表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?  作者: 秋野 木星
第二章 結婚生活
44/107

レーセナの夢

カールの結婚式があって、それから初めてここラザフォード侯爵邸にやって来て、という盛りだくさんな一日の後に……こういうことになってしまった。


久しぶりのダニエルとの逢瀬。

セリカもさすがに疲れはてて、温かな布団の中でウトウトしていた。


何故かダニエルがセリカの部屋にやって来たので、二人は一緒にセリカのベッドで横になっている。


セリカの肩に腕を回しているダニエルは、長々とカールの結婚式の話をしていた。


「あの宴会部屋はいいな。もしここの屋敷に設置するとしたら、どこに作るのがいいだろう」


「……そうですね、第三夫人の部屋なんかはいかがですか?」


セリカは厨房を見学した後に、第三夫人の住むところを見せてもらった。

エレナは何か言いたそうだったが、黙って案内をしてくれた。


「何でそんなところに作るんだ?」


「いずれ私が住むところですから。ダニエルはあの部屋が気に入ってるようでしたし、宴会部屋があれば少しは私の所に来て下さるでしょ?」


「………………」



「……ダニエル? あふぁ~、寝たのかしら」


「寝てない。何を勘違いしてるのか知らないが、私は君を第三夫人にするつもりは無いぞ」


「? でも、お見合い話が数多く来ているとおっしゃってませんでした?」


「すべて断っている」


「でも、貴族の務めで魔法量を増やさないといけないんじゃないんですか?」


「それは君がたくさん子どもを産めば済むことだ」



ん?

ここにきてセリカも話が噛みあっていないことに気づいた。


ぼんやりとしていた頭にも、血液が戻って来る。



セリカはゴソゴソと顔を横に向けて、寝乱れたダニエルの横顔を見た。


まぁ、こうやって近くで見ると金髪でも部分によって濃さが違うのね。


― セリカ、そういうこと考えてる場合じゃないでしょ。

  お互いの人生設計にズレがあるじゃない。


そうだった。



「あのぅ、私が第一夫人だと、まずいんじゃないですか? 貴族の生活についても詳しくないですし」


「それは私でも最初はそうだった」


「あ……」


ダニエルは言葉をなくしたセリカを見て、おかしそうに笑った。


「エレノアに聞いたんだろ? 自分で説明するのも面倒だったから、あの二人をダレニアンに行かせたんだ。お節介な二人のことだから、私の説明の手間を省いてくれると思ってね」


「策士ですね」


「エレノアの病気も快方に向かってるようだし、一石二鳥だろ」


この人は本当に頭がよく回る。


「それにウザイ他の貴族を黙らせる策も考えている」


「どんな策なんですか?」


「フッ、それは明日のお楽しみだ。明日は二人でレイトの街にある王宮へ行くからな」


王宮?!


セリカの身体が緊張したのがわかったのだろう。

ダニエルは肩をさすってくれながら、安心するように言った。


「王族には会わないよ。事務手続きに行くだけだから」


「はい」



「また明日も出かけるし、残念だけど今日はこれで休もうか」


やれやれ、やっと眠れそうだ。


「ええ。ダニエル、あなたにレーセナの夢を」


「……そう言えば、君は平民なのになんでその挨拶を知ってるんだ?」


「え? レーセナの夢をっていうやつですか?」


「ああ」



何でだったかな?


― セリカ、ジュリアン王子よ。

  最初に念話で話した時に言ってたじゃない。


そうか。


「ジュリアン王子殿下に最初に言われたので、お休みの挨拶なのかなと思ったんです」


― セリカったら、その言い方は誤解を招くわよ。


「ジュリアンか……」


ダニエルの声が低くなった。


怒ってる?


― ほらぁ~



「なんかまずかったですか?」


「その挨拶は家族か恋人同士でしか使わない。私は……家族にそんな挨拶をしてもらったことがなかったから、その言葉を知らなかったんだ。夏に離宮へ行った時に、従兄弟たちにそのことでからかわれたな」


「そうだったんですか……」


「ヘイズ兄さんは私たちより年上だったから、ジュリアンとクリフ兄弟を(いさ)めてくれたけどね」


そうか、ダニエルにとってはあまりいい思い出のない挨拶なんだな。


「ごめんなさい」


「何で謝る? 君が私に『レーセナの夢を』と言ってくれてから、その言葉の意味が変わった。しかし、ジュリアンに最初に習ったというのは妬けるな」



あの……もしもし?

寝るんじゃなかったんですか?



明日用事があったハズなのに……


― 仕方がないね、セリカ。

  もうひと頑張りだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ