俺の武器は一振りの太刀
俺の名前は、己龍 閑
ごくごく普通の男子高校生。
俺は、今まで、剣の道一筋で生きてきた。
剣と言えば色々あるが、俺はその中でも、
《日本刀》が好きで居合術も小さい頃から習ってきた。
そんな俺は、いつもの様に道場で居合術の稽古に打ち込み、
その後、家に帰り、風呂に入り、いつもの時間に就寝した。
…………………次の日
「うっ……眩しっ…」
目を覚ますと、ベッドで寝ていたはずの俺は、
見知らぬ土地の草原のど真ん中に寝ていた。
しかし、目を覚ました俺は、自分でも驚く程に冷静だった。
「えっと…まず、ここは俺の部屋じゃないのは当たり前だよな。
それから、周りには、何も無い…と。」
さて、状況確認は出来たが、どうしたものか。
周りをいくら見渡しても、街や家らしき物は1つも見当たらない。
「……太刀?なんでこんな所に…」
立ち上がろうとした時、地面に一振りの太刀が落ちていた。
俺は、その太刀を拾った。
「持ってても大丈夫だろう…
とりあえず、人を探すのが懸命か。」
俺はひとまず、誰か人が居ないか探す為、歩き出した。
数十分歩いた所に、村があるのを見つけ、そこに立ち寄る事にした。
その村の入口には、〔ケイン村〕と書かれた看板が立っていた。
ケイン村の中に入り、人を探していると、1人の老人と2人の男がこちらに向かって歩いて来ているのを見つけ、俺は立ち止まった。
そして、老人と2人の男が俺の前で立ち止まり、老人がこう言った。
「お前は、何者だ。どこから来た。手に持っている武器は何だ。」
(想定内の質問だな…)
2人の男は、俺に向かって大剣の様な武器と杖の様な武器を構えている。
殺されるのは御免なので、正直に答える事にした。
「俺は、己龍 閑。ここの世界ではない、別の世界から転移してきたみたいだ。この武器は太刀といって、剣の一種だ。」
俺の答えを聞くと、老人と男2人は目を見開き、俺に背を向け何か話しをし始めた。
…と思ったのも束の間、直ぐに俺の方に向き直り、老人が謝罪をしてきた。
「己龍殿、無礼をお許しください。儂の家でお話しをさせていただきますので、着いてきて下され。」
と、言われたので、行く宛てもない俺は、とりあえず着いて行く事にした。
老人の家に着くと、椅子に座り老人が話し始めた。
「先程は失礼致した。儂はジルアン·ケイン、この村の村長じゃ。
そして、こやつらは村の用心棒での、守護者のガイと魔法使いのデイルじゃ。」
老人…いやジルアンが村長と言う事と、2人の男が村の用心棒なのは、理解したが、普通武器を持った見知らぬ輩がきて、別の世界から来たなんて言ったら、普通疑うよな?
「なぜ、俺を疑わなかった?」
俺が問うと、村長は答えた。
「一振りの剣を持ちし勇者となる者…この国に現れる。
と言う言い伝えがありましての。」
「俺がその言い伝えに当てはまったと…?」
「そうじゃ。だから、こうして連れて来た。
普通ならば、不審な輩として、ガイとデイルに任せたのじゃがな。」
そんなに都合がいい事があるのか、そう思ったが、
今の所は、この村長の言う事を信じるしかないか。
「今日は、もう遅い。今日の所は儂の家に泊まって、明日、これからどうするか話し合おうではないか。」
「分かりました。では、お言葉に甘えて。」
行く宛てのない俺は、ひとまず、村長のご好意に甘えて、
このケイン村で一夜を明かす事にした。