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117話   現状確認

今回と次回は何で門兵が助けを求めたの説明回みたいなものですね。


お楽しみ頂けると幸です。

「あ、あの!!Sランク冒険者様!!お願いがございます!!どうか、どうか!!この街を救って下さい!!」


街に入ろうとした俺達は門兵にそう懇願された。

門兵に事情を聞こうかとも思ったが、Aランク以上の冒険者は何処かの街を通るたびに、その街の冒険者ギルドに報告しないといけないので、その報告するタイミングで話を聞く事にした。


そして話を少しでもスムーズに進める為に俺達が宿を取り、そこに馬車を預けている間に、門兵が冒険者ギルドに話を通して貰っておく事になった。

なので俺達は馬車を預けてから冒険者ギルドに向かった。


向かったのだが、街の雰囲気は門の外から見たよりも暗く、ピリピリとしていた。

冒険者ギルドに行くと、今が昼間とは言え冒険者ギルド内に居る冒険者は少なく、ギルド職員の顔も暗かった。

又、冒険者ギルドの横に併設されている酒場(これは全ての冒険者ギルドに共通しているらしい)にも冒険者の数は少なく、こちらは酒を飲んでおらず、暗い顔をしていた。


俺達はそんな暗い街を見ながら冒険者ギルドの受付に到着した。

受付に到着した俺達が受付嬢にギルドカード(冒険者証とも言う)を見せると目を見開いた後、俺達に「少々お待ち下さい」と言うと、席を立ち俺達のギルドカードを持って後ろに引っ込んだ。


俺達が受付嬢を待っていると、冒険者ギルドに身なりが整っているが服の上からでも筋肉が分かる程、鍛えたと思う男が走り込んで来た。

走り込んで来た人は俺達を見つけると、俺達の元まで走って来て懇願する様な目で俺達を見ながら言った。


「お前達がさっきやって来た者達だな!!薬は!!私が商人に頼んだ薬は持って来たんだろ!?」


俺は鬼気迫る人に驚きつつも、答えた。


「い、いや、俺達は冒険者でこの街に来る時には特に依頼を受けてないから、商人が経由する物は何も持って来て無いけど」


俺がそう言うと、俺に迫って来ていた人は急に停止し、その場にへたり込んだ。

俺達が一体何事かと思っていると、今度は執事服を着た人がギルドにやって来た。

へたり込んだ人を見つけると、苦い顔をしてから俺達に頭を下げた。


「冒険者の皆様。ご当主様が失礼を致しました。お許し下さい。そして不躾なお願いではございますが、魔力回復薬を出来る限り買い取らせて頂けませんか?」


俺達は執事らしき人の「魔力回復薬(ポーションの様な物で、下級、中級、上級がある。最上級の物もダンジョンからたまに出る。体力回復薬もある)を出来る限り買い取らせて頂けませんか?」という言葉に首を傾げながらも頷こうとした時、受付嬢が戻って来た。

 

受付嬢は俺達以外に、へたり込んでいる人と執事服の人を見ると目を丸くしたが、すぐに気を取り直した。


「冒険者様。ギルドマスターがお会いになるとの事ですので、こちらにどうぞ。それと領主様もご同席頂けると助かるのですが」


俺達は受付嬢さんの「領主様」という言葉にとても驚いた。

いや、だって領主と言うと、もうちょと威厳とかあるかと思ってたし。


俺がそんな事を思っていると、領主様はよろよろと立ち上がり、執事さんを連れてギルドの奥に入って行った。

俺達がその光景を呆然として眺めていたが、受付嬢さんに「それでは、皆様もこちらへ」と言われて移動した。


移動した先は、多分この街の冒険者ギルドのギルドマスターの仕事部屋らしき所だった。

何か、何時もギルドマスターの仕事部屋に通されてるけど、応接室とか殆ど使わないのか?


ただ、ここはスターンの街のギルドマスターの仕事部屋よりも、かなり綺麗に整っている。

スターンの街のギルドマスターの仕事部屋は、床とかに資料とかが積んであって、雑多感が強かったからな。


俺がそんな事を思っていると、ギルドマスターらしき人(女性)がいきなり俺達に頭を下げた。


「暫定Sランク冒険者パーティー『カリブルヌス』の皆様!!どうか、この冒険者ギルドからの指名依頼を受けて下さい!!」


俺達があまりに急な展開に付いて行けていないでいると、俺達を案内してくれた受付嬢さんが助け舟を出してくれた。


「あの、副ギルドマスター。流石に指名依頼の内容を言わないと、何でそんなに焦っているか全く分からないので、指名依頼を受ける受けない以前の問題ですよ?」


受付嬢さんの言葉でその事に気が付いたのか、副ギルドマスターは「すみません」と俺達に謝り、俺達に椅子に座る事を勧めた。


俺達が椅子に座っている間に、副ギルドマスターは仕事机の引き出しから地図を取り出して、俺達の前にあるテーブルに置いた。

因みに領主様と思われる人物と執事さん?はテーブルを挟んだ向かい側に座っているのだが、領主様が足で「トン、トン、トン」と素早く床を叩いている。

領主様はイライラしているのだろうか?


俺がそんな事を思っていると、副ギルドマスターは地図のある地点に指差しながら説明してくれた。


「まず私達が受けて頂きたいのは調査依頼です。内容はこの街の『スウォーロー』方面の門を出て、そこから『ケスメト山脈』に向かって約10km程の距離を扇状に調査して欲しいのです」


俺は中々大変そうな依頼だと思いながらも、根本的な事を聞いた。


「とても聞きづらいんだが、『ケスメト山脈』の事を聞いても良いだろうか?名前しか聞いた事が無くて、どんな所か分かってないんだ」


俺は『ケスメト山脈』の事をアスガル王国の王城で未だに調べきれて無かったので、副ギルドマスターに聞くと、副ギルドマスターは心得たとばかりに話し始めた。


「『ケスメト山脈』はダンジョン外では珍しく特定危険地帯に指定されています。その理由は山頂に近づく程に魔力が濃くなるのです。又、山と山の谷間の部分の魔力も濃くなっています。


本来なら、モンスターは生まれた山頂や谷間の部分から動きません。ですが『ケスメト山脈』では移動してしまう為、山脈全体の中腹より上はパーティー単位だとBランク、個人だとAランク以上の冒険者の方しか入れません。


以上が『ケスメト山脈』の説明ですが、質問はありますか?」


副ギルドマスターが俺達にそう聞いてきたので、俺達が首を横に振った。

副ギルドマスターはそれを確認すると、1度首を縦に振ってから、再び話し始めた。


「それでは今回の依頼の詳しい説明をさせて頂きます。今回は中腹よりも前の山麓の部分も含めた調査です。本来ならば中腹よりも前の山麓部分は事前に調査しておきたかったのですが、我々は街をモンスターから守る事で精一杯だったのです」


レネンスが副ギルドマスターの言葉を受けて、首を「こてん」と傾けながら副ギルドマスターに質問した。


「街の防衛〜?どういう事〜?それにギルドマスターは〜?」


副ギルドマスターは表情を暗くしながら、レネンスの質問に答えた。


「はい、まずは街の防衛に関してですが、ここ一週間で急にモンスター達が、この街を襲って来る様になったのです。しかも、幾つもの群れが同時に襲って来るので、殆どスタンピードに近いです。


本来ならば冒険者ギルド本部に応援を依頼したいのですが、街の外に出るとモンスター達が凄い勢いで襲って来るのです。しかも、モンスターの死体も人の死体も全てモンスターが持ち帰っているので、モンスターの死体から何かがあったのかを推測する事も出来ません。


ですが幾つか分かった事は有ります。まず、モンスターにはリーダー格が居ます。我々はリーダー格を門の上から姿を見ただけですが、ダンジョンボス級モンスターの『キングピーキーモンキー』です。しかし、『キングピーキーモンキー』は恐らく【亜種】です」


俺はスターンの街防衛戦で見たあれかと、『キングピーキーモンキー』を思い出していた。

尊はそんな俺とは違い、副ギルドマスターの【亜種】と言う言葉を聞いて、『ピクリ』と反応した。

尊は少し体を前のめりにして、副ギルドマスターに聞いた。


「その『キングピーキーモンキー』が【亜種】だと思う理由は?」


急に前のめりになった尊に驚きつつも、副ギルドマスターは答えた。


「はい、この街には冒険者では無いのですが、Aランク冒険者に匹敵する方が1名いらっしゃったのです。そして、その方は3日前にその『キングピーキーモンキー』を倒せば、この状況が少しは良くなる筈と言い、露払いとしてCランク冒険者を数名連れて討伐に向かったのですが、返り討ちに遭いました。


帰還したのはCランク冒険者が1名と、Cランク冒険者に気絶しながら抱えられて戻って来たAランク冒険者に匹敵する方だけでした。門の内側に入った時にはAランク冒険者に匹敵する方は酷い状態でしたが、魔法と回復薬を使い、何とか一命は取り留めました。


そして怪我はしていたものの、そこまで酷い物では無かったCランク冒険者の方がAランク冒険者に匹敵する方からの伝言で「ボスは『キングピーキーモンキー』だが【亜種】だ。気を付けろと伝えてくれ」と言われたと言っていました」


副ギルドマスターがそう言って、悲痛そうな顔をした。

あの顔を見るに、複数名のCランク冒険者の内、残りの冒険者は戻って来なかったのだろう。

そう思った俺達も自然と表情が暗くなってしまった。


副ギルドマスターは顔を伏せながら話を続けた。


「そして【亜種】だと思った理由はもう1つあります。それはAランク冒険者に匹敵する方が呪いを受けていたからです」


俺達はその内容に絶句してしまった。

確かにモンスターは魔法等を頻繁に(上位の級になるほど、強く、多く)使ってくる。


しかし、呪いとなると話は別だ。

呪いは呪いをかけた本体が生きていないと意味が無くなる物が多い(呪いを使う者の死が呪いのトリガーとなる物は別)。

又、呪いはゴースト系やゾンビ系等(所謂、死霊系モンスター)が多く使ってくる。


しかし、『キングピーキーモンキー』を分類分けするとしたら、獣系だ。

間違っても死霊系では無いし、そもそも『キングピーキーモンキー』は体力と防御力が高いだけで、魔力はそこまで多くないし、魔法を使っても自身を強化する様な魔法しか使って来ない筈だが。


俺がそこまで考えた所で、俺達の前方から「ガタン」と音がした。

俺達がそちらに目を向けると、領主様が土下座をしていた。

俺達がその光景に「ギョ!?」とすると、領主は懇願して来た。


「頼む!!Sランク冒険者の方々!!娘を救う為に出来るだけ多くの魔力回復薬を譲ってくれ!!金なら払える限りの金を払う!!私に出来る事なら何でもする!!


だから、だから、娘を救う為に、どうか!!」


領主様は頭を床に付けて、泣きながらそう言った。

どうでしたか?

お父さんが娘を救う為に頭を下げる部分を、もう少しリアルに書きたかったのですが、無理でした。


次の投稿は2月10日の午後9時〜11時(基本午後10時)の予定です。

今後ですが午後11時までに投稿してなければ、その日は無しでお願いします。

その後の予定は、一応後書きで書いている、その時の投稿ペースの予定です。


ご感想、誤字、ここをこうして欲しい、こういう能力や展開、サイドストーリーやキャラが欲しい等など何でも送って頂いて大丈夫です。

送って頂いた物に関しては積極的に取り入れて行きたいと思っています。

ゆっくりと進んで行きますが応援よろしくお願いします。

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