焦って隙だらけとなった剣の一撃をギリギリで回避すると脳天に踵落としをぶちかました。
「ぐへええええ!?」
情けない声を上げながら地面にめり込むデコバ。
「そんな……デコバ様!?」
執拗に守りを突破された上で相方であるデコバがやられた事でユディバの心は折れてしまったのだろうか?
彼女はその場にへたり込んでしまった。
「く……俺たちもいくぞ」
「ああ、アイツを止めるよ」
「何とかしないと」
カリス達はそう言って3人で守護者に向かっていき……1分後には全員が地面に突っ伏していた。
全員が戦闘不能になったことを確認した守護者はどこからともなく荷台を持ってきて気絶した4人、とついでに戦意喪失したユディバを乗せた。
そうしてそのままダンジョンの入り口まで彼等を運んで外に運び出す。
そこからはユディバが変わるようで守護者にペコリと一礼すると荷台を押し始めた。
こうして初戦はカリス達の惨敗で幕を閉じたのであった。
 




