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勇者達の翌朝(旧書・回想)  作者: L・ラズライト
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「再会」6

旧書・回想「再会」6(ロテオン)


俺とカイル、先輩のキンシーは、控え室として当てられた、大きい部屋の片隅で、三人で座っていた。ルパイヤは戻ってこない。サイオスは団長に連絡するといったきり、やはり戻ってこない。あと同じ隊から三人、サウル、ディスパー、カーシュルが来ていたが、彼らは採取組で、多少「成果」があったため、成果報告に呼ばれている。

部屋の三人とも沈黙していた。カイルが一言、「俺達に黙ってたなんて。」と、小声で言っただけだった。

ルーミは容姿のせいで、よく男性に声を掛けられる。単に女の子と間違う者もいれば、男と判った上で、言い寄る者もいる。前者より後者が許せないらしく、殴る蹴るに終わることもしばしばあった。

最初に会った時なんて、団長がまた、どこの野生動物を保護してきたのだろう、と思ったほど、警戒心を剥き出しにしていた。親しくなった今も、いきなり体に触ったりすると、驚いて身構える。俺は組み手の時も気を付けているが、カイルはまめにスキンシップをとる性格のため、よく驚かせていた。

そのルーミが、出会ってたった1日にもならない相手に陥落するだろうか。しかも相手は男だ。

だが、前から知り合いだったとは思えない。銃の説明を受けた時や、小屋での会話を思い出して見る。明らかにあの時点では、知り合いらしい所はなかった。ネレディウスは同じ名前の知り合いが、と言っていたが、俺の姉と兄は生まれた時は金髪で、それぞれ、「ルミリィナ」「オレオリン」と、光や金を現す名をつけられた(俺だけひい祖父さんの名を取って「ロテオン」だが、成長して金髪なのは俺だけだった。)。だから、金髪なら、「ルーミ」はよくある名だ。俺もカイルも彼女持ちのため、休みの日までべったり一緒にいるわけではないが、団員の誰にも気付かれずに、誰かと付き合うなんて出来るだろうか。相手が騎士だから、うまく隠していたとしても。

ネレディウスの様子を思い出して見る。魔法能力が一定以上高いと、男性は中性的な外見になることが多い。騎士は魔法剣と併用するし、専門家の魔導師ほどレベルは高くないので、それほど極端にはならないが、ネレディウスは顔立ちはいかにも涼しげで、以前のキーシェインズのような、ぎらついて警戒心を起こさせるような所は欠片もない。だが、背は高く、顔や年齢の割には、比較的がっしりとしていた。格闘家の自分ほどではないが、剣士としての強さは見てわかるほどの筋肉は、しっかりついていた。

「ルーミ」で驚いたのは、知り合いと同じだからではなく、「有名」だったからじゃないか?だいたい、二人だけ、遅れたのは何故だ?

考えたくない想像が過る。冗談じゃない。性別だとか、合意だからとか、そんな問題じゃない。ルーミは、まだ13なんだ。

俺は病室に戻ろうと、席を立ったが、ルパイヤがやたらすっきりした顔で戻ってきたため、座り直した。

「兄弟だとさ。騎士団の人にも確認した。」

開口一番、彼は言った。カイル達は驚いていたが、俺は憤っていた。

騎士団ぐるみで、なんだ。つくなら、もっとましな嘘をつけ。ルーミは金髪碧眼の北西コーデラ系、ネレディウスは黒髪で、顔立ちは東ラッシル系。系統を差し引いても、似た所はない。

俺は抗議しようとしたが、ルパイヤが続けて、

「二人とも養子で、血は繋がってないんだと。」

と言ったため、一気に冷めた。

ルーミは家族の話はしたがらなかった。ラズーパーリの生存者だと聞いていたので、周囲もその話題には触れなかった。

一度、身の上話大会みたいになった時に、「母親がいい加減な人で、浪費癖のある男性と再婚して、親からついだ店を潰した。破産したら夫が実家に逃げたので自殺してしまった。弟は、実は金持ちだったらしい、逃げた父親が引き取ったが、自分は血が繋がっていないので残された。破産していたので親戚が引き取りを拒否し、教会に引き取られた。」と語っていた。

《実の父親は、生まれる前に死んだから、顔は知らない。再婚相手は、あまり家にいなかった。子供好きで、いる時は遊んでくれたけど、父親って感じはしなかったなあ。家族って言われて、思い出すのは、教会で一緒だった、兄貴みたいな幼馴染みの友達と、引き取ってくれた教会の父親と、あとは交代で来ていたメイドさん達くらいだ。特に『兄貴』。…みんな、死んじゃったけどね。》

寂しそうなルーミの顔を思い出す。

キンシーが、

「サイオスと話してくる。最初の考えのまま、団長に報告してたら、偉いことだ。」

と出ていった。カイルは、ほっとしたら腹が減った、と言っていた。

俺は、食堂があるはずだから、ルーミも迎えに行って、何か食べさせないと、と、次を考え始めていた。

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