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黒い竜とお姫様

「この場合どうしたらいい?」


考えるよりも行動派のシャーリーが珍しくノアに語りかける。


「えっと……今の状況から見て誘拐って線は薄そうですよね。

姫様が駆け落ちに同意したとすれば救出というのもおかしな話になりますよね。

姫様からしたら僕たちの方が誘拐犯ですよ」


「まどろっこしいねぇ……要は事情を聞かなきゃ始まらないだろ。

イチャついてるところ悪いけどあんた達に聞きたいことがあるんでいいかい!?」


2人がうんうん唸っている横で空気を読まないエムザラは、何人も寄せ付けない様な甘い空気をぶち壊す様に叫ぶ。


その瞬間に青年と姫様はピクリと肩を震わせてゆっくりと顔をシャーリー達に向ける。


「ど……どちらさまかな?」


「ドラゴン様のお客かしら?」


先程の事をなかったかの様に振る舞う2人。


「話があるのはアタシじゃなくてこの2人なんだがいいかい?」


「私はうまく喋れないからノア、よろしく」


「仕方ないですね……僕たちはお姫様がドラゴンに誘拐されたと聞いて救出にやってきたんです。

しかし、状況を見ると聞いた話とは全く違うようなので詳しい事を知りたいと思っています」


救出に来たという言葉に身体を震わせる姫を気遣う様に青年が手を握る。


その手を握り返した姫は意を決してノアに尋ねた。


「それはお父様の命令なのでしょうか?」


姫の言葉にノアは首を横に振る。


「いえ、僕たちのリーダーである姉のシャーリーが街で噂を聞いて放っておけなくて来たのです。

誰の命令でも無く彼女の意思ですよ」


ノアの言葉にシャーリーが力強く頷く。


ノアに全てを丸投げしている割には見るものに強い自信を持っている事を感じさせる様な見事な相槌であった。


「自らの意思で危険な沼を越えてこの塔を制覇したというのですか!

何という意志の強さでしょうか……私にも己の意思を通すという確固たる強さがあれば良かったのですが」


「何を言うのだ姫よ!

姫は私が必ず守り抜くので安心してくれ」


「ドラゴン様……ありがとうございます」


話の流れからこの青年がドラゴンらしいが、ドラゴンの言葉で再び2人の世界に入っていく。


その流れにイラついたエムザラが床をドンと踏み抜いて爆音を立てた事で2人は正気に戻る。


「す、すいません」


「申し訳ない」


意外にもすぐに我に返って謝罪する2人だが、エムザラはドラゴンの方を指差して告げる。


「あんた、姫を守るっていうけどどうするつもりだ?

アタシらが本気で奪いに行って本当に守れる自信があるのかい?」


「無論!唯の人間に由緒正しきブラックドラゴンの我が負ける事などあろう筈がない」


「おもしれ〜2人とも悪いけどここはアタシにやらせておくれよ」


「愚かなる人の子よ……大人しくしておればつけ上がりおって。

後悔させてくれるわ!」


恐らくは変化の術を使っていたであろうドラゴンが真の姿を現す。


先程の言葉通りに見上げるほどに大きく巨大な黒いドラゴンが現れた。


その瞬間にシャーリーの目が捕食者のそれに変わるが、ノアが何とか抑えに回る。


「御託はいいからサッサとやろうじゃないか」


指をゴキゴキと鳴らしながらエムザラはブラックドラゴンに向かっていった。

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