122話 魔力の中心地点②
今回は半分説明、半分戦闘です。
お楽しみ頂けると幸です。
俺は『エルダーリッチ』に突っ込むと同時に『天化』を発動。
そんな俺は『天化』を発動させると同時にある事を思い出していた。
それは『天化』修行中にウェストに言われた事だ。
その時に言われたのを一言で纏めると『『天化』は周囲の環境に作用されやすいものの、逆に周囲の環境を味方につければ高い威力になる』と言う事だった。
例えば『天化』をする事で最もスピードが上がるのは雷属性だが、水の中や土の中(例で言うと何かの巣の中など)、その空間が雷属性以外の魔力で満たされていた場合(例『フィールド』系統の魔法等)では、スピードが落ちる上に『天化』をする為に必要な魔力量(周囲の魔力を自身に呼び寄せる為の魔力や維持する為の魔力)が増える。
逆に『雷領域』等によって雷属性の魔力がその空間に満ちていれば、『天化』で上がるスピードは更に上がる。
因みに通常、世界に満ちている魔力に属性は無い(分類するなら無属性だ)が、一定以上の空間がある場所で特殊な条件が複数組み合わさると魔力に属性が付き、その場の魔力が何かの属性の魔力に変わる事はあるのだそうだ。
そして今、俺達が居るのは草木が生えていない谷の底と呼ぶべき部分。
そんな今の状況を考えると、どの属性の『天化』をするべきか自ずと分かる。
俺が今、使うべき属性は『土』。
俺は土属性の『天化』を使い『エルダーリッチ』と『キングピーキーモンキー』を分断する為に、2体を分断する様に地面を持ち上げた。
「ハァッー!!」
『エルダーリッチ』と『キングピーキーモンキー』は、急にせり上がってきた地面に驚きつつも、俺が縦長に地面を持ち上げたので横に避ける形で回避した。
しかし、2体は比較的近くに居たがお互いが逆方向に避けたので、狙い通りに分断された。
『エルダーリッチ』は地面から多少浮いているので、俺が持ち上げた地面を超えられないように、壁と『エルダーリッチ』の間に割り込み、『エルダーリッチ』に『アスレイア』を構えた。
俺は狙い通りの結果に満足したものの、『アスレイア』を握っている両手を見た。
『アスレイア』を握っている両手は、ぷるぷると震えていて、両手の震えに合わせて『アスレイア』もカタカタとなっている。
俺の両手がぷるぷるしている理由は、2体のモンスターを分断する為に持ち上げた地面のせいだ。
俺は『天化』の修行中にも同じ事をした事があり、その時はかなり余裕だったので今回もやったのだが、どうやら場所が悪かったらしい。
どう悪かったのかと言うと、地面の魔力があまりにも少なかったので、『天化』の特性の1つに入っている同属性の魔力が籠もっている物を操れる能力を使った、俺への負担が大きかったのだ。
これは簡単に説明すると、坂道を自転車で登る時に、その自転車が電動では無い普通の自転車で、自力で頑張って登る感じだ。
・・・自分で言っていてなんだが、分かりづらいな。
詳しく説明するとかなり長かったので大切所だけを抜粋すると、『この世界にある物は多少なりとも全てに魔力が宿っている。『天化』は自分の外の魔力を操って持って来て、自身を強化するものだと言えるので、同属性の魔力が一定以上宿っていている物なら操れる』と言った感じだろう。
まあ、一定以上の魔力が宿っていて操れるのは
自然界の物くらいだとウェストが教えてくれた。
因みに魔力の籠もった武器や防具は相性が悪いらしく、殆ど操れない。
と、そんな事を思い出していた訳だが、俺は冷や汗を流している。
それは何故か、それは俺が操ったこの場所の魔力があまりにも少なすぎたから。
これはさっきも言ったのだが、これにはちょっとだけ続きがある。
本来なら自然界に存在する物の魔力を使っても、空気中(周囲)から魔力を分けて貰い、どんなに遅くても1日後には元の魔力量に戻る筈なのだ。
そして俺が『天化』で地面を操った感覚は地面を普通に持ち上げる(ここでは地面をある程度の大きさに切り取ったと仮定)よりも、とても重く引っかかる感じだった。
因みに本当なら、自由自在にとは行かなくても操る物の重さを感じるくらいになる筈だ。
そして、操る物よりも重いと言う感覚は操ろうとしている物に魔力が足りない証拠で、引っかかる感覚は何らかの理由で3日以上その物が保有しているべき魔力量を大幅に下回っている証拠なのだそうだ。
つまり何が言いたいのかと言うと、魔力が足りない地面全体に、魔力が入っていないとおかしいと言う事だ。
しかし現在は俺が持ち上げた地面の一部に集中的に入っている。
本来なら、こんな事はあり得ないので十中八九人為的な物だろう。
まあ、モンスターがこの現象を起こしている可能性も無きにしもあらずだが。
兎に角、こんな現象を起こせる様な化け物と言っても差し支えないのと敵対しないといけないので出来るだけ魔力は温存しておきたい。
・・・でもな〜、ここの空気中の魔力薄すぎて『天化』に必要な魔力が全部2倍になってんるだよな。
本当なら流れてきている魔力を使っても良いんだが、俺達が厄介な存在だと敵に知られて、これ以上相手の数が増えると不味いしな。
俺はそこまで考えたが、今は目の前の敵に集中するべきだと考え直した。
『リッチ』の弱点は光属性の魔法なので、多分『エルダーリッチ』も同じだろう。
耐性も『リッチ』と『エルダーリッチ』が同じなら、刺突系の攻撃だけの筈。
俺がそこまで考えた所で『エルダーリッチ』が今まで閉じていた口を開いた。
俺は『エルダーリッチ』が開いた口の中に魔法陣を見つけた瞬間、魔法陣と直線状にならないように少し大回りしながら『エルダーリッチ』に一気に接近した。
魔法陣を見ただけでは何の魔法かは分からないので、『召喚魔法』だった時の事を考えて、魔法の発動を失敗させようとしたのだ。
しかし、魔法陣の完成が俺が『エルダーリッチ』に辿り着くよりも早かったのか、魔法陣が急に大きくなり『エルダーリッチ』の口の中から出て来て『エルダーリッチ』程の大きさになった。
そして、その魔法陣から『スケルトン』(剣と盾装備)が出て来たので俺はそれを見て、「発動させてたのはやっぱり『召喚魔法』かよ!!」と叫びたくなったが我慢した。
俺は叫ぶよりも元々の距離から三分の二は『エルダーリッチ』に詰め寄ったので、一撃貰っても『エルダーリッチ』に一撃を入れようと思ったのだ。
「シッ!!」
俺は『スケルトン』が3体程出て来た時に『エルダーリッチ』が間合いに入ったので、『アスレイア』を全力で振るい、『スケルトン』ごと『エルダーリッチ』にダメージを入れようとした。
しかし『スケルトン』は思っていたよりも統率が取れてとおり、3体程『スケルトン』が俺の前に立ちふさがり『アスレイア』とまともに打ち合った。
本来なら『スケルトン』毎切り裂いて、『エルダーリッチ』に攻撃が届いて終わりなのだが、今回はそうは行かなかった。
剣と盾は簡単に切り裂いたものの、何故か『スケルトン』の骨で『アスレイア』の刃が止まってしまい、どの『スケルトン』も全身にヒビは入っているものの、砕けてはいない。
「な!!』
『スケルトン』はE級、行ってもD級なので、今の俺のステータスなら確実に倒せる筈なのだ。
なのに殆ど死にかけとは言え、まだ生きているなんて。
ありえない。
俺は『スケルトン』3体に『アスレイア』と止められた瞬間、動揺して意識に空白が出来た。
その動揺が生み出した隙は意外と大きく、『アスレイア』を止められた2秒後に、『エルダーリッチ』が『スケルトン』を巻き込んで俺に魔法攻撃を仕掛けてきた。
それに『スケルトン』が魔法攻撃によって崩れ始めた頃に気が付いた俺は、急いで『アスレイア』を『スケルトン』達から自分のへそ辺りに柄を持って来て、防御しようとした。
その次の瞬間、『アスレイア』から鈍い衝撃が伝わってくると同時に、視界が『アスレイア』に弾かれた水で塞がれ、その水は俺の全身を水浸しにした。
幸い、そこまで強い魔法攻撃では無かったようで手首などを痛める事はなかった。
俺は『アスレイア』から水を切る為に、『アスレイア』を地面に振るった。
俺は『アスレイア』から水を切ると同時に、『エルダーリッチ』の場所を確認するつもりだったのだが、既に『エルダーリッチ』の姿は無かった。
俺は『エルダーリッチ』の姿が無い事を確認したと同時に叫んだ。
「グラニー!!『エルダーリッチ』が消えた!!何処に居るか分かるか!?」
俺が叫んだ瞬間は、丁度グラニーがクリスティーナさんの支援射撃をしていた時だったので、あまり期待せずに周囲を警戒しつつ、返答を待った。
しかしグラニーから返ってきた返答は、期待していた物では有ったが、とても不味い物だった。
「何言ってるの!!眼の前で魔法陣を作ってるでしょ!!」
俺がその言葉に目を見開いた瞬間、目の前の光景が歪み、目の前(先程まで『スケルトン』が居た位置)に『エルダーリッチ』が魔法陣を構築し終えて、発動寸前の状態で居た。
俺はそれを見て理解した。
(『スケルトン』の召喚で『召喚魔法』に目を向けさせて、『幻影』系統の魔法から目を背けさせる。その上で『幻影』を用いて、自身を見失わせる。その間に発動が早い魔法を構築しかのか!!
不味い!!この距離じゃ構築が完了した魔法を避けられないし、防御出来ない!!まともに喰らう!!せめて魔法を喰らった後の受け身だけでも!!)
俺がそう考えた時には、目の前に氷の矢が出来上がっていた。
俺が目だけは逸そうと体を捻った瞬間、グラニーの声が聞こえた。
「そのまま、全力で地面に伏せて!!『クイックショット』!!」
俺がグラニーの声に従って全力で伏せようとすると、右目の少し上の眉毛辺りに氷の矢が当たりかけた。
しかし、当たったと思った瞬間、横からグラニーの矢が来て、その矢は正確に氷の矢の鏃部分を捉えた。
そのお陰で氷の矢が少し逸れて、髪の毛を何本か凍らせただけで避ける事が出来た。
俺は地面に伏せた状態で、『アスレイア』を振るった。
「『一薙』!!」
『エルダーリッチ』は俺が放った『一薙』を、後ろにジャンプする事で難なくかわした。
俺がそれを立ち上がりながら見て、苦虫を口に詰め込まれた様な表情をした。
そして、それと同時にこの『エルダーリッチ』に対する警戒度を更に上げた。
どうでしたか?
自分的にはちょっと説明が長くなってしまったと感じたので、少し反省しております。
ただ次回も戦闘なのでお楽しみにして頂けると幸です。
次の投稿は3月3日の午後9時〜11時(基本午後10時)の予定です。
今後ですが午後11時までに投稿してなければ、その日は無しでお願いします。
その後の予定は、一応後書きで書いている、その時の投稿ペースの予定です。
ご感想、誤字、ここをこうして欲しい、こういう能力や展開、サイドストーリーやキャラが欲しい等など何でも送って頂いて大丈夫です。
送って頂いた物に関しては積極的に取り入れて行きたいと思っています。
ゆっくりと進んで行きますが応援よろしくお願いします。