シャーリーブランド
こうして上級魔術士達も加わり、ギルドに所属する魔術師達の殆どがシャーリー達に鍛えられることとなった。
シャーリーの魔物料理を食べて力を付けた魔術士達に装備を与えては狩りに出る。
単純なルーティンではあるがその効果は絶大であった。
日々、身体がバンプアップされて大きくなっていく魔術士達。
狩りにでてはその魔物の死体を荷車を手ずから引いて戻ってくる者達。
その光景に魔術士ギルドは街の人間から筋肉ギルドと噂されるようになっていた。
そのせいで評判が悪くなったかというと実はそうでもない。
「この間、筋肉ギルドの連中が火事で焼けた家の片付けと再建を手伝ってくれてよ。
力仕事を軽々とやってくれてあっという間に終わって助かったぜ」
「以前はひ弱で私の後ろをついてばかりだった彼がとても頼もしくなったの。
いつでも自信満々で私をリードしてくれるのよ。
それに夜の方も……うふ」
「僕大きくなったら筋肉ギルドに入って立派な筋肉マスターになるんだ!」
と、このように街の人々の評判も上々であった。
この頃になるとギルドの殆どがシャーリーの料理を食べにきていた。
必然的に食堂の職員も料理を作る作業に駆り出され、シャーリーの指導の元(説明するのはノア)で魔物料理の作り方を覚えていった。
また、日に日に装備が良くなっていくギルド職員の様子に街の鍛治や裁縫に彫金の職人達も彼女の元を訪れるようになる。
最初はどの程度のものかと見学に来るものが多かったのだが、其々の長とも言うべき人物が遥か高みにある技術を見た結果、即座に弟子入りを希望した。
こちらも必然的にその下の職人まで全てがで弟子入りした形となる。
こうしてサリトンの街ではシャーリーブランドと呼ばれる最高峰のブランドが産まれることになる。
更に身体を鍛えて白兵戦も出来る魔術士という新しい形態が生まれた事で街の安全と、ブランドを維持する為の素材調達係が出来上がった。
彼らが街の外で魔物を狩って持ち帰り、解体をした素材のそれぞれがシャーリーブランドに持ち込まれて加工されていく。
こうして一時期は完全に消えて無くなるのでは無いかと言われたサリトンの街は、自立して自給自足の出来る強い街として生まれ変わった。
「この街ももう大丈夫ですかね」
「うん、もうそろそろ次に行こう」
「行くのはいいんですけど……勇者達に手柄を押し付けるんじゃなかったんでしたっけ?
思いっきりお姉ちゃんの名前が付いたブランドが出来上がってるんですけど」
「……忘れてた、どうしよう?」
「そんなこと僕に聞かないでください」
こうして旅立つ前に最大の難題がシャーリーの前にやってきたのであった。




