44話 『強者の入口』⑧
ちょい短めです。
後2回程で『強者の入口』終了予定です。
お楽しみいただけると幸です。
俺が微妙な顔をしてボス部屋を見つめていると、尊が聞いてきた。
「流空、どうしたの?」
「ん?いや、何かありそうだな〜って」
「………確かに」
今度は俺と尊が微妙な顔をしていると、グラニーも少し気まずそうに言った。
「だ、大丈夫よ。ここまで来たのよ?何かある訳無いじゃない」
確かにそう言われるとそんな気がするけど、何かある気がするんだよな〜。
「何してるの〜?さっさとボス倒して帰ろ〜」
「「「え!?」」」
レネンスがそんな事を言いながら、ボス部屋の扉を開けた。
普通連携の確認とか、ボスの情報の擦り合わせとかあるだろ!?
「ほらリク〜。早く〜」
レネンスが俺と尊をボス部屋の中に入れてから、レネンスとグラニーもボス部屋に入り言った。
ボス部屋はかなり大きく天井は暗さで見えず、横は500mくらいありそうだな。
俺はすこしヤケ気味に叫んだ。
「あ〜もう!!分かったよ!!やればいいんだろ!!ボスの特徴は!?」
ここは一応B級のダンジョンだ。
そして、そんなB級ダンジョンも第ニ十階層まではボスも俺か尊のどちらか1人で何とか出来たが、第三十階層からは1人では完全勝利は出来無くなっていた。
なのでボスの特徴を確認しようとしたのだが………
「え〜と、このダンジョンの最下層のボスはエルダードラゴンの筈なのだけど。いないわね?」
「え?まじで?もしかしt」
俺がそう言った瞬間、足元が白く光りだした。
「まず!全員ボス部屋の外に!」
「ちょ!!これ動けないわよ!?もしかして転送魔h」
尊がそう言った瞬間、俺達全員が転送された。
◇
光が収まると、第四十九階層のボス部屋の3倍程の大きさの部屋に転移させられた。
俺が周りを見渡すと尊、レネンス、グラニー共に俺の近くに転移されていて、意識もはっきりしていた。
「なあ、さっきのは転送魔法陣だよな?あんな仕掛けが第四十九階層のボス部屋にはあったのか?」
「いいえ、私が情報を集めた時にはそんな事聞かなかったわ」
「もしかして嫌な予感当たった?」
「「……………」」
「おお〜!リク〜、見てあれ〜」
俺と尊とグラニーが微妙な顔をして下を向いていると、レネンスがそう声を上げて、指を指した。
俺がその方向を見ると、真っ黒い何かの魔法陣が現れていた。
俺はやっぱりかと思いながら呟いた。
「なあ、あれもしかして転送魔法陣?」
グラニーは少し遠い目をして言った。
「ええ、そうだと思うわよ。しかも黒い魔力。あれ多分だけど、リクとミコトの2人でやっても瞬殺レベルじゃないかしら?」
「え?そんなに?」
俺がそう聞くと、レネンスとグラニーが2人揃って頷いた。
そして、グラニーが俺達の前に出て言った。
「私達がやるから2人はレネンスと一緒に下がってて」
グラニーが前に出ると黒い魔法陣はより強く光だした。
そして、その魔法陣からは人が出て来た。
その人は女の人でメイド服を着ていた。
………何故にメイド服?
俺達は4人共、驚き固まっている。
俺達が固まっていると、突然グラニーは俺達の方にジャンプした。
「グラニー、どうした!?」
俺がグラニーに問いかけると、レネンスも前に出た。
俺と尊が困惑しているとレネンスとグラニーでは無く、メイドが初めて声を発した。
「まさか、ゴミが私の攻撃を避けるとは驚きですね」
そのメイドはまるで汚物でも見るような目で俺達を見ていた。
その声にグラニーとレネンスがピクリと反応した。
だが2人共反論するのでは無く、少し後退した。
グラニーとレネンスが後退した!?
「あ、貴方、何者なの?」
グラニーがメイドに聞いた。
するとメイドは目から光を無くし、俺達を見てない様な目をして答えた。
「ゴミに教える名前などありません。ですが冥土の土産に良い事を教えましょう。私は【ローナンバー】、『ナンバー100』低級戦闘メイド、もしも私に攻撃を入れたらあの御方に付けて頂いた名前をお教えしましょう。まあ、無理でしょうがね。死後私達の名を、ナンバーの名を広めなさい」
レネンスが俺と尊の方に飛び込んで来て、立っていた俺達2人を理矢理伏せさせた。
「レネンス!!避けなさい!!」
グラニーがそう言ったのが聞こえた。
でも次の瞬間、何かが千切れる音が聞こえた。
ゴギ!!
その後、レネンスの声が聞こえた。
「あぁーーーーーーーー!!!!!!」
そして俺の頭に何かが垂れてきた。
そして、その垂れてきたものは何か赤い物だった。
俺はその何かが血だと分かった時、叫んだ。
「レネンス!!」
その後、尊が声を上げた。
「え?ッ!!レネンス!!」
その後、レネンスが叫んだ。
「ぐぅ、グラニー!!」
「『暴食!!3人からの距離をk」
「遅いです」
「………ごぷぁ!!」
声がした方を見ると、メイドがグラニーの前に立っていた。
そしてグラニーの腹に穴が開き倒れた。
「ぐ、グラニー」
レネンスが呆然とした様子で呟いた。
俺と尊も呆然としていただろう。
何故ならグラニーのステータスは各10万を超えてる。
なのにあのメイドに一瞬でやられてしまった。
一体どうすれば、
「おや?私の前で考え事とは余裕ですね」
後ろから声がした。
後ろを振り返ろうとした瞬間、俺の横を何かが通り過ぎた。
そして、メイドがこの部屋の端に吹き飛ばされ、土埃を立てた。
通り過ぎた何かが俺達の前に立っていて言った。
「はぁ、はぁ、私の前で考え事とは余裕ね」
「ぐ、グラニー!!え、そ、その姿は一体?」
俺達の前にはグラニーが立っていた。
しかし、グラニーの姿はダンジョンに入った時とは変わっていた。
全身が黒く染まり、体は普段の2倍程に膨れ上がっていて、手や足には大きな爪、背中には4枚2対の羽がついていた。
グラニーは、俺が叫んだ言葉に簡単に答えた。
「これも私のスキルよ。害は少ないから安心して。あと出来るだけ離れていて」
「で、でも」
俺がグラニーに詰め寄ろうとするとレネンスに捕り、尊と一緒に部屋の端まで引きずられた。
俺は抵抗しようとしたが、体に力が入らなかった。
多分レネンスが『怠惰』を発動させたのだろう。
レネンスは、部屋の端まで行くと俺と尊を見ずに言った。
「僕は今から『怠惰』を解いてグラニーに合流するけど、絶対に戦闘に参加しようとしないでね」
体が軽くなった。
俺はレネンスに確認する。
「レネンス!あのメイド、倒せるのか?」
「………僕とグラニーには、まだ2人には見せてないスキルがあるんだ。それを使えば……多分4割くらいの確率で倒せるとは思うよ」
「な!!じゃ、じゃあ逃げた方が良いんじゃ」
「この状況で逃げられると思う?」
「ッ!!そ、それは」
レネンスが俺を正面から見て、言った。
「大丈夫、絶対勝つから」
「レネンス、頼むぞ」
俺がそう言うと、レネンスが笑顔で言った。
「任せて」
レネンスが、俺達から離れてスキルを発動した。
「『ベルフェゴール、来い』」
するとレネンスから黒い魔力が出だし、集まりだした。
そして魔力が集まりきると、人の形を取った。
人の形と言っても、普通の人の3倍程の大きさだった。
そしてレネンスは、その人の形を取ったものに言った。
「『ベルフェゴール、僕に纏え』」
するとレネンスが、グラニーと同じ程の大きさになった。
違いと言えば羽が無い、羽の代わりとでも言うように尻尾が付いていた。
そしてレネンスはグラニーの所に戻って行った。
◇グラニーサイド
レネンスが私の所に戻ってきながら言った。
「グラニー、ごめん遅くなった」
「遅過ぎよと言いたいけど、相手が待ってくれていたから大丈夫よ。レネンス、【悪纏】は久しぶりだけど大丈夫?」
【悪纏】とは、スキル『魔力悪魔化』を無理矢理纏う事で、罪系の大罪の職業の効果を爆発的に上げるスキルの使い方だ。
しかしこのスキルの使い方は罪系の職業のフィードバックをより強くする。
あまり使いたい物では無い。
「問題無しだよ」
「それなら連携行けるわね?」
「勿論だよ」
私とレネンスが横並びになるとメイドが言った。
「準備は終わりましたか?」
私は冷や汗を流しながら言った。
「あら?待ってくれてたのかしら?」
「当たり前でしょう。蛆虫に準備された所で関係無いですので」
メイドはそう言うと、魔力を体に纏った。
「ぐっ」
私はレネンスと【悪纏】の同時発動をした上で、私とレネンスの【悪纏】の相性なら、4割くらいの確率で勝てると踏んでいた。
それこそ私とレネンスの【悪纏】なら弱いモンスターなら見ただけで死ぬ筈なのに、寧ろメイドに魔力を飲まれそうだ。
私達が動けないで居ると、メイドは両手を広げて言った。
「どうしました?来ないのですか?それなら私から行きますよ?」
どうでしたか?
自分的には結構良かったのでは無いかと思います。
次の投稿予定は2日後の5月6日の午後9時〜10時の予定です。
ご感想、誤字、ここをこうして欲しい、こういう展開やサイドストーリーが欲しい等など何でも送って頂いて大丈夫です。
送って頂いたものに関しては積極的に取り入れて行きたいと思っています。
ゆっくりと進んで行きますが応援よろしくお願いします。




