ファースト・コンタクト
「この先にあるのが魔法都市サリトンだな」
「なーんかつまらなさそう所ね」
「軟弱なものしかいなさそうです」
シャーリー達が旅立ってから1週間後、カリス達一行がサリトンの街周辺までたどり着いていた。
街に近づくにつれて口数が少なくなるのはかつての仲間に想いを馳せていたからだろうか?
シャーリーが行方不明になる前、旅程の中にあるサリトンの名前を見つけた彼女はとても嬉しそうにしていた。
全ての魔法使いの憧れの地であるサリトン。
その例に漏れず只の魔法使いだった頃のシャーリーは楽しそうにその話をしていたものだ。
そんな事を思い出していた3人だがふと異変に気付く。
「この先って本当にサリトンなんだよね?
なんかすれ違う人達に筋肉質な人が多い気がするんだけど」
「カリスもそう思うか?
さっきからアタシ好みの男ばっかり出てきて目移りしちまうんだが」
「下品な事を言わないでください……確かにあちらの方達は良い筋肉をしていますが」
マリアの言葉に嫌悪感を口にしながらもカリンは男達に興味深げに視線を送る。
そちらでは緑色の服がはち切れんほどにパツパツになる程の筋肉を持った男達がいた。
「あ、でも手に杖を持っているから魔術士なのかもよ?」
カリスの言う通りに彼らは全員が杖を持っていた。
「いや、でもあれは武道家だろ?
持っているのは杖じゃなくて棍じゃないのか?」
「デザインは杖なんですけど……錫杖というやつでしょうか?」
そんな事を話しながらのんびり進んでいたのだが……
「魔物が出たぞーーー!!」
という叫び声が聞こえてすぐに身構える。
「行こう!」
「おう!」
「はい!」
カリスの号令で3人が駆け出す……のだが、
「よっしゃあああ!!」
「獲物だあああ!!」
「今日も美味いご飯ありがとうございます!!」
カリス達を遥かに超えるスピードで緑色の服を着た集団が走り去っていく。
「な、なんだ?あいつら?」
「とにかく急ごう」
「そうですね」
と、何とか気を取り直して現場に駆けていく。
万が一の時は勇者である自分が前に出なければ……そう覚悟を決めて現場に辿り着いたカリスは驚くべき光景を目の当たりにする。
3メートルはあろうかと言う巨大な亀に緑色の服を着た男達が群がって先端が光る杖で殴り続けているのだ。
「うおおおおお」
「おら、早く倒れちまえ!」
「もう胃袋は貴方をおさめる準備が完了しているのですよ」
そうして群がる姿はまるで野盗か何かのようである。
男達はあっという間に亀の魔物を倒してしまい、複数人でそのまま担ぎ上げてしまった。
「あ、あの〜」
呆気に取られていたカリスであるが勇気を持って近くの亀を運んでいない男に話しかけてみる。
「おや、どうされ……ひょっとしてご助力してくれようと?」
「はい、それも必要では無かったようですが」
「いえいえ、その心遣いがとてもありがたいですよ。
これからどちらへ向かうおつもりで?」
「サリトンの街へ」
「おお、それは丁度良かった。
私はサリトンの魔術士ギルドの職員ケインと申します」
男はそう答えたがカリス達は一瞬何を言っているのか理解できなかった。
「すいません、よく聞き取れなかったみたいで」
「全くだ……アタイも耳が遠くなったもんだよ」
「こんな素晴らしい身体をしている人達が魔術士ギルドの人なんてそんな筈は……」
「いえ、合っていますよ。
私達は魔術士ギルドの魔術士です」
真面目に答えるケインであるが、やはり3人はその言葉を受け入れるのに暫しの時間を必要としてしまった。




