魔王と邪神
誤字報告受け付けました。
ありがとうございます。
「アイアムウィナー」
エムザラとの死闘を制したシャーリーは無表情のままノアにガッツポーズを取る。
そんなシャーリーをノアは冷めた目で見ていた。
「一つ聞きたいのですが僕の時みたいに記憶失ってたらどうするつもりですか?
かなり面倒なことになりませんか?」
「神様なら何とかなるでしょ?
ノアの時みたいに本の部屋に突っ込んでおけば勝手に何とかする」
「……まぁ、今回は首から言ってるから大丈夫でしょうけど。
……いや、常人なら死んでるんですけどね」
「神様だから……」
「神である事を免罪符みたいに言わないでください」
2人がそんな言い合いをしているとエムザラは呻き声をあげながらムクリと起き上がる。
何度か横に頭を振って意識の無事を確かめた後に唐突に立ち上がった。
「いや〜参った参った。
アタシが負けるなんてね。
シャーリー……いや、姉御と呼んでいいかい?」
「呼び方なんて好きにしたらいい」
「流石、心も寛容だねぇ。
気分も良いし何か分からない事とか知りたいことはないかい?
そこの記憶喪失よりは余程役に立つと思うよ」
「それじゃ、質問。
魔王って何?
というか、この時代には本当にいないの?」
「魔王ってのはこの世界の生き物の負の感情みたいなもんかね?
それが空気や大地からに少しずつ沁みて魔王上と呼ばれる地に集まり形をなすんだ。
それでこの世界にいないかっていう話だけどいない……というよりは必要ない」
「どういう事?」
「当然ながらこんな面倒な手順が自然に起きる訳がない。
この世界に混沌を招き入れたい邪神がやったのさ。
そして、前回の魔王討伐が丁度10回目……歴代の10体の魔王の身体を依代に復活する……だから魔王はいらないって訳さね」
「……それって大変じゃないの?
記憶失う前のノアは何であんな事を……」
「そんなこと僕に言われても困りますよ」
「どういう事だい?」
シャーリー達はことの起こりから全てをエムザラに話す。
「……なるほど。
結論から言うとノアはいつもの調子で魔王が復活すると思ったから勇者を選定した。
しかし、今回は邪神の復活だった為に勇者の意味は無いと思ったんだろう……邪神は勇者じゃ止められないしね」
「そうなの?」
「勇者ってのはあくまで魔王を倒す為の舞台装置みたいなもんさ。
一応、勇者としての使命を終えなければいけないから魔王を用意して倒させたかったってのはあるだろうけどね」
「邪神はどうなる?」
「どうにもならんさね。
人間が神に勝てる訳……」
が無いと言おうとしてシャーリーの顔が目に止まりピタリと止まる。
「が無いことも無いけど、普通は無理だからね。
まぁ、暴れるだけ暴れて制限時間を迎えたら消える存在だよ。
犬に噛まれたと思って我慢するこったね」




