雄達のハンティングタイム
サリトンの街で現在魔物の討伐を行なっている上級の魔術士達は役に立たない下級魔術士を馬鹿にしていた。
そんな彼らからして、中庭に集まって体力訓練をやっている下級魔術士達に対して蔑む気持ちしか無かった。
彼らは実力も才能もなく、明日の仕事にありつけるかすら怪しい。
そんな人物がモテるはずもなく、女性職員は自分たちの周りに集まって独占している状態。
例え近隣の魔物が魔法に強くなろうとも自分たちの才能ならば問題ない……この栄華はいつまでも続くことだろうとそう信じていた。
だが、事件はその2週間後に起きた。
通常ならば群れの中に1〜2匹しかいない魔法反射付きのタードラゴン。
しかし、この日彼らが出会った群れの全てが魔法反射の効果がついていたのだ。
甲羅の顔や手足を狙って魔法を撃つ上級魔術士達。
だが、1匹や2匹相手ならともかくとして今見える範囲で10匹以上はいるタードラゴンに対して正確に魔法を唱えることなど不可能である。
1人また1人と反射された自分の魔法で倒れていく魔術士達。
この隊を率いていた長のジュリアンもこのじょうきょうに対応できずに甲羅に向かって魔法を解き放ってしまう。
反射される魔法が自分に向かってきて思わず身体が硬直する。
隊員よりも威力の高い自分の魔法が返ってきては命はないだろう。
そう考えた彼を庇うように目の前に人が現れる。
それは中庭でテントを張り、下級魔術士を指導している自称魔術士であった。
「危ないぞ!」
ジュリアンが慌てて叫ぶが間に合わず目の前の女性に直撃する。
だが……彼女は全くの無傷であった。
その魔術士然とした衣装にすら損傷はない。
「間に合ったみたいですね」
そこに彼女と一緒にいる黒髪の美少年が現れる。
「ノア、遅い」
「お姉ちゃんが早すぎるんですよ。
多分驚いてると思いますけど、お姉ちゃんこれくらいじゃダメージ喰らわないんで安心してください」
「人を化け物みたいに。
それなりに痛かったよ」
「それってどれくらいですか?」
「え?えーと……針でチクッとされたくらい?」
「それを世間ではノーダメって言うんですよ。
ほら、それよりも皆さん指示を待っていますから」
ノアの言葉にジュリアンはハッとして辺りを見回す。
そこには先が光った奇妙な杖と黄緑色の帽子と服を着た、恐らくは下級魔術士達が揃っていた。
何故恐らくなのかと言うと、全員の身体の質量が増していたからである。
恐らくはゆったりとした作りになっていたはずの黄緑の服が筋肉でピチピチになっている。
更に今までは頭を使う魔術士らしく薄く爽やかな顔をしていた面々だが、今は全員の顔が濃い。
髭が生えてるとかそう言うことではない……何というか世界が違うのだ。
例えるならば以前の彼らは男だったが、今の彼らは雄と言った雰囲気である。
「さて、皆さん!
お待ちかねの狩りの時間です。
ここに来る前に注意されたことを守って楽しく狩りを行いましょう」
「カメ鍋の時間だーーー!!」
『うおおおおおおおお!!』
ノアが確認をしてシャーリーが叫ぶ。
直後に雄達はタードラゴンに向かって杖を振りかざして突撃していく。
まるで自分たちが魔術士であることを忘れたかのように、その場に魔法を唱えようとするものは誰1人としていなかった。
週刊○○の絵柄から漫画ゴ○○に変わった程度の変化です。




