神の休息所の面々
カリス達が寝静まった頃、神の休息所の女将と息子が食堂にやってくる。
更にカリス達と別の部屋に宿泊していた褐色の男性と、服装こそ一般的な女性冒険者の軽装をしているものの気品溢れる女性もやってきた。
そして、厨房からはカリス達が大絶賛していた料理を作ったコックが料理を持って現れる。
コックは一般的な白いシャツと前掛け、縦に長い帽子を被っていてここまでなら普通なのだが、何故か顔にゴムで出来ていたマスクを着けていた。
「お姉ちゃん、いい加減にそのマスク取ったら?」
「カリス達が出て行くまでは外さない」
「お面を着けたままでは食事も取りづらいだろうに」
「問題ない」
コックがそう言うと冒険者の女性がコックの横にススっとやってくる。
「はい、どーぞ」
そしてコックがマスクを少しずらすと、その位置に料理を掬ったスプーンを差し入れた。
「いつもありがとう」
「ふふふ、いいのですよ」
余りに手慣れた様子に女将と少年は呆れたような顔をする。
「いつもって事は二人でいる間ずっと食べさせてもらっていたんですか?」
「研究しながらだと手が離せない事が多かった」
「本当にしっかりしてるのか抜けてるのか良く分からんね、姉御は」
「最近我にしてくれないと思ったら……こういう事であったか」
褐色の肌をした青年がガックリと項垂れる。
ここまでで既にお気付きだとは思うが彼女達はシャーリー一行である。
姫様を勇者達に預ける一歩として、彼らの進む道を予測してその道中に急いで宿屋を建てて待ち構える事にした。
そして見事にホイホイと勇者達を招き入れることに成功したのであった。
「それでこれからどうするんですか?」
「先ずはカリス達とデコバ達で即席のパーティを組ませる。
同じ冒険を経験して信頼を勝ち得てから城の状況を説明すれば信じてくれると思う」
「確かにポッと話を振られるよりはその方が信用できそうだね。
でも、どうやってパーティを組ませる気だい?」
「明日、カリス達がご飯を食べているときにエムザラから話を振ってみて。
内容はこの辺りに強力な装備が眠っているダンジョンがあるらしい。
ウチの護衛と一緒に探索してみないか?って」
「一緒に組むには良い理由だが本当にそんなダンジョンがあるのか?」
デコバの質問に私は力強く頷いた。
「ある……というより作った。
難易度もカリス達の実力に合わせてある。
デコバとユディバには簡単すぎると思うから適度に力抜いて3人を手伝って」
「分かりました!
シャーリー様が立ててくれたこの作戦……必ず成功させて見せます。
あ、シャーリー様お口を開けてくださいませ」
「あーん……でりしゃす」
ユディバはシャーリーの言葉に腕を高く上げてやる気を見せる。
その後にまたシャーリーの世話を焼き始めた。
「なぁ……気のせいかもしれないけど、姫さまはアンタよりも姉御に懐いてないかい?」
「道理で塔にいた頃に比べて姫がベタベタしなくなったと思ったのである」
またもガックリと項垂れるデコバという構図でこの日の会議は終了して各々、自分の部屋に戻って行くのであった。




