首都の噂
エムザラの話し合いを終えたシャーリー達は今後の方針を決めるべく、名もなき村からサリトンを超えた先にあるこの国の首都ハルドバークへとやってきた。
「それで、何で貴女もついてきてるの?」
「え?姉御に負けたからなぁ。
計画自体も面白そうだし暫くは一緒にいて退屈しないかなと」
「ついてくるのはいいですけど格好はもう少し何とかなりませんか?
目立ってしょうがないんですが」
シャーリー達を俯瞰してみると
魔術士の格好をした鍛え上げられた肉体を持つ美人
育ちの良さそうな絶世の美少年
ビキニを着たスタイル抜群の美女
という組み合わせである。
目立たない訳がない。
「そうは言っても服なんて着てたら動くのに邪魔じゃんか。
出来るならこの布も取りたいくらいなのに」
「絶対にやめてくださいよ」
「分かってるって」
そんな2人のやり取りを見ていたシャーリーは道具袋から一枚の布を取り出す。
「これ……ちょっと我慢して」
「なんだい、こりゃ?」
シャーリーがエムザラの腰に布を巻きつける。
前から見ると露出度は高いままだが、後ろから見ると膝裏までを覆い隠し、彼女の形の良いヒップを完全に見えなくすることにせいこうする。
「後、これを口の周りに巻いて。
これで異国の踊り子に見えるはずだから」
シャーリーが用意したもう一つのアイテムは口元を覆う紫色のヴェールであった。
この装備により口元が覆われたエムザラの印象はかなり変わり、只の痴女から妖艶な踊り子にクラスチェンジ出来た……筈である。
「普段は余計なもん付けるのは嫌だけどコイツは不思議だね。
何だか体が軽くなった気分だよ」
「シャーリー謹製の装備は付加効果が付いていますからね。
それならエムザラも気にならないでしょう」
「ああ、ありがとうな姉御」
「気にしなくていい」
シャーリーはそう言うとサッサと先に歩いていってしまう。
「ありゃ、何か気に入らない事でもしたかね?」
「基本、誰にでもああですから。
あまり自分の中に踏み込まれて自由が汚されるのを嫌っているんでしょう」
「そんなもんかね」
こうして3人で歩いていくとレストラン兼酒場を発見する。
「ここにしよう」
そう言ってシャーリー達は店の中に入っていった。
店に入ってからこれでもかと言うほどに料理を頼む。
3人はどこにそれほど入るのかと言う勢いであっという間に食べ尽くし、新たに注文しては食べてを繰り返す。
そのお陰で店の主人は疲労しながらも最高の稼ぎに笑いが止まらないと言った様子であった。
「あんた達、たくさん食べてくれてありがとよ。
気に入ったかい?」
主人の問いかけにシャーリーはまだ料理の残っている皿を咀嚼しながら見つめ、その状態で主人に親指を立てる。
「ええとっても美味しかったです」
「ごっそさん!」
ノアとエムザラは既にギブアップしているので後はシャーリーの戦いである。
「変わった組み合わせだがあんた達も国王のお触れを見てここに来たのかい?」
「お触れ?」
「何の事です?」
「おや、そっち側の客じゃないのかい。
何でも手塩にかけて育ててきた大事な一人娘がドラゴンに攫われたんだとよ。
そこで王様はドラゴンと戦えるような強大な力を持つものを探しているんだそうな。
まぁ、関係ないならいいんだよ。
あ……別の客が来たみたいだな
チリンチリンとベルの音色がなり、名残惜しそうに主人が離れていく。
その間もシャーリーは1人で黙々と食をすすめるのであった。




