女格闘家、格ゲーにハマる。
私の名前は桜桃 楽子。
曾祖父の代から受け継がれし、一子相伝の拳法『一切合切粉砕拳』3歳の頃より祖父と山籠りし、義務教育なんてガン無視して、齢19歳にてその全てを会得した。
今日は朝から祖父に道場に来るように言われていた。
「楽子よ。」
「はい、グランパ。」
「お前はこれより、町に行き、その辺の男を捕まえ、いずれ結婚し、子供を作って『一切合切粉砕拳』を次の代に伝承させるのじゃ。」
「きゅ、急ですね。」
「うーん、お前もうすぐ二十歳だし、とにかく、まぁ、頑張れ。」
こうして祖父からの命令で山を下り、町に降りてきたのだが、まぁ、騒がしいところだな。どうにも道場着で居ると浮いている感じがするし、男どもは私の胸元を凝視している気がするが、多分気のせいだろ。
「ただいま。」
16年ぶりに帰るわが家、さて母の反応は如何に?
「ちょっと、アンタそこに正座しな。」
「は、はい。」
この後、半日掛けで玄関先にて、泣きながら母に説教され。祖父が誘拐犯として指名手配されてるのを知った。どうやら私の修行は合意の上では無かったらしい。
町での暮らしは暇であり、仕事も無いプータローの私は鍛錬以外は、何をして良いか分からず、お母さんが買ってきた白いワンピースを来て町をブラブラしていた。しかし、ブラジャーという物は窮屈だな。母は一際大きいサイズを買ってきた様だが、それでも胸を締め付けられる。
歩いているとシャッター商店街に差し掛かり、その中で健気に営業する小さなゲームセンターを発見した。思えば、遠い昔、父から連れてきてもらった気がする。入ってみると、中にはゲームがズラリと並んでおり、中でも格闘ゲームは私の目を引いた。
「ほぉ、中々の動きだな。」
格闘ゲームというものは、実践戦闘をする上で為になる。私もいずれ色々な敵と戦うだろうしな。暇潰しにはもってこいだ。
やってみると意外に難しく、思った通り技が出ない。これなら私が技を再現する方が容易い。しかし、コンボというのは為になるな。この様に技を繋げれば効果的にダメージを与えられるわけだ。今度やってみようとさえ思うよ。
しかし、ゲーム画面は限られているのと、相手に投げ技をされると抜け出せないのが解せない。私なら鰻のように抜け出して、スクリューパイルドライバーなど喰らわない。
日々の研鑽で、格ゲーに慣れてきて、ストーリーモードをクリア出来るようになったので、対人戦闘をやってみようと思い、思いきって乱入してみた。
すると、どうだろう?ニタテで瞬殺されてしまった。
「はっはは!!弱いなぁ!!」
・・・どうやらゲーム機の向こう側にいるのは少年の様だ。やれやれ、ここでムキになるのは、もうすぐ成人になる身としては大人げない。黙って後ろの観戦スペースに戻るとしよう。
「うぇええええん!!負けたぁ!!あいつムカつくよぉ!!」
私は号泣しながら後ろに下がった。負けるのが死ぬほど嫌いだ。少しぐらい手加減しろ。
「お姉さん、大丈夫かい?アイツはマナーが悪いので有名なんだ。気にすること無いよ。」
「ひっく、ひっく・・・うぅ、別に気にして無いもん。」
クソォ、リアルバトルだったら一撃KOなのに、法が許せばボコボコにしてやるのに。
悔しい気持ちでいっぱいの私だったけど、敗者の私は大人しくしてるしか無い。ぐぬぬ。
それからムカつくガキは五連勝して、鼻高々に「俺最強だな!!」とか言っている。はぁ、今日はもう帰ろうかな?
「ふざけんなクソガキ!!」
おっと、たった今クソガキに負けた大柄な男が、クソガキの胸ぐらを掴んでいる。
「ひっ、な、なんだよ!!やめろよ!!」
なんだ?クソガキは現実では、ひ弱なのか?酷く怯えている様に見える。
それにしてもみっともない、格ゲーで負けた借りは格ゲーで返さないと駄目だろうに、仕方ない助けてやろう。
「やめな。」
「なんだお嬢さん?このクソガキを助ける気か?お前さんだってさっきボロカスに言われて泣きそうに・・・。」
「泣いてないし!!」
そこは否定しないと、目は真っ赤だが泣いてない。泣いてないったら泣いてない!!
「とにかくやめな!!」
「嫌だね。」
「やめないなら・・・」
"シュッ"
とりあえず牽制で男の腹に軽いジャブを男に放った。弱パンチってところかな?
"ゴスッ"
「おげぇ!!」
あれっ?割りと深く入ったな。
大柄な男はクソガキを放した後、お腹を両手で押さえて、ズシン!!と前のめりに倒れた。言っておくが『一切合切粉砕拳』の"い "字も使って無いんだからね。正拳突きではない、ただのジャブだ。
「すげぇな!!姉ちゃん!!」
「見事!!」
まさかの周りのギャラリーからの拍手喝采。やめて、こういうの慣れてないからさ。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「あ、ありがとうお姉さん!!」
少年も先程とはうって変わって、素直にお礼を言ってくるのだけど、弱パンチで敵に勝つとか、ぬるゲー過ぎて、全然達成感無いわぁ。
"プチン"
あっ!!
ハラリと私のスカートの中から落ちる布切れ。その布切れを少年が不思議そうに手に取り広げる。それは私のお母さんチョイスの黒いレースのブラジャーだった。
私は顔を真っ赤にして、少年にとあるお願いをした。
「ご、ごめんだけど。それを再び私の胸に装着してくれるか?」
「えっ!?」
その後、ワンピースを脱ごうとした私を、店に居た全員で止めに掛かったのは言うまでもない。