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ぶん殴りたい神がいたから強くなれた

「神様という話は信じてもいい。

でも、カリスじゃなくて私なのは何故?」


「本来はカリス君をここに呼ぼうと思ったんじゃが……お主が庇って海に落ちるとは思わなんだ」


ここに流れ着く前……たしかに突風で落ちそうになったカイネを庇ったことでシャーリーは船から転落した。


そうして気付けばこの島にやってきていたわけだ。


「それじゃ、神様パワーみたいなので直ぐに帰してくれるの?

今の話をカリス達に伝えたいんだけど」


「それがそういう訳にもいかんのじゃ。

この島で特訓して最後の脱出までの過程を経て真の勇者となってもらうようにセッティングしておってのう……お主が脱出したければ同じ事をやってもらうしかないのじゃ」


「はぁ!?

私は勇者になれる訳ないでしょ」


「うむうむ….…そこでお主にはここで鍛えてもらって魔王になってもらいたいのじゃ。

ここで実力を付けて魔王を演じてやられたフリをしてもらえれば解決という訳じゃな」


「訳じゃな……じゃなーい!

もうムカついた……子供の姿だからって容赦しないからね」


シャーリーはそう言うと自身が使える最高威力の火炎魔法をノアに撃った。


爆炎がノアの身体を包み込む……が、ノアはピンピンしていた。


「気が済んだかのう。

ワシはこの島の中心におるから何かあれば来るが良い」


そう言い残しノアの姿が消えた。


後にはMPが切れて呆然とするシャーリーの姿だけが残されていた。


♢ ♢ ♢


一年後……島の中央にシャーリーはやってきていた。


「ふ、ふふ……思えば一年間色々あったわね」


彼女の頭の中にこれまでの苦労が過ぎる。


1日1人でこなす上で役に立たないと早々に魔法を捨てた事。


魚を釣り、鶏やウサギを狩り、木を切り倒して石を砕き地道に鍛えながらクラフトを極めていった日々。


途中からクラフトが面白くなってきて素材と新たな食材を求めて島を駆け巡ったこと。


希少な素材を求めてドラゴンを乱獲し、その肉を食べて更に力をつけた事。


そう言った事を思い出していた彼女はふと勇者パーティにいた頃の事を思い出していた。


(マリアとカリンは私を虐めていたわけではなく、本当にMPが無くなった時や魔法が使えなくなった時のことを心配してくれていたのね。

ここに来てあの2人の体力トレーニングが役に立つなんて思わなかったわ)


そう……この島では何をするにも体力勝負であった。


狩りをする、木を切る、石を削る、クラフトをする。


その全ての作業に対して魔法を必要としない力仕事ばかりである。


それでも最初からこなせたのはあの2人の体力トレーニングの恩恵があったからだ。


「ここに来るまで随分と時間がかかったのう……普通なら3ヶ月もあれば来れるはずじゃが」


「ええ、準備をしていたから」


「準備?何の準備じゃね」


「貴方をぶん殴る為の準備よ」


「やれやれ……まだ気が済まぬのか。

好きにすればあああああ!!」


話の途中でシャーリーの放ったボディーブローがノアに突き刺さり彼の身体をくの字に折り曲げる。


その一撃で膝を突き前のめりに倒れるノア。


「な、なんじゃ?この威力は?

神であるワシに届く威力じゃと!?」


動揺しながら顔を上げたところで状況を把握してしまった彼の顔面から血の気が引いていく。


ノアの目の前でシャーリーが片足を天高く上げていたからだ。


「ま、待て。

それは不味い……絶対にやめた方がいい。

ワシはそう思うんじゃね」


「私は是非振り下ろした方がいいと思う。

し………ねええええええ!!」


雄叫びと共に振り下ろされた踵がノアの脳天に突き刺さり、その勢いのまま地面に叩きつけられる。


その衝撃でノアの下にある地面が大きく陥没していく。


そう……シャーリーが時間をかけてここまで来たのは迷ったり戸惑ったりしていた訳ではない。、


彼女は入念に準備をして己の鍛錬に励み、肉を喰らって力に変え、考えうる限り最高の装備を用意した。


装備に至ってはこの島に置いてあったクラフトレシピを超えて新たに作り出したり、作り出した装備を強化もした。


現在のシャーリーのステータスなのだが表記がよく分からない文字になっていて見えない。


それ程までに鍛え上げたシャーリーの渾身の一撃は神に届き遂に一撃を入れた事で全身を喜びが駆け巡る。


「ふぅ……このくらいで勘弁してあげる。

どうせ無事なんでしょうからサッサと起きなさい」


うつ伏せのまま倒れたノアを揺すると彼はゆっくりと立ち上がりシャーリーを見つめる。


そして本当に純粋な瞳で首を傾げ


「お姉ちゃん誰?」


と言った。

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