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まだ貧弱だった頃の話

8/21 22:30誤字報告受け付けました。

いつもありがとうございます。

辺り一面に広がる海……足元には白い砂浜が広がっている。


背後には青々とした緑が生い茂っており青!白!緑!という主張の強い原色が否応なしに彼女の目に飛び込んできた。


呆然と立ち尽くす彼女の隣では10歳ぐらいの黒髪の男の子が


「いやいや、本当に申し訳ない事をした」


と謝っていた。


彼女の名前はシャーリー・ゲイル。


勇者パーティの魔法使い……だったが、現在は無人島に流れ着いた唯の魔法使い。


「何でこんな事になったのよおおおおおお!!」


海に向かって叫びが返ってきたのは隣の少年からの本当にすまないという謝罪の声だけだった。


♢ ♢ ♢


「それで……さっきは馬鹿な事をと聞き流したけれど貴方は本当は何者なの?」


「さっき答えた通りじゃて。

ワシの名前はノア……この世界の創造神じゃよ」


先程聞いた答えと全く同じものが返ってきてシャーリーはため息を吐く。


「じゃあ、そういう事で話を進めるけどさっきから何で謝ってるの?

それにここは何?」


「質問は一つずつにしてほしいのう……まぁ、答えるのじゃが。

最初の質問じゃがお主達勇者パーティの旅はワシの手違いでのう。

あの男は勇者でも何でもないし、別にこの世界に魔王というものも現在は存在しておらぬ」


「は?……はぁ!?」


余りに衝撃的な話に間抜けな顔で2度も聞き返してしまった。


「実は昔の夢を見て寝ぼけていたせいで現実と夢の区別がつかなくなってしまっての。

当時の魔王がいると勘違いして当時の勇者の血筋の名前をお告げとして出してしまったのじゃ。

じゃが勇者とは魔王と対となる存在。

魔王なき世界であの者は勇者でも何でもない」


そう言われて思い浮かんだのはシャーリーの幼馴染である勇者……カリス・マイネの姿である。


かつて魔王を打ち倒した勇者、マイネ家の末裔。


自分に厳しく他人優しい、物語の勇者を地でいく男である。


彼が勇者に選ばれたというお告げを聞いた時は皆がやっぱりなと納得したものである。


「待って……じゃあ、私たちは一体何のために今まで冒険を?

あの辛い日々は一体?」


彼女が思い浮かべるのは勇者が連れてきた女戦士マリア・クリックと女武道家のカリン・ボウワ。


彼女達は普段から魔法なんていざと言うときに役に立たない。

最後に役立つのは己の身体!


とシャーリーに言っては1日の終わりに筋力トレーニングやランニングを強制した。


正直、魔法使いに全く必要ない訓練だったのだが、断ってもしつこく食い下がってくるので仕方なくやっていた。


あの辛い日々を思い出すと今でも涙が出てくるのは仕方のない事であろう。


「とても信じられないけど、それを信じないと話が進まないみたいね。

それでこの島は何なの?」


「ここはワシが用意した勇者のための修行場じゃ。

この場所では生活の全てが経験として力になり、スキルも習得しやすくなっておる。

例えばじゃが……」


そう言ってノアは森に入っていき、すぐに羽をむしり取った鶏と丸太を担いできた。


丸太を処理して圧倒いう間に焚き火を作り火を起こす。


更に流れ着いた空き瓶から海の水を掬い、焚き火に当てて真水と塩を作り出してしまった。


その塩と鶏、更に森に生えていたらしい香草を使ってあっという間に調理してしまった。


「これを食べてみるのじゃ……ああ、忘れるところじゃった。

お主にステータスを見る能力を与えておいたからHPや力、体力といった数値を食べる前と比べてみるといいじゃろう」


ステータス?と思った瞬間に私の頭の中にハッキリとした数字が浮かんでくる。


様々な項目があるがHP23 力8 体力6という数字が見えた。


確認した後に渡された鶏との香草焼きを口に含む。


塩と油と香草が絶妙にマッチして美味しい。


私はあっという間に食べてしまい、再びステータスを確認する。


するとHP 28 力 10 体力 9と増えていたのだ。


「これは一体?」


「この島ではこうやって食事をするだけでも能力を上げることが出来る。

またあちこちにあるクラフト本を見ればそれを作れるスキルが入手できるようになっておるぞ」


そう言ってファッファッファっと笑う少年を見たシャーリーは、この人は本当に神様かもしれないと思い始めていた。

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