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湯呑みは重かった。

神の島に辿り着いた一行は船から降りるとシャーリーが建てた拠点へと向かった。


「このような島に場違いな程に立派な屋敷であるな」


「本当に素敵ですわ」


「私が建てた」


「まぁ!シャーリー様は大工としての腕もお持ちだったのですね」


シャーリー、ドラゴン、姫の3人が和やかに会話している横でノアとエムザラも連れ立って話をしていた。


「ここがあんたの秘匿していた島かい……あたしを連れて良かったのかい?」


「今の僕は何故秘匿していたか知りませんからね。

なるようにしかならないので良いんじゃないですか?」


「ほんと……前の面影が全く見当たらないこって」


「僕はドラゴン……ええっと島にもドラゴンがいるから面倒ですね。

貴方、名前は無いのですか?」


ノアがドラゴンを呼ぼうとして不便な事に気付き問いかける。


「我か?

我の名前はデコバである」


「そう言えば私も自己紹介しておりませんでしたわね。

私の名前はユディバと申します」


「ありがとうございます。

デコバさんは修行の為にドラゴンの巣へ連れて行こうと思いますがお姉ちゃんはどうします?」


「私はパス。

前に貯め込んだ素材を消化しないといけないからか暫くはここに籠ってる」


「では、何が出来るか分かりませんが私にもお手伝いさせてください!」


「分かった、着いてきて」


「はい!!」


という流れからシャーリーとユディバは屋敷に残る事になった。


「アタシはジッとしてるのは性に合わないからノア達に着いて行こうかね」


「分かりました。

それでは行きましょう」


「よろしく頼む」


こうしてデコバは力を付ける為の修行に。


ユディバはシャーリーの手伝いとして屋敷に残ったのであった。


デコバの修行は一言で言うと苛烈を極めた。


余所者のドラゴンとして巣の中で揉まれ、命を落とすことも少なくなかった。


しかし、この島にかかる特性のおかげで復活してはドラゴン達にやられてを繰り返していた。


その戦闘経験が段々と蓄積されていき、元々ブラックドラゴンというトップクラスの潜在能力を持つだけあってあっという間に巣のドラゴン達を蹴散らすようになっていた。


その後はノアやエムザラと人の姿で組み手をしながら技術を身につけていった。


こんな日々を1ヶ月過ごした彼の顔からは完全に甘えが消えた一人の男として屋敷に帰ってきた。


「デコバ様、おかえりなさいませ」


久しぶりに会った姫は極上の笑顔でデコバを迎えてくれた。


この笑顔さえあれば自分の苦労は報われると思った。


「いまお茶をお淹れしますね……はい、どうぞ」


こうしてユディバにお茶を淹れてもらったデコバはとても感動した。


塔にいた頃のユディバは箱入り娘らしく何も出来なかったからである。


そんな彼女が自分のためにお茶を淹れてくれた……感動に打ち震えながらその湯呑みを受け取ったデコバは……そのまま前のめりに倒れて潰されたのであった。

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