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飯屋の娘は魔法を使いたくない?  作者: 秋野 木星
第二章 結婚生活
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閑話 ダニエルの驚き

うちの奥さんは、どれだけの隠し技を持っているのだろう?



ダルトン先生から魔法量についての念話があったときにも驚いたが、今回のピアノにはより多くの驚きがあった。


貴族でも誰でも弾けるわけではない楽器を、平民の、それも飯屋の娘が軽々と弾いていたのだ。

腕前もさることながら、曲に関してはどれもが初めて聞く曲だった。


多分、ニッポンという国の曲なのだろう。



子どもの頃は男爵家の令嬢だったブライス夫人は、音楽家を目指していたらしい。その彼女が、手放しでセリカを褒めたたえていた。


ブライスさんの家は魔法量が少なくなってしまい、爵位が取り上げられてしまったので、ダニエルがまだ生まれてもいなかった頃に、遠縁の伝手を頼ってここラザフォード侯爵領に来たと聞いている。


まだ貴族の矜持(きょうじ)を強く残していた両親に、音楽だけは続けさせてもらっていたようだ。

そのため彼女は音楽に関してはひとかたならぬプライドを持っている。


そんな彼女が認めた才能だ。

セリカの腕はたいしたものだと言わざるを得ない。


そして飯屋の看板娘だったためか、セリカは誰にでも気軽に接することができるようだ。


ブライス夫人をエレナと名前呼びしていることにも驚いた。

ダニエルは長年一緒に暮らしていたが、ブライスさんの名前など知らなかった。



夕食の後、料理長のディクソンを呼んで、デザートが美味しかったと親しく話していたのにも驚いた。


ダニエルにはわからなかったが、スフレの泡を保つのは難しいらしい。

そのことでディクソンとセリカは意気投合していた。


いったい……何の話だ?


その上、あの気難しいディクソンが、セリカと一緒に試食会をする予定だという。


……セリカは今日の午後、こちらの屋敷に来たばかりだよな?



13刻にセリカと別れてから、わずか一刻半ほどの間に屋敷を乗っ取られたような気がする。




セリカがお風呂に入った後、待てど暮らせど一向にダニエルの部屋にやってこない。


だいぶ我慢していたダニエルも、とうとう自らベッドを出てセリカを呼びに行くことにした。


なんだか屋敷中の人間が、セリカのペースに巻き込まれているような気がする。


「その筆頭は、俺かもな……」



ダニエルは早くもこんなことを考えた。


「参った」と、全員で諸手を上げてセリカに降参した方が、生きやすくなるのではないだろうか?


今後の人生が今までとは違った様相を見せてくるのではないか、そんな予感をひしひしと感じているダニエルだった。

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